ウクライナ・カホフカの貯水池、干上がる ダム爆破後の変化を衛星画像で検証
アーワン・リヴォールト、マーク・ポインティング、ロブ・イングランド BBCヴェリファイ(検証)

画像提供, Reuters
ウクライナ南部ヘルソン州のロシア支配地域にあるカホフカ・ダムが6月6日に決壊して以来、欧州最大規模の貯水池が干上がりつつある。
BBCヴェリファイ(検証)チームが衛星画像を調べたところ、4つの運河系が貯水池から切り離されてしまったことが分かった。
国連によると、主にロシア支配地域で70万人以上の飲み水が影響を受ける恐れがある。
運河から水が採取できなくなれば、周辺地域での食料生産に深刻な影響が出ると専門家は指摘する。
カホフカ・ダム(Kakhovka Dam)が破壊されたことで、周囲の広い範囲に水が流出し、住宅地や農地が浸水した。カホフカ貯水池(Kakhovka Reservoir)の水位は急激に下がり、北クリミア運河(North Crimean Canal)へ水が届かなくなった。
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ダム崩壊後の衛星画像では、カホフカ・ダムと貯水池の両方で水位が下がっているのが見て取れる。
この地域の運河系は、ウクライナ南部の広い地域にとって飲料水の水源であるほかに、広大な面積の農地灌漑(かんがい)に水を供給していた。ダムは主に南と南西の下流地域にとって、浸水を防ぐ洪水管理の役割も果たしていた。


BBCヴェリファイは衛星画像を使って、運河の入り口4カ所を観察した。貯水池の水位低下に伴い、6月15日までに4カ所すべてが寸断されてしまった。
さらに衛星画像を見ると、かつて18立方キロメートルの水をたたえていた貯水池は、かなり干上がっている。
衛星画像から、6月5日には満々と水をたたえていたカホフカ貯水池が、6月18日にはかなり干上がっていたのが分かる。
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貯水池の浅い部分から底が露出し始め、1956年にダムが建設される以前のドニプロ川のもとの形が一部、見て分かるようになった。
衛星画像から、貯水池から離れた場所では運河にまだ水が残っているのが分かる。干上がるまでにどれくらいかかるのかは不明だ。
ロシアによる侵攻が始まる前、ドニプロ川の両岸で計約5840平方キロメートルの農地が運河から水を引いていた。そのうち半分が、灌漑施設の利用を必要としていた。ウクライナ政府によるとこの農地の2021年生産高は、穀物と油糧種子を合わせて計約200万トンに上った。


貯水池の下流にある地域の多くがダム破壊後に浸水したが、長期的には大規模な運河系の渇水に伴う水源枯渇が、地域の食料生産に打撃を与えることになる。米航空宇宙局(NASA)の関連機関で国際食料安全保障を研究する共同事業体、「NASAハーヴェスト」のインバル・ベッカー=レシェフ博士は、そう指摘する。
「(運河は)主に夏に植え付ける作物の灌漑を担っていた。トウモロコシ、大豆、ヒマワリなどだ。しかし、冬に植え付ける小麦や、いろいろな野菜、メロンなどの果物も、運河の水に頼っていた」
雨だけで育つ作物も中にはあるが、運河が干上がってしまうと、いざ雨が降らずに水不足になれば農地はひとたまりもない。飲料水への影響もある。
ベッカー=レシェフ博士によると、干上がったままの運河は沈泥が堆積してしまい、効力が失われる。その状態が長続きすればするほど、状態は悪化する。
国連のマーティン・グリフィス事務次長(人道問題担当)兼緊急援助調整官はかつてBBCに、カホフカ・ダムの破壊によって「世界の食料安全保障は大打撃を受ける」と話していた。ダムの周辺地域は「ウクライナにとってだけでなく、世界全体にとって、主食を作り出す穀倉地帯だからだ」と。
ウクライナはヒマワリ、トウモロコシ、小麦、大麦の一大輸出国だ。ウクライナの穀類に大きく依存する中東やアフリカの諸国をはじめ、世界の食料供給に、現在の戦争は打撃を与えてきた。
解決策はあるのか
被害地域で水の安全を復活させるため、長期的な解決策は少なく、ダムの再建がそのひとつのようだ。
「水位が下がってしまったので、水が運河に届かない。単純な話だ。水位を上げるには、ダムを再建する必要がある」。ウクライナのミコラ・ソルスキイ農業政策・食料担当相はそう話す。
農業用水や飲料水の問題に加えて、ダムは水位の極端な上昇や低下を制御していたため、ダムが破壊されたままでは地域の渇水・洪水リスクが高まる。
オランダのエンジニアリング会社ロイヤル・ハスコニングで洪水・沿岸管理対策のアドバイザーを務めるヤープ・フリクヴェールト氏は、「下流の広い流域が制御されていない状態だ。雨期になれば、増量した水がそのまま流れ込んで洪水となる」と指摘する。
ダムを修理するか、あるいは大がかりな水防工事を施さない限り、川の水位とほぼ同じ高さの土地は、人の居住に適さない場所になってしまうと、フリクヴェールト氏は言う。
「避難した何万人もが、こうした対策をとらない限り、かなり長いこと自宅には戻れないと思う。被害地域の人たちが現状のままで元の場所に戻れるとは、考えにくい」









