【検証】 ウクライナ商業施設へのミサイル攻撃、ロシアの主張をファクトチェック

BBCリアリティーチェック(ファクトチェック)&BBCモニタリング

Kremenchuk mall after a Russian missile strike

画像提供, Reuters

画像説明, ミサイル攻撃を受けたウクライナ・クレメンチュクの商業施設跡

ウクライナ中部クレメンチュクで27日、商業施設が攻撃された。それから数時間のうちに、インターネット上ではうその主張や証明されていない主張が拡散され始めた。

それらの主張は、メッセージアプリ「テレグラム」のロシアのチャンネルや、ロシアのドミトリイ・ポリャンスキー国連次席大使が拡散した。中には攻撃そのものが「偽物」で「演出されたもの」だという主張もあり、ロシアのテレビでも繰り返し流された。

ロシア国防省は28日、攻撃を受けたショッピングセンターは「営業していなかった」とし、近隣の武器貯蔵施設への爆撃が商業施設の二次火災を引き起こしたとする声明を発表した。しかしこれらの主張はウクライナ当局から否定されている。

一体何が真実なのだろうか?

クレメンチュク

主張:ショッピングセンターは「営業していなかった」

この主張は間違っている。BBCの現地記者は、攻撃時に施設内にいた買い物客や従業員から話を聞いている。

攻撃から数時間後には、地元のテレグラムチャンネルに、行方不明になった従業員や買い物客の詳細が複数投稿されている。

ある親ロシア派の「事実確認」チャンネルは、今年3月以降、このショッピングセンターの内部の写真がインスタグラムに投稿されていないと指摘した。

しかしBBCは、近隣の村在住で定期的にクレメンチュクに買い物に行っているという女性から、ショッピングセンターは「常に営業」していて、少なくとも週に1度は家族も訪れていたとの証言を得た。

Inside the shopping centre things appeared to be normal in a video filmed two days before the attack

画像提供, Marina Doohova

画像説明, 攻撃の2日前に撮影された動画では、施設内部はいたって通常に見える

この女性はまた、6月25日にショッピングセンター内で撮影した動画を共有してくれた。この動画には、営業中の店舗や施設内を歩く人々が映っていた。インターネット上にある似たような動画の中には、攻撃の前日に撮影されたものもあり、普段通りの店舗や買い物客の様子がみてとれる。

A still from a video showing businesses open as usual two days before the attack

画像提供, Marina Doohova

画像説明, 攻撃の2日前に撮影された映像の一部。ショッピングセンターが通常営業している様子がわかる

一部のテレグラムチャンネルは、施設内には女性や子供がおらず、この建物が軍事施設に変えられていたと示唆している。しかしいくつかの目撃証言やインターネット上の動画によれば、この主張も間違いだ。

主張:武器貯蔵施設の爆撃がショッピングセンターに火災を広げた

ロシア国防省は、武器貯蔵施設への爆撃で弾薬などが爆発し、ショッピングセンターに火災を広げたと主張している。

声明では、「ドンバスのウクライナ軍に送るために倉庫に備蓄されていた欧米製の武器と弾薬が、高精度の爆撃を受けた」と説明した。

これに対しウクライナ当局は、近隣に武器庫はないと述べている。

ショッピングセンターから約600メートル離れた公園の池の周りに設置された監視カメラの映像からは、ミサイル2発がこの地域に落とされたことが分かる。

動画説明, ロシアのミサイルが直撃した瞬間 付近の公園で逃げ惑う人々

監視カメラで把握できるミサイルの正確な落下地点を、この地域の空撮画像と照らし合わせると、1発はショッピングセンターの東側に、もう1発は付近の工場の北の端となる、池の南端近くに落ちている。人工衛星写真でも、この2地点にミサイルが落ちたことが確認できる。

ロシア国防省が言及した工場は、ショッピングセンターの北側300メートルほどのところに位置する。2つの施設は壁や植栽、鉄道の線路などで隔たれており、「2回目の爆発」がショッピングセンターでの大火災と複数の死傷者発生につながったという主張には信憑性(しんぴょうせい)がない。

ウクライナのオンライン雑誌「キーウ・インディペンデント」によると、地元自治体の広報担当者は、この機械工場が攻撃され、2人が負傷したと認めている。

この地域の緊急サービスのスウィトラナ・リバルコ氏は、工業施設内に武器が貯蔵してあったという主張を否定している。

「この施設は道路設備や、道路建設のための機械を製造する場所だ。また、従業員がキュウリを育てている温室もあった」

主張:攻撃は「演出されたもの」で「扇動」行為だ

Flames engulfing the mall in Kremenchuk

画像提供, TELEGRAM/V_ZELENSKIY_OFFICIAL

画像説明, クレメンチュクの商業施設からは大きな炎が上がった

この主張は、ロシア国防省の公式声明と矛盾する。しかし、ポリャンスキー国連次席大使などの外務高官も、クレメンチュクの攻撃は「ブチャのようなウクライナ側の扇動行為だ」とツイッターで述べている。

これに関しては単純に、ウクライナがこのショッピングセンターを攻撃した、あるいは攻撃が「演出されたものだった」という証拠はなく、提示されてもいない。

これはロシア政府支持者がよく使う戦術だ。攻撃の直後に、複数の、矛盾する、証拠のない物語を投げかける。

今回の主張も、ロシアとその支持者が拡散したものの、すでに論破された誤った主張と似ている。そうした主張の例としては、マリウポリの産院への攻撃ブチャの民間人殺害が何らかの形で捏造(ねつぞう)または演出されたというものがある。

ポリャンスキー氏はツイッターで、この攻撃は「ウクライナが実際に起きていることの偽の様子を広めるため、できるだけ注目を集めようとして起こしたこと」であり、「私のツイートはロシア(国防省)の説明とは矛盾しない」と述べている。

取材:オルガ・ロビンソン、シャヤン・サルダリザデフ、ダニエレ・パルンボ、クリス・パートリッジ、ジョシュア・チザム、ニック・ビーク