【寄稿】 総選挙か国民投票か、イギリスの有権者はどちらを希望?
サー・ジョン・カーティス、ストラスクライド大学政治学教授

テリーザ・メイ前首相が2年前に総選挙の前倒しを発表した際、誰もが歓迎したわけではなかった。
「ブレンダのブリストル」と呼ばれるようになった女性は、多くの有権者の気持ちを代弁するかのように、反応を求めた記者にこう言った。
「冗談でしょ、またやるの!? なんなのそれ、ああもう、ひどい。正直な話、もう耐えられない。このところもう政治ばかりでひどすぎる。あの人はなんでそんなことしなきゃいけないの」
英下院は29日、ボリス・ジョンソン首相が提出した12月12日を総選挙の投票日とする法案を賛成多数で可決した。
4年間で3回目の総選挙になる。しかも、クリスマスのわずか2週間前だ。
有権者は本当に選挙を望んでいるのか
調査会社イプソス・モリは10月中旬、単刀直入に有権者に尋ねている。「今すぐ総選挙」をするべきかどうか。
総選挙の実施を支持した人は44%、反対は27%だった。一方で、「どちらとも言えない」、あるいは「分からない」と答えた人は29%だった。
調査会社オピニウムと同YouGovによる9月末の調査でも、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)が延期された場合は総選挙を行うべきかという質問に、同じような結果が出た。オピニウムの調査では44%が選挙に賛成、20%が反対。YouGov調査では、42%が賛成、34%が反対だった。

いずれも、有権者の多くが強く選挙を望んでいるという結果とは程遠い。
むしろ、YouGov調査によると、総選挙をすればブレグジットをめぐる膠着(こうちゃく)状態が打破されると考える人は25%にとどまった。その一方で、総選挙に反対だという人は少数派のようだ。
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総選挙か国民投票か
その一方で、質問の仕方を変えると、別の光景が見えてくる。ブレグジットの次の段階は総選挙か、それとも国民投票か、どちらが良いと思うかと有権者に尋ねた場合だ。
各社の世論調査ごとに質問の仕方は異なり、その違いが重要な意味を持つこともある。それでもほとんどの調査で、総選挙よりは国民投票の方が好ましいという結果になった。その差はわずかで、総選挙も国民投票も特に歓迎されていないことには変わりはないが。
調査会社パネルベース(10月中旬調査)とYouGov(9月下旬調査)は共に、ブレグジットの膠着打破に総選挙と国民投票とどちらがより良い解決策か尋ねた。どちらの調査でも約40%が国民投票を、約33%が総選挙を選んだ。

他の世論調査は、ほかの方策と組み合わせて総選挙と国民投票について意見を聞いている。ほかの方策とはたとえば、EUと交渉を続ける、下院がもっと時間をかけてジョンソン首相の離脱卿提案を審議する、挙国一致政府を作る――などだ。
オピニウムによる10月中旬調査では、31%が総選挙を、23%が国民投票をより好ましいと答えた。しかしこれは例外で、他の調査は軒並み、国民投票の方が支持率は高かった。
端的に言えば、こういう聞き方をすると、実は国民はそれほど総選挙を望んでいなのかもしれないということになる。
EU離脱派か残留派かで違うのか
とはいえ、ただ単に選挙の前倒しを支持するかどうかを聞く世論調査と、選挙と国民投票のどちらが良いか聞く世論調査の違いは、ほかにもある。
2016年6月の国民投票で、EU離脱に入れた人と、残留に入れた人では、反応が大きく異なるのだ。
ただ単に、選挙の前倒しを支持するかという質問では、残留に入れた人の半数か3分の2が、選挙を支持すると答えた。反対は多くても3割に留まる。
対照的に、国民投票で離脱に入れた人は、総選挙の前倒しについて半々か、あるいは明確に反対している。

離脱派が相対的に、総選挙に消極的なのは意外に思えるかもしれない。政府は、「ブレグジットを実現する」ために総選挙が必要だと主張してきたのだし。
しかしこの結果はただ単に、選挙を行えば自分たちの考えの近い政府が誕生するかもしれないと残留派の考えを、反映しているのかもしれない。
同時に、2016年に離脱に入れた人は、ブレグジットの延期につながるという補足説明つきの選択肢を、あまり選びたくなかったのかもしれない。
有権者は膠着打破のため国民投票を支持しているのか
ブレグジットをめぐり膠着する現状を打破するには、選挙と国民投票のどちらが良いかという聞き方に変えると、結果は逆の出方をする。
残留派は選挙よりも国民投票を明確に支持している。
反対に、離脱派は同じように明確に選挙を支持する。
選択肢を増やした調査でも、結果は同じだった。オピニウム調査のみ、国民投票より総選挙の支持が多かったが、それでも残留派は44%が国民投票を支持し、総選挙の方が良いという回答は20%に留まった。これに対して離脱派では、44%が総選挙を支持し、国民投票は6%だった。

なぜ残留派と離脱派とで、これほど考えが違うのか。
それは、ブレグジットに反対する政党が国民投票を支持しているからだ。複数の世論調査によると、現時点でまた国民投票を行えば、EU離脱の撤回を支持する結果が僅差ながら出るだろうと言われている。現時点では残留派が52%、離脱派が48%で、2016年の国民投票の結果とほぼ正反対だ。
しかし同時に今の世論調査は、ジョンソン首相率いる保守党が総選挙で勝ち、単独過半数を得る可能性を示している。ブレグジット実現を強力に推進するジョンソン首相は、2度目の国民投票に強く反対している。
有権者は多くの政治家と同様、自分にとって望ましいブレグジットの結果につながるのは何かと考え、その方策を選んでいるのかもしれない。
だとすれば、総選挙を前倒しで実施することの是非について、残留派と離脱派の意見が大きく食い違うのは、決して意外なことではない。

<この記事について>
この記事は、BBC外の専門家にニュース解説の寄稿を依頼したものです。
本稿の内容のもととなった研究の詳細はこちらで見ることができます。
サー・ジョン・カーティスは英ストラスクライド大学の政治学教授で、独立調査機関・全国社会調査センターならびに独立調査機関「The UK in a Changing Europe」の上級フェロー。











