【解説】葬儀や選挙……教皇フランシスコ死去で今後は

聖ペトロ大聖堂の扉を開く教皇を後ろから写した写真

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キリスト教カトリック教会の教皇フランシスコが21日、88歳で亡くなり、ローマ・カトリック教会の霊的指導者としての12年間の任期を終えた。

教皇の死去を受けて、何世紀も続いてきた儀式を伴う服喪期間が始まった。

また、新しい教皇を選出するプロセスも開始された。教皇選挙会議(コンクラーヴェ)は、教皇の死後15日から20日以内に開催されるとみられている。

これからの流れを説明する。

教皇の死の直後には何が行われる?

今後の公の業務は、現在アイルランド系アメリカ人のケヴィン・ファレル枢機卿が務める「カメルレンゴ」が監督する。

まず、ファレル枢機卿が医師と死亡証明書を伴って、教皇の死を公式に確認する。解剖は行われない。

ヴァチカン(ローマ教皇庁)は、教皇の死を発表した数時間後、現地時間の21日午後8時に、教皇の遺体が「聖マルタの家」内にある礼拝堂に移されると発表した。この儀式はファレル枢機卿が行った。

また、教皇の居室を施錠・封印するのもカメルレンゴの役割。

教皇フランシスコは歴代教皇と異なり、豪華な使徒宮殿ではなく、質素で機能的なゲストハウス「聖マルタの家」に住んでいた。

ファレル枢機卿はカメルレンゴとして、教皇の指輪と、公文書を認証するために使用される鉛の印章を破壊する責任も負っている。これらが他の誰にも使用されないようにするためだ。

ファレル枢機卿と3人の補佐枢機卿はその後、服喪期間を設定し、葬儀と埋葬の日程を決定する。

服喪期間は通常9日間続く。教会の規則では、これらの儀式は教皇の死後4日から6日以内に始まるべきだとされている。

ファレル枢機卿のチームは、教皇の遺体を埋葬前に聖ペトロ大聖堂に移す日程も決定する。ヴァチカンは21日午後、移送は早ければ23日朝に行われる可能性があるが、実際の日程は22日に決まると発表した。

動画説明, 枢機卿らが教皇の居室の扉を封印した

教皇の葬儀

教皇の遺体は伝統的に、聖ペトロ大聖堂の棺台に安置される。

しかし教皇フランシスコは教会の華やかな儀式を避けたため、自分の遺体はふたを開いた棺に納めたまま安置し、信者の追悼を受けられるようにするよう指示していた。

教会の慣習では葬儀は通常、教皇の死後4日から6日以内に行われる。また、葬儀のミサは聖ペトロ広場で行われる。

教皇の葬儀は伝統的に華やかなものだが、教皇フランシスコは昨年、自身の葬儀の簡素化を求めた。

21日にヴァチカンが発表した遺言によると、教皇はヴァチカン市国内ではなくローマのサンタ・マリア ・ マッジョーレ大聖堂に埋葬されることを希望していた。ローマの玄関口「ローマ・テルミニ駅」の近くにあるこの大聖堂は、さまざまな店舗が並び、多様なルーツの人が行きかう、にぎやかで庶民的な地域にある。

教皇がヴァチカン以外に埋葬されるのは、100年以上なかった。多くの前任者はヴァチカンの聖ペトロ大聖堂を選んでいた。

教皇はまた、歴代教皇が使用した伝統的なヒノキと鉛、ナラの三重の棺ではなく、簡素な木製の棺に納められることを希望した。

次期教皇を選ぶ

教皇選挙の準備が整えられたシスティーナ礼拝堂。壁に沿って机が向かい合って並べられている。中央には投票のために枢機卿が立っている

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画像説明, 教皇選挙はシスティーナ礼拝堂で行われる

教皇フランシスコの死に伴い、教会の新しい指導者を選ぶための政治的プロセスが開始される。

世界中の枢機卿がヴァチカンに集まり、「教皇選挙会議(Conclave、コンクラーヴェ)」として知られる選挙が行われる。「Conclave」は「鍵をかけて」という意味。

伝統的に、教皇選挙が始まる前に15日間の服喪期間が設けられる。しかし、フランシスコ教皇の前任者ベネディクト16世は、枢機卿たちが望む場合は早期に開始できるように規則を変更した。投票は通常、教皇の死後15日から20日以内に行われる。

新しい教皇は、枢機卿団によって選ばれる。枢機卿団を構成する枢機卿は、教皇の最高顧問。全員男性で、教皇によって任命され、通常は全員がすでに司教に叙任されている。

カトリック教会の枢機卿は現在252人。そのうち80歳未満の135人が、コンクラーヴェへの参加資格を持つ。80歳以上の枢機卿は、教皇選出の議論に参加することはできるが、投票はできない。

また、新しい教皇が選出されるまでの教会の運営も、枢機卿団が担う。

枢機卿団は教会の日常業務を運営しているが、その権限は限られている。教会の中央管理部門の多くは業務を停止し、通常、ヴァチカンの各部門長は新しい教皇によって追認されるか、交代されるまで辞任する。

