電話の向こうから漏れ聞こえた声 それがトランプ氏のダメージに?

アンソニー・ザーカー、BBC北米担当記者

William Taylor

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画像説明, 駐ウクライナのテイラー大使は下院公聴会で、新しい内容を証言した(13日、ワシントン)

ドナルド・トランプ米大統領に対する連邦下院の弾劾調査が、13日に初めて公聴会という公の場で行われた。とはいえ、非公開の形では約1カ月にわたり調査は続いていた。そのため、現職や元職の政府関係者が次々と証言する内容をこれまで追いかけてきた人にとって、新味のある内容は公聴会初日には出ないのではないかと思われていた。

しかし、証人として出席したビル・テイラー駐ウクライナ臨時代理大使が、すでに明らかになっている内容とは別のことを、冒頭発言の終盤で言い出した。

テイラー大使は、自分の部下の1人がゴードン・ソンドランド駐欧州連合(EU)大使と同席中、ソンドランド氏とトランプ氏が電話で話をしていたと語りだした。その日付は今年の7月26日。いまや有名になった、トランプ氏とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との電話会談の翌日だ。

テイラー大使によると、電話の向こうのトランプ氏の声が、自分の部下の耳に入った。トランプ氏は「捜査」についてソンドランド大使に質問し、ソンドランド氏は「ウクライナ側は前に進める準備ができている」と答えたという。

さらにソンドランド氏はテイラー大使の部下に、トランプ氏は民主党のジョー・バイデン前副大統領とその息子をウクライナが捜査するかどうか、それを何より気にしていると話したという。ウクライナのほかの何よりも、捜査のことを重視していたと。

これは、大事な節目になるのかもしれない。

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ソンドランド氏とウクライナのやりとりについては、これまでの調査ですでに相当の証言が積み上がっている。ウクライナ政府がバイデン親子への捜査に着手しなければアメリカからの軍事援助は停止したままだろうと、自分がウクライナ政府関係者に9月1日の時点で伝えたことを、ソンドランド大使は自ら認めて証言している。

13日の公聴会証言でテイラー大使は、ソンドランド大使から聞いた話として、こう述べた。トランプ大統領はビジネスマンとして、「小切手に署名する」前に「自分の取り分」が何か知りたがったし、ウクライナが行動しなければ「事態は手詰まり」になってしまうと。このソンドランド発言の意味は、ウクライナがバイデン親子を捜査しないなら、ウクライナが必要とする軍事援助は再開されないということだと解釈したと、テイラー氏は述べた。

Chairman Adam Schiff (L), Democrat of California, and Ranking Member Devin Nunes, Republican of California, during the first public impeachment hearing

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画像説明, トランプ大統領の弾劾調査の一環で初の公聴会を開いた米下院情報委員会のシフ委員長(左、民主党)とヌネス筆頭委員(右、共和党)

ソンドランド駐EU大使が大統領に直接電話できる立場にあるということは、これまでも言われてきた。しかし、政敵への捜査の見返りとしての軍事援助という交換条件の提示について、トランプ氏が直接関わっているという証拠はまだ出ていない。

テイラー大使が明らかにした電話の内容が、すべてを変えるかもしれない。

下院情報委員会は13日の公聴会の最中に、15日の非公開会合で新しい証人が証言すると明らかにした。新証人はテイラー大使の側近、デイヴィッド・ホームズ氏だという。このホームズ氏こそ、テイラー大使が言及した部下のことだと言われている。

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来週にはソンドランド大使も、公聴会で自ら証言する予定だ。

10月に非公開で証言した際、ソンドランド氏は大統領とそういう電話のやりとりがあったことを明らかにしていなかった。しかし、ソンドランド氏はすでに一度、当初の証言を修正している。ウクライナ政府幹部に、軍事援助と引き換えにバイデン親子の捜査着手を発表する必要があるだろうと告げたことを、当初は認めていなかったが、今月初めになってそういうやりとりがあったことを思い出したと、証言を修正しているのだ。

野党・民主党は、ソンドランド氏がまたしても証言内容を変えることを期待しているかもしれない。

ソンドランド氏、あるいはホームズ氏が、テイラー大使の今回の証言を裏づければ、トランプ氏の関与を否定する陣営の主張にとって打撃となり得る。

テイラー大使は、バイデン親子を捜査するようウクライナ政府に圧力をかけていたのは、正規の外交ルートとは異なる「非正規」ルートだと証言した。

トランプ大統領を擁護する人たちは、この「非正規」ルートにトランプ氏は深く関わっていないと弁明している。

ソンドランド氏との関係について今月初めに尋ねられたトランプ氏は、「その人のことはほとんど知らない」と答えている。しかし、その「ほとんど知らない」大使がウクライナ政府関係者と会談した後に大統領に直接電話をし、大統領がそれを受けていたというなら、「ほとんど知らない」という言い分は信じにくくなる。

13日にトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と会談し、共同記者会見に臨んだトランプ氏は、公聴会で言及のあった電話について「何も知らない。そんな話は初めて聞いた」と述べている。

となると、今後の公聴会でホームズ氏かソンドランド氏が、大統領の発言を否定する証言をする可能性も出てくる。

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この一方で、公聴会初日の証言でニュース記事の見出しになりやすい新しい情報が出て、新しい調査の方向性が提供されたことで、政治的な憶測も飛び交うことになった。

米政治ニュースサイト「ポリティコ」は、「弾劾調査で民主党、大統領に打撃となる新証拠を入手」と見出しにとった。

米誌「アトランティック」は、「ウィリアム・テイラー、弾劾で大暴露」と書いた。ニュースサイト「Vox」は、「ビル・テイラーが爆弾発言」と強調した。

こうした事態に、与党・共和党からは反発の声が上がっている。

共和党のマーク・メドウズ下院議員は記者団に、「ここに来るまでに何時間も準備をしてきたのに、いきなり部下から奇跡的な耳打ちをされて何かを思い出したって?」と述べた。「何が事実か点検すれば、何が真実なのか、印象は人それぞれだ」。

公聴会初日に大きな新情報の暴露があり、民主党にとっては歓迎すべき事態だろうが、大統領のスタッフにとっては頭痛の種がまた増えたことになる。

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