【寄稿】 イギリスの有権者は合意なしブレグジットを支持しているのか 世論調査は
サー・ジョン・カーティス、ストラスクライド大学教授(政治学)

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ボリス・ジョンソン英首相は断固たる姿勢を貫いている。もし10月末までに、イギリスの欧州連合(EU)離脱の条件についてEUと合意がまとまらなければ、イギリスは合意なしで離脱する覚悟だと。
これに対して英議会は、10月31日の合意なしブレグジット(イギリスのEU離脱)を違法にする法案を可決した。
首相も議会も、民意の後ろ盾は自分にこそあると主張している。
では、世論調査はどちらの言い分を支えているのか。
合意なしを支持?
過去2カ月の間に実施された4種の世論調査が、合意なしブレグジットを支持するか、反対するか、有権者に尋ねている。
質問の言葉遣いは調査によって異なるが、その結果は驚くほど一貫している。
どの調査でも、合意なし離脱を支持する人より、合意なし離脱に反対する人の方がわずかに多い。
4つの調査会社が7月から8月にかけて行った世論調査の結果を平均すると、合意なし離脱に反対(oppose)する人の割合は44%、賛成(support)する人は38%。どちらでもない人は11%。分からないと答えた人は10%だった。

ただし、2016年の国民投票でEU離脱に投票したか、それとも残留に投票したかで、合意なし離脱への態度ははっきり別れる。
2016年に離脱に投票した人(Voted Leave)の73%は合意なしに離脱に賛成だが、残留に投票した人(Voted Remain)の76%は合意なし離脱に反対している。
合意なし離脱への賛否は、3年前に離脱か残留かで世論が割れたのとほとんど同じように、今回も世論を二分している。2016年当時は、有権者の52%が離脱を支持し、48%が残留を支持した。

ではなぜ今年夏の世論調査では、合意なし離脱への反対が賛成を上回っているのか。
「3年前に投票しなかった人たち」というのが、その答えだ。3年前に投票しなかった有権者で、合意なし離脱を支持するのはわずか21%。反対はその倍近くの43%に上る。
受け入れられる妥協
とは言うものの、政府は何が何でも合意なしにEUを離脱するという方針ではない。そうではなく、10月末までに納得できる合意がまとまらなければ、合意がなくても離脱するというのが政府の案だ。
政府のこの姿勢は、合意なし離脱への有権者の態度に反映されているだろうか。
世論調査団体YouGovは8月半ば、「まったく何の合意もないまま欧州連合を離脱する」ことについて、さらに細かく質問した。これに対する回答結果が、示唆的だ。
合意なし離脱は良い(Good)結果か、あるいは悪い(Bad)結果かと聞かれただけでなく、「受け入れられる妥協(Acceptable compromise)」かという回答も選択肢に入っていた。

その結果、2016年の国民投票でEU残留に投票した人(Voted Remain)の82%は、合意なし離脱は悪い結果だと答えた。合意なし離脱に「賛成」か「反対」かの二者択一を求められた際に、残留派の76%が「反対」を選んだこととも、この結果は合致する。
しかし、EU離脱派の結果は様子が違う。
合意なし離脱は「良い」結果だと答えた離脱派は、46%に留まった。合意なし離脱に賛成か反対か、二者択一を求められた離脱派の73%が「賛成」を選んだのより、かなり低い。
なぜこの違いが出たのか。
国民投票でEU離脱に投票した(Voted Leave)回答者の27%は、合意なしブレグジットは「良い」結果ではなく、「受け入れられる妥協」だと答えている。
もしかするとこの違いが、一部の離脱派の意向を表しているのかもしれない。その人たちは、合意なし離脱を積極的に希望するというよりは、つきつめれば支持しても構わないという程度に捉えているようだ。
もし合意が可能なら?

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さらに、ブレグジットがどういう結末に至って欲しいか尋ねると、同じような傾向が表れる。
YouGovは今年6月、次の4つの可能性を好ましい順番に並べるという設問を設けた。
- 合意なし離脱
- すでに政府とEUがまとめた協定を受け入れる
- 単一市場とEU関税同盟への参加を含む、別の協定をもとに離脱する
- 結局はEUに残る
離脱派の59%は、合意なし離脱が一番望ましいと答えたが、33%は何らかの協定をもとにした離脱を希望した。
調査会社カンターが、ほぼ同じ選択肢を提示した調査でも、よく似た結果になった。
受け入れ可能な協定をまとめようと政府が努力したと思えるか、合意破綻(はたん)はEU側の責任だと思うかなどによって、合意なし離脱を支持する人の意見が変わることもあり得る。
調査会社ORBは、「EUが離脱協定について交渉再開に応じない場合」にイギリスは合意のないまま離脱すべきかと質問した。この場合は、合意なし離脱の支持者が46%で、反対の39%を上回った。
対照的に、調査会社イプソスモリは、「イギリスが10月までにEUを離脱するための条件に、イギリスとEUが合意できない場合」に合意なし離脱を支持するか質問した。すると実に50%が反対し、賛成は38%に留まった。
合意なしブレグジットは必要なことだと、EU残留派を説得するのは、かなり難しそうだ。
しかし、相手がEU離脱派の場合、EU首脳部のせいだと説得できれば、その人は合意なし離脱を支持するかもしれない。

<この記事について>
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サー・ジョン・カーティスは英ストラスクライド大学の政治学教授で、独立調査機関・全国社会調査センターならびに独立調査機関「The UK in a Changing Europe」の上級フェロー。