教皇選挙のプロセスを示した図

教皇選挙の仕組み

教皇選挙に参加する枢機卿らは、外界との通信が遮断され、電話やインターネット、新聞を使用できない状態で、新しい教皇を選ぶための議論とロビー活動を行う。

選挙は、ミケランジェロによる天井画で有名なシスティーナ礼拝堂内で、外にいっさいの情報を漏らさないようにする厳しい秘密保持の態勢のもとで行われる。

枢機卿たちはラテン語で 「私は最高司祭に_____を選出します 」と書かれたシンプルな紙に、自分が選ぶ枢機卿の名前を書く。位階の序列の順に、銀と金箔(きんぱく)で飾られた大きなつぼの中に投票用紙を入れる。

その後、カメルレンゴの補佐を務める3人の立会人が、票を読み上げて数える。立会人がすべての投票用紙に糸を通してひとつにまとめた後、用紙は燃やされる。

新しい教皇を選ぶには、集まった枢機卿の3分の2以上の多数票が必要。ほとんどの場合、新教皇が決まるまでに投票が複数回繰り返される。初日以降、秘密投票は1日2回行われ、時には数日にわたって続くこともある。

過去には、投票が数週間または数カ月にわたって行われたこともあった。教皇選挙中に、枢機卿が亡くなることもあった。

教皇フランシスコは2013年3月に、5回目の投票で選出された。前任のベネディクト16世は2005年に4回目の投票で、その前のヨハネ・パウロ2世は1978年に8回目の投票で選ばれた。

外界にとって、選挙の進行状況を知る唯一の手がかりは、礼拝堂の煙突から出る、投票用紙が燃やされる際の煙だ。

黒い煙は誰も選ばれなかったことを示し、白い煙は新しい教皇が選ばれたことを意味する。

システィーナ礼拝堂に設置された、投票用紙を燃やす装置と煙突

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画像説明, システィーナ礼拝堂に設置された、投票用紙を燃やす装置と煙突

教皇の決定はどのように公表されるのか?

3分の2以上の票を得た人物が選出結果を受諾すると、システィーナ礼拝堂にある控えの間、いわゆる「涙の間」に連れられる。そこでまず教皇衣と白いカソック(祭服)、「モツェッタ」と呼ばれるマント、「ズッケット」と呼ばれる白い頭巾などを受け取る。

白い煙が上がった後、新しい教皇は通常1時間以内にこれらを着用し、聖ペトロ広場を見下ろすバルコニーに姿を現す。

投票に参加した高位の枢機卿が、「ハベムス・パパム」(ラテン語で「我々は教皇を得た」の意味)という言葉で決定を発表。その後、新しい教皇の教皇名を紹介する。この名前は、元の名前とは異なる場合もある。

たとえば教皇フランシスコはホルヘ・マリオ・ベルゴリオとして生まれたが、カトリック教会の聖人「アッシジの聖フランチェスコ」にちなみ、この名前を選んだ。

歴史上、最も使われている教皇名は「ヨハネ」。

2013年に教皇に選ばれ、聖ペトロ広場を見下ろすバルコニーに登場した際の教皇フランシスコ

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画像説明, 2013年に教皇に選ばれ、聖ペトロ広場を見下ろすバルコニーに登場した際の教皇フランシスコ

誰が教皇になれるのか

理論的には、洗礼を受けたカトリック教徒の男性ならば、誰でも教皇に選ばれる可能性がある。しかし実際には、枢機卿らは自分たちの中から選ぶことを好む。

アルゼンチン出身の教皇フランシスコは2013年、初の南アメリカ出身の教皇となった。この地域は、世界のカトリック教徒の約28%を占めている。

歴史的な前例では、枢機卿たちはヨーロッパ、特にイタリア出身者を選ぶ可能性が高い。これまでに選ばれた266人の教皇のうち、217人がイタリア出身だった。

しかし、教皇フランシスコは任期中、140人以上の枢機卿をヨーロッパ以外から任命した。そのため、次の教皇がヨーロッパ以外から選ばれる可能性もあると、一部のアナリストは指摘している。

ヴァチカン市国の地図。聖ペトロ大聖堂とシスティーナ礼拝堂、聖ペトロ広場が示されている

教皇の職務とは

教皇はカトリック教会の指導者で、カトリック教徒は教皇がイエス・キリストに直接つながる存在だと信じている。教皇はキリストの最初の弟子の一人となった使徒ペトロの、生きた後継者と見なされている。

これによリ教皇は、カトリック教会全体に対して完全かつ妨げられることのない権力を持ち、世界の約14億人のカトリック教徒にとって重要な権威の源となっている。

多くのカトリック教徒は聖書を参考にすることが多いが、教会の信仰と実践を統治する教皇の教えにも頼ることができる。

世界中のキリスト教徒の約半数がカトリック教徒だ。他の宗派、たとえばプロテスタントや正教会のキリスト教徒は、教皇の権威を認めていない。

教皇は世界で最も小さな独立国家のヴァチカン市国に住む。ヴァチカン市国は、イタリアの首都ローマに囲まれている。

教皇は給与を受け取らないが、すべての旅行費用と生活費はヴァチカンによって支払われる。