【解説】 NATO首脳会議、ウクライナの将来の加盟めぐりさまざまな思惑

ジェイムズ・ランデイル外交担当編集委員(ヴィリニュス)

NATO Secretary-General Stoltenberg and Lithuanian President Nauseda in Vilnius

画像提供, Alamy

画像説明, リトアニアのギターナス・ナウセーダ大統領(右)と、北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長

北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が11日、リトアニアで始まった。ウクライナでの戦争とNATOの将来の方向性を決めうる、重要な会合になるとみられている。

加盟全31カ国は、ウクライナを軍事的に長期間支援する決意を、ロシアに見せたいと考えている。

10日にトルコがスウェーデンのNATO加盟を支持したことで、その機運は高まっている。

一方で、ウクライナが意欲を見せる自国の将来的な加盟については、31カ国の間で意見の不一致がある。

加盟国の一部は、ウクライナ政府に将来的なロシアの侵攻を抑止するための安全保障を約束するとみられている。また、武器・弾薬の追加供与についても協議する予定だ。

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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、戦争終結後のできるだけ早い時期にNATOに加盟できるという言質を取るとともに、その方法や時期を明確にしたいと考えている。

しかし一部の加盟国は、行き過ぎを心配している。ほぼ自動的な加盟を約束すれば、ロシアに戦争をエスカレートや長期化させる動機を与えてしまうと恐れているのだ。

NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、今回のサミット(首脳会議)のコミュニケ(共同声明)の文言はまだ最終決定されていないと述べたが、「ウクライナについて団結し、強いメッセージを発すると確信している」と表明。

10日夜の協議後には、トルコがスウェーデンのNATO加盟への支持に合意したと、ストルテンベルグ氏は発表した。この一報はアメリカやドイツ、そしてスウェーデンに歓迎された。

トルコはこれまで数カ月間、スウェーデンについて、トルコがテロ組織に指定するクルド人武装勢力を受け入れていると非難し、その加盟申請に難色を示していた。ストルテンベルグ氏は今回、トルコとスウェーデン両国が「トルコの正当な安全保障上の懸念」に対処してきたと説明した。

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は先に、凍結されているトルコの欧州連合(EU)加盟交渉が再開されれば、スウェーデンのNATO加盟を支持すると示唆していたが、この要請はEUによってはねのけられた。

プーチン氏の考えを変えられるか

2日間にわたる首脳会議では、東欧における戦力を強化することで将来のロシアの侵略を抑止し、同盟国を防衛する新たな計画に合意する見込みだ。

また、国防費の増加にも取り組む見通しで、現在は目標としている「国内総生産(GDP)比2%」を、下限に変更する。イギリスのリシ・スーナク首相の報道官は、この数値の達成を同首相が各国首脳に直接働きかけるだろうと述べた。

サミットが開催される首都ヴィリニュスでは厳重な警戒態勢が敷かれている。NATO軍が、地対空ミサイルシステム「パトリオット」も配備して、ベラルーシやロシアの飛び地カリーニングラードからそう遠くないこの場所を守っている。

このサミット全般の目的は、ウクライナに対するNATOの長期的な軍事コミットメントを、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領にしっかり理解させることだ。

NATO側は、そうすることでプーチン氏に考えを変えさせ、西側諸国に粘り勝てないかもしれないと感じるよう仕向けたいと考えている。

そのため今回の首脳会議については、プーチン氏に戦略変更を迫るという点において、戦場での軍事的勝利と同等の重要性を持つかもしれないと見る向きもある。

加盟国の一部は、ウクライナ政府に新たな安全保障を約束する予定だ。アメリカのジョー・バイデン大統領は、アメリカがイスラエルに行っている軍事支援をウクライナにも与えることを示唆している。侵略を抑止するための長期的なコミットメントだ。

NATOはまた、ウクライナとの組織的な連携も深めていく方針で、現存の「ウクライナ・NATO委員会」を「ウクライナ・NATO理事会」に格上げする。これにより、ウクライナはNATO同盟国と同等の立場で、会議を招集できるようになる。「相談できる権利は決して軽いものではない」と、あるNATO関係者は語った。

ウクライナの加盟をめぐる思惑

しかし最も重要なのは、一部の加盟国がウクライナのNATO加盟への道をより明確に示そうとしていることかもしれない。

NATOは2008年のブカレストでの首脳会議で、ウクライナの「将来の加盟」を約束し、その加盟申請を支持した。しかし、加盟の方法や時期については言及しなかった。NATOがウクライナに目的地を与えながら旅程は示さなかったことが、プーチン氏に2014年と2022年に侵略のリスクを取らせることになったと批判する人もいる。

ロイター通信はアメリカ政府関係者の話として、バイデン氏が今回の首脳会議でゼレンスキー氏と会談する予定だと伝えている。ただゼレンスキー氏はまだ、サミットへの参加を公に認めてはいない。

The Lithuanian and Nato flags

画像提供, EPA-EFE/REX/Shutterstock

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ウクライナ政府は、戦争が続くうちはNATOが正式加盟を認めないことは受け入れている。NATO条約の第5条は、「欧州または北米における1または2以上の加盟国に対する武力攻撃は全加盟国への攻撃と見なす」と定めているため、NATOとロシアの戦争になるリスクがあるからだ。

その代わり、ウクライナは戦後の加盟を、スケジュールと共に確約してもらいたいと考えている。それにより、勝利がNATOの核の傘による安全保障につながると、はっきり知ることができるからだ。

NATOがウクライナの加盟について歓迎のシグナルを送る方法としては、「加盟行動計画(MAP)」の期間の短縮が挙げられる。MAPは、加盟申請した国がNATOの厳しい軍事・統治基準を満たすかを見極める公式手続きで、数十年かかる場合もある。

しかし、ウクライナの加盟の可能性についてNATOとしてどんな発言をするかをめぐって、NATOが分裂している。

バルト三国や東欧の加盟国は、できる限りの明確さを求めている。これらの国々はNATOに対し、ウクライナが加盟に向けてどれだけ前進したか、特に、NATOと同様の武器と戦略を共有した今、ウクライナ軍が他のNATO部隊とどれだけ緊密に活動できるようになったかを、明らかにするよう主張している。また、ウクライナが加盟するには、さらにどのような条件をクリアしなければならないのかも、明示するよう訴えている。

リトアニアのギターナス・ナウセーダ大統領は、ウクライナの加盟が地平線にならないようにすべきだと、NATOに注文した。 「地平線は、そこに向かって歩くほど遠ざかっていく」。

一方、アメリカやドイツを含む一部の加盟国は、ウクライナに多くを約束することに慎重だ。それらの国々はウクライナに対し、汚職対策や司法の強化、軍に対する文民統制の確保について、さらなる行動を求めている。

また、NATOがロシアとの紛争に引きずり込まれることを心配する声もある。ウクライナに戦後の加盟を約束すれば、プーチン氏が紛争をエスカレートさせたり、ウクライナの加盟を阻止しようと低強度の戦闘を続けて紛争を長引かせたりする動機を与えてしまうことが懸念されている。

また、戦後の交渉における駆け引きの余地が失われることを心配する加盟国もある。そうした国々は、ウクライナの加盟の約束を、ウクライナにはアメとして、ロシアにはムチとして、戦闘が終結した後に限って利用したいと考えている。