「協力などしていない」、ロシア軍に占領された都市の人々は今 ウクライナ侵攻
ジョエル・ガンター(ウクライナ・リヴィウ)

ウクライナ南部メリトポリのイワン・フェデロフ市長は7日、机に向かい、フェイスブックに日報を投稿した。
この日の投稿ではフォロワーに対し、メリトポリ市を制圧しているロシア軍が市の通信網を掌握したため、テレビやラジオで見聞きすることには慎重になる必要があると呼びかけた。
どれほどの人数がこの警告を読めるのかは分からない。メリトポリ市でもインターネット接続が途絶えており、メッセージアプリの「ワッツアップ」や「テレグラム」で誰かと連絡を取ったり、数分以上接続を保つことはほとんど不可能になっている。
やっとテレグラムがつながった時、フェデロフ市長はBBCに対し、通常の電話回線も使えないと話した。
「私たちが使うことはできません。ロシア側が簡単に聞いてしまえるので」
1週間前にロシア軍がメリトポリ市を制圧した際、部隊は市長の事務所を荒らしまわり、職員らを追い出してしまった。市長とそのチームは現在、別の場所からメリトポリを維持し続けようとしている。
「私たちはロシア人とは一切協力していません」と、フェデロフ市長は熱心に語った。
「ロシア人は私たちを助けようとしなかったし、助けることもできない。私たちも彼らの助けは要りません」
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナへの侵攻について、歴史的にロシア語を話すロシアの土地だった場所を、ナチスから解放するのが目的だと主張している。しかしメリトポリを含む、ウクライナ南部や東部のロシア語圏の都市では、プーチン氏の部隊は占領軍と捉えられている。

画像提供, Reuters
「メリトポリでは毎日抗議デモが行われています」と、侵攻前に家業の電気店経営を手伝っていたユリア・コヴァリオヴァさん(33)は言う。
「ロシア軍が私たちに発砲し、男性1人が撃たれたこともありましたが、私たちは抗議をやめていません」
「一緒に抗議しているので怖くありません。一人で夜道を歩くのは怖いですが、抗議するのは怖くありません」
フェデロフ氏によると、先週起きたこの発砲で男性が脚をけがしたにもかかわらず、8日には約5000人がメリトポリの中央広場に集まったという。へルソン、ベルジャンシク、スタロビルスク、ノヴォプスコフなど、占領下および一部占領下の都市や町での抗議デモの様子が、動画で公開されている。BBCは、住民や地元市長を取材し、現地の状況を把握しようとした。
「抗議している人の数をどう数えていいかわからない。少なくとも2000人はいると思った」と、南部へルソンでIT関係の仕事をしているユノナさん(29)は言った。
「友人の一人がロシア兵に殴られて連れ去られましたが、人々が怒って占領軍を通りまで追いかけ、彼を連れ戻しました」
へルソンのロシア軍は若々しく、不安そうだったと、英語教師のオルハさん(63)は言う。
「私たちは毎日デモに行き、彼らは私たちの近くにいるのですが、怖そうにしています」
「私たちはただ、ウクライナ軍がロシア軍を追い出すのを待っているだけなのに」

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ウクライナのデモ参加者に対する深刻な暴力行為の報告は限られており、ほとんどの場合、ロシア軍は緊張して見守っているようだ。しかし、地元市長の中には、市民に街中での活動をどこまで奨励するかというジレンマに直面している人もいた。
メリトポリ市長のフェデロフ氏は、「市民は抗議する必要があるが、同時に自分たちの命を守る必要もある」と語った。
「ロシア兵には近づかず、回り道するようにとお願いしている」
ドンバス近郊のノヴォプスコフのヴァディム・ガエフ市長は、これまでは毎日抗議デモがあったが、3日前にロシア兵が3人の抗議者に発砲し(致命傷ではなかった)、1人を殴打したため、抗議は止まったとBBCに語った。また、ロシア軍は仲介者に対し、抗議参加者を射殺する許可を得たので、もうそうした活動はないはずだと言ったという。
ノボプスコフでの出来事は、ロシア軍の占領下にありながらも現地公務員がなお仕事を続けている、ウクライナ一部の地域で繰り広げられている奇妙で不安なシナリオの一例であるように思える。近くの占領地スタロビルスク市でも、ヤナ・リトヴィノヴァ市長も遠隔操作で仕事をしている。
「新しい『行政体』が発足されました。私たちが知っているのは、それが政府の建物を回り、人々に協力を求めているが、みなが拒否しているということだけです」
ロシアがノボプスコフを占領したとき、ガエフ氏とそのチームは自らの行政を維持するために町を離れた。この行動について、住民の間では意見が分かれていると、ガエフ氏は言う。裏切り者と非難する人もいれば、彼がまだ働けることに感謝する人もいる。
へルソンの住民2人はBBCに、同市の市長はロシア軍に協力することで自分たちを切ったと思っていると語った。こうした非難は、テレグラムのチャットグループで拡散されている。しかし別の2人は、市長は街を維持するためにできることをやっているだけだと話した。
同市のイゴール・コリハエフ市長はBBCの取材で、「もし私がこの街を裏切ったのなら、なぜまだここにいるのか? 毎日市役所に来て、チームと共に街を維持し続けています」と語った。
コリハエフ市長はヘルソンの優先課題として、食品製造の再開と、人々に仕事に戻ってもらうことを挙げた。
「食料不足に陥っているのに、支援物資が入ってこない。そういう状況です。なので市民には、食べられるものなら何でも作り、作れる物があれば何でも作ってほしいと呼びかけています」
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占領された都市からBBCの取材に応じたほとんどの住民は、食料が急速に不足していると述べた。
メリトポリのコヴァリオヴァさんは、「店はほとんど空っぽです。残っているものは買えるが、ほとんど残っていませんと」と語った。
「薬局は空っぽで、母は心臓の薬を買えません」
コヴァリオヴァさんによると、先週、人道支援のマークをつけたロシアのトラック2台が市街地にやってきて、食料を配ろうとしたが、撮影隊も連れてきた。市民のほぼ全員が、このトラックを拒否したという。
「後日、その様子をテレビで見ました。ロシアが市のテレビ塔を占拠したので、今はロシアの1チャンネルしか映っていませんが、人々が食料を受け取り、ロシアの人道的輸送隊にいかに感謝しているかを語っている様子が映っていました」
同市でピアノ教師をしているマキシムさん(22)も、人道支援の車列と思われるものについて説明した。
「その団体は撮影していて、食料を受け取る俳優が到着したとみんなが言っていた」
へルソン市のユノナさんも、地元で同じものを見たと言い、ウクライナのメディアも、ベルジャンシクでの同様の出来事について報じている。
メリトポリのフェデロフ市長は、こうした「人道的輸送隊」についても聞いたことがあると語った。しかし、「本物のロシアのトラックも、本物のロシアの食料もなかった」という。
「ロシア軍はいつでも人道回廊を開いて食料や医薬品を持ち込むことができるのに、それを望んでいません。我々は知っているし、試したこともあります」
8日の午後、フェデロフ氏はいつものようにフェイスブックを更新し、余裕のある市民に公共料金を支払うよう訴え、国際女性デーにちなんでウクライナの女性を祝福した。
「戦争がすぐに終わり、平和なウクライナのメリトポリで、すべての祝日を祝うことができると確信しています」








