「地球は未知の領域に」 数々の気候記録が更新、科学者らが警戒

ジョージーナ・ランナード、アーワン・リヴォルト、ヤナ・タウシンスキ、BBC気候記者およびデータチーム

Graphic showing a person facing a hot sun and a line chart trending upwards

気温や海水温、南極の海氷といった気候の指標で、数々の記録が更新されている。前例のないスピードやタイミングでの展開だと、警戒する科学者も出ている。

国連は、欧州で続く危険な熱波で、さまざまな記録がさらに更新されると述べている。

一方で、天候や海の事象はとても複雑なため、これらの出来事と気候変動を即座に結び付けることは難しい。

研究が進められる中、科学者らはすでに、いくつかの最悪のシナリオが進行中だと懸念している。

「気候システムの全要素がこのように記録的な、あるいは異常な領域にあった時期を、ほかに知らない」と、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の環境地理学者、トーマス・スミス氏は話した。

英インペリアル・コレッジ・ロンドンで気候科学を教えるパウロ・チェッピ博士は、化石燃料を燃やすことによる地球温暖化や、2018年以来のエルニーニョ現象によって、「地球は未知の領域に入っている」と、指摘する。

今年はすでに、世界の平均気温、世界の6月の平均気温、極度の海洋熱波、そして南極の海氷面積と、4つの気候の記録が更新された。それぞれについて解説する。

世界の平均気温

地球は7月初め、2016年の記録を破って最高気温を更新した。欧州連合(EU)の気象観測サービス「コペルニクス」によると、世界の平均気温は史上初めて17度を超え、7月6日には17.08度となった。

石油や石炭、ガスといった化石燃料の燃焼による温室効果ガスの排出が続いていることが、地球の温暖化傾向に寄与している。

世界の平均気温の推移
Presentational white space

インペリアル・コレッジ・ロンドンの気象学者、フリーデリケ・オットー博士は、これこそ温室効果ガスの増加によって気温が上昇した世界で起こると予測されていた、まさにその通りのことだと話す。

「気温上昇の傾向は100%、人類が引き起こしたことだ」

「意外だと思う点をあえて挙げるなら、記録が1年のうち早めの、6月に破られたことだ。エルニーニョ現象は通常、発生から5~6カ月たたないと世界的な影響を及ぼさないので」と、オットー氏は述べた。

エルニーニョ現象は、世界で最も強力な自然発生的な気候変動だ。南太平洋で暖かい海水が海面まで上昇し、大気中に暖かい空気を押し出す。通常はこれによって、世界の大気温が上がる。

6月の気温

世界の6月の平均気温は今年、工業化以前(1850~1900年)以前の6月平均より1.47度高かった。人類は産業革命が始まった1800年頃から、大気中に温室効果ガスを排出し始めた。

climate change
Presentational white space

LSEのスミス博士は、2023年の夏について10年前に予測できていたかという質問に対し、気候モデルは長期的な傾向の予測は得意だが、向こう10年の予測は苦手だと答えた。

「1990年代のモデルは、現況をほぼ言い当てている。しかし次の10年がどうなるかを正確に知るのは非常に難しい」

「ただ、気温が下がることはないだろう」と、スミス氏は付け加えた。

極度の海洋熱波

世界の平均海水温は、5月と6月、そして7月にそれぞれ月の最高記録を更新した。2016年に記録した史上最高水温に到達しようとしている。

科学者が特に警戒しているのは、北大西洋での極度の熱波だ。

英ブリストル大学の地球科学者、ダニエラ・シュミット教授は、「今まで大西洋のこの水域で海洋熱波が起きたことはない。私は見たことがない」と話した。

北大西洋の海水温の推移

6月に、アイルランド西岸の海水温は平均より4~5度高かった。アメリカ海洋大気庁はこれを、カテゴリー5の熱波、つまり「極度以上の熱波」と位置付けた。

この熱波を直接、気候変動に結び付けるのは複雑な作業だが、その作業はいま進行中だとシュミット教授は言う。

また、地球の温度が上昇していることと、海がその熱のほとんどを大気から吸収していることは確かだと話した。

「我々の扱うモデルには自然な変動性があり、想定外の、あるいは少なくともまだ想定していなかった事象がまだ現れている」

海面の平均温度の推移

シュミット氏は、こうした熱が、地球の酸素の半分を作り出す海洋生態系に与える影響を強調する。

「熱波というと、木や草が枯れることを想像しがちだ。大西洋は本来あるべき温度より5度も高い。つまり、生物が通常通りに機能するためには、食料50%も多く必要だということだ」

南極の海氷が記録的な小ささに

7月には、南極海を覆う海氷が記録的に小さくなった。1981~2010年の平均に比べると、イギリスの国土の10倍以上の大きさの氷が失われている。

これについては、気候変動との関係を正確に解明しようとする科学者たちが懸念を示している。

地球温暖化が進めば、南極の海氷は縮小する可能性がある。しかし現在起きている急激な縮小は、周辺の気候や潮流にも原因があるかもしれないと、イギリス南極観測隊(BAS)のキャロライン・ホームズ博士は説明する。

ホームズ博士は、記録は単に更新されたのではなく、大きく塗り替えられたものだと彼女は強調。「これまでの7月とはまったく違う。これまでの最低記録より10%も小さくなっている。これは大きな違いだ」と話した。

また、「これもまた、私たちが変化のペースを本当に理解していないことを示す、新しい印」だと述べた。

1979~2023年の南極の海氷面積の推移

ホームズ博士によると、科学者らは地球温暖化がどこかのタイミングで南極の海氷に影響を与えるとは思っていたが、南極は2015年まで、他の海域の世界的な傾向に逆行していたと話す。

「私たちが崖から落ちてしまったとは言えるが、この崖の底に何があるのかはわからない」

「今起きていることのスピードは驚くべきものだ。私たちが望んでいた最善のシナリオでは全くないし、むしろ最悪のシナリオに近い」

科学者らは、2023年後半、そして2024年に突入する間に、さらに多くの記録が破られるのは確実だと述べている。

しかし、それを「気候の崩壊」や「温暖化の暴走」と呼ぶのは間違っていると、オットー博士は指摘する。

オットー博士は、私たちは新しい時代にいるが、「大勢が生きることのできる未来を確保するための時間は、まだ残されている」と述べた。

追加取材:マーク・ポインティング、ベッキー・デイル