バングラデシュの反フランスデモに4万人 仏大統領の風刺画擁護に反発

Protest calling for the boycott of French products and to denounce French President Emmanuel Macron in Dhaka, Bangladesh, October 27, 2020

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画像説明, 警察によると、ダッカでのフランスに対する抗議デモには約4万人が参加した

バングラデシュの首都ダッカで27日、フランス製品の不買を求めるデモに数万人の市民が参加した。フランスでイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を生徒に見せた教師がイスラム過激派の男に殺された事件をきっかけに、イスラム教徒(ムスリム)の多い国々を中心にフランス製品のボイコット運動や、エマニュエル・マクロン仏大統領への反発が起きている。

ダッカのデモでは、表現の自由や世俗主義を理由にムハンマドの風刺画を擁護したマクロン大統領を模した人形が燃やされるなどした。

デモ行進はフランス大使館へと向かったが、警察によって阻止されている。

マクロン大統領は、殺された教師の追悼集会で演説し、「フランスは風刺画を諦めない」と発言していた。

この件をめぐっては26日、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領もフランス製品のボイコットを呼びかけている。

エルドアン大統領はテレビ演説で、ムスリムは「第2次世界大戦前に欧州でユダヤ教徒が受けていたようなリンチに遭っている」と発言。「欧州の指導者はフランス大統領に、ヘイト(憎悪)キャンペーンをやめるよう言うべきだ」と述べた。

しかし、欧州各国の政府はマクロン氏を支持し、逆にエルドアン氏の発言を非難している。エルドアン大統領は24日、マクロン氏のイスラム過激派に対する態度について「メンタル治療」が必要だと述べており、フランス政府がトルコ大使を召喚している。

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ダッカのデモはバングラデシュのイスラミスト政党「イスラミ・アンドラン・バングラデシュ」が主催した。警察によると、デモには約4万人が参加した。

参加者は「フランス製品をボイコットしろ」と叫び、マクロン大統領への処罰を求めた。

イスラミ・アンドランのある幹部はデモ参加者に対し、「マクロンは悪魔崇拝者のひとりだ」と訴え、駐バングラデシュ・フランス大使の追放を求めた。

これに対し警察は、フランス大使館の周囲5キロにわたって鉄条網でバリケードを作り、デモの進行を妨げた。

Protest calling for the boycott of French products and to denounce French President Emmanuel Macron in Dhaka, Bangladesh, October 27, 2020

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画像説明, 参加者は「フランス製品をボイコットしろ」と叫び、マクロン大統領への処罰を求めた

フランス外務省は、インドネシアやバングラデシュ、イラク、モーリタニアなど、抗議デモが発生した国に滞在している国民に注意を呼びかけている。

外務省は声明で、ボイコットの呼びかけを非難。「良心や表現、信教の自由を支持し、あらゆるヘイトを拒否するというフランスの立場をゆがめている」と指摘するとともに、イスラムに対するマクロン氏の発言を「政治的に」曲解していると述べた。

「ボイコットの呼びかけは意味がなく、過激な少数派が起こしているフランスへの攻撃と共に今すぐ終わるべきだ」

デモの背景

フランスの学校で歴史と地理の教師だったサミュエル・パティさん(47)は、言論の自由を教える教材として、2015年の週刊誌シャルリ・エブド襲撃事件のきっかけになった預言者ムハンマドの風刺画を授業で生徒たちに示した。その後、アブドゥラフ・アンゾラフ容疑者(18)に首を切断されて殺害された。

フランスでは現在、シャルリ・エブド事件の裁判が行われている。

フランスでは事件直後、全国で事件に対する抗議デモが発生。先週には、パティさんの写真とムハンマドの風刺画が市庁舎に投影されるイベントが行われた街もあった。

マクロン大統領はパティさんの追悼式典を称賛し、「自由のために闘い続ける」と誓った。

マクロン氏はこの事件の2週間前、イスラム教は「危機」にあると発言。「イスラミストによる分離主義」に立ち向かうと述べていた。

イスラム教では偶像崇拝が禁止されており、ムハンマドやアッラーの描写はムスリムにとって非常に侮辱的な行為になり得る。

一方のフランスは世俗主義を掲げており、特定のコミュニティーのために表現の自由を損なうことはできないとしている。

フランスは西欧で最もムスリム人口が多く、当局が世俗主義を使ってムスリムを攻撃しているという批判も出ている。

マクロン大統領は26日のツイートで「フランスは絶対に屈しない」と述べた一方、「平和の精神の下にすべての違いを尊重する」と話した。

「我々はヘイトスピーチは受け入れないが、理性ある議論は擁護する。常に人間の尊厳と普遍的な価値観を支持する」

各国の反応は?

サウジアラビアの外務省は預言者ムハンマドの風刺画を非難する公式声明を発表したが、フランスを名指ししなかった。

声明では、「サウジアラビアはイスラム教とテロリズムを関連付けるような全ての行いを否定する」とともに、「あらゆるテロを非難する」としている。

ロシア連邦内でムスリム人口の多いチェチェン共和国の首長ラムザン・カディロフ氏は、マクロン氏がムスリムを刺激したと非難。「彼自身がテロリストに見え始めた」と述べた。

A sign in a Jordanian supermarket says French products are being boycotted

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画像説明, ヨルダンのスーパーには、フランス製品をボイコットするよう呼びかけるポスターが貼られた

パキスタンのイムラン・カーン首相も、マクロン氏が「イスラムを攻撃している」と批判ツイートを投稿した。

クウェートやヨルダン、カタールなどではスーパーの棚からフランス製品が撤去されている。このほか、イラクやリビア、シリアなどで抗議デモが起きている。

一方、欧州各国はフランスの態度を支持している。エルドアン大統領の発言の後、ドイツはマクロン氏への「連帯」を表明した。シュテフェン・ザイベルト政府報道官は、エルドアン氏の発言は「中傷」であり、「全く受け入れられないものだ」と述べた。

オランダのマーク・ルッテ首相も「フランスの側に立ち、欧州連合(EU)の集合的価値観を掲げる」と発言。イタリアのジュゼッペ・コンテ首相もマクロン氏への連帯を表明している。