イスラエル、レバノンを「先制攻撃」 ヒズボラはロケット弾を数百発撃ったと発表

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イスラエル軍は25日朝、レバノン南部にあるイスラム教シーア派組織ヒズボラの標的に対し、戦闘機約100機で「先制攻撃」を実施したと発表した。ヒズボラはその後、イスラエル北部にロケット弾やミサイルを多数発射したと発表した。
イスラエルによる攻撃は午前4時半ごろあった。同国は、ヒズボラがその30分後の午前5時に大規模攻撃を計画していたと説明した。
イスラエル軍によると、レバノン南部の40カ所以上の地域を対象とした戦闘機による攻撃で、イランの支援を受けるヒズボラの数千のロケット発射装置を破壊したという。
イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は、ヒズボラが空からの大規模攻撃を「大がかりに準備」しているのを把握したため攻撃したと説明した。
ヒズボラ側は、戦闘員3人が殺害されたとした。
レバノン保健省は、南部キアムで車がドローン(無人機)攻撃を受け、1人が殺害されたと発表。ティリ村でも2人が殺害されたとした。
一方、ヒズボラは、イスラエル国内と、イスラエルが占領するゴラン高原にある軍事施設11カ所を狙って320発以上のロケット弾とドローン(無人機)を発射したと発表した。
イスラエル軍は、海軍兵1人が殺害されたと発表した。ヒズボラのロケット弾による被害は 「ほとんどない 」としている。イスラエル北部では空襲警報が鳴り響いた。
公開された映像では、イスラエルに飛来するロケット弾を防空システム「アイアンドーム」が迎撃し、上空で爆発していた様子がわかる。
ヒズボラは、この日の作戦は「完了し、達成された」と発表。また、ヒズボラの大規模攻撃を阻止したとするイスラエルの声明を「空虚」だと指摘した。
イスラエルはその後も、ヒズボラのロケット発射装置へのさらなる攻撃を実施したと発表した。
イスラエルが戦闘に関わったとする戦闘機「100機」という数が正しければ、同国によるレバノンへの攻撃としては、イスラエルとヒズボラの間で本格的な戦争となった2006年以降で最大規模となる。
米紙ニューヨーク・タイムズが匿名のイスラエル情報当局者の話として報じたところでは、ヒズボラはイスラエル中央部の最大都市テルアヴィヴへのロケット弾攻撃も計画していたという。
この衝突の激化を受け、再び双方による本格戦争につながるのではないかとの懸念が中東全域に広がっている。
昨年10月7日にパレスチナ自治区ガザ地区でイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まった翌日から、イスラエルとレバノンの国境地域ではほぼ毎日、砲撃が交わされるなどの衝突が続いている。ヒズボラは、ハマスを支援する行動だとしている。ハマスもヒズボラ同様、イランの支援を受けており、両組織ともイスラエルやイギリスなどからテロ組織に指定されている。
レバノン保健省は、昨年10月以降に殺害された人が560人を超えており、大半はヒズボラ戦闘員だとしている。当局によると、イスラエルで殺害された人は民間人26人、兵士23人に上っているという。国連は、国境の両側で20万人近くが避難しているとしている。

「状況を変える新たな一歩」とイスラエル首相
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はこの日の閣議で、「今日起きたことで終わりではない」と発言。「今朝早く、ヒズボラはロケット弾とドローンでイスラエルを攻撃しようとした」、「脅威を取り除くため、イスラエル国防軍(IDF)に激しい先制攻撃を行うよう指示した」と述べた。
ネタニヤフ氏はまた、ヒズボラが発射した短距離ロケット弾だけでなく、「イスラエル中央部の戦略的目標に向けて発射した」ドローンもIDFがすべて迎撃したとした。
さらに、「ベイルートの(ヒズボラ最高指導者ハッサン・)ナスララとテヘランの(イラン最高指導者アリ・)ハメネイは、これが北部の状況を変えるための新たな一歩だと知る必要がある」と警告した。
イスラエル・カッツ外相は、イスラエルは「本格戦争を望んではいない」ものの、「国民を守るために必要なことは何でもする」と、世界の数十人の外相らに伝えていたと述べた。

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「報復の第1段階」とヒズボラ
ヒズボラの指導者ナスララ師は、この日夕のテレビ演説で、国境からイスラエル側に約110キロメートルの場所にある軍事情報基地を標的にしたと述べた。同基地はテルアヴィヴから1.5キロしか離れていない。
ロイター通信によると、ナスララ師はヒズボラが計画通りに攻撃を実行し、すべてのドローンを正常に発射してイスラエルの領空に突入させたと主張。結果が十分でないと判断した場合は、再び対応を取ると警告した。

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ヒズボラは声明で、今回の攻撃は最高幹部フアド・シュクル氏が7月30日にイスラエルによってベイルートで暗殺されたことへの報復の第1段階だとした。
翌31日にはイランの首都テヘランで、ハマスの政治指導者イスマイル・ハニヤ氏が暗殺された。背後にはイスラエルがいたとの見方が強まっている。
以来、中東地域は、ヒズボラとイランの両方の報復がいつなのかと待つ状態となってきた。
イランはまだ報復に出ていない。
中東では、パレスチナ自治区ガザで危機的な状況が続いている。それが地域紛争へと拡大するのを避けようと、各国の外交官らがここ数週間、努力を重ねている。
アメリカは、イスラエルとハマスが停戦と人質解放で合意できない状況が続いていることから、そうした外交努力が失敗に終わる恐れがあると警告している。
アメリカは当事者に強い圧力をかけているが、戦争は10カ月以上続き、停戦合意をめぐる協議は何の結果も生み出していない。
レバノンのナジブ・ミカティ首相はこの日、「事態の激化を食い止めるため、レバノン国家の友人らと連絡を取っている」と述べた。レバノン政府はヒズボラに対する影響力をほとんどもたない。
ミカティ氏は「イスラエルの侵略」を止めることと、イスラエルとヒズボラの2006年の戦争を終わらせた国連安保理決議の履行を要求した。
戦争は望まないが準備は整える
イスラエル軍は、ガザとの境界線と、レバノンとの北部国境の二つの前線で、戦争をする用意があるとしている。
ただヒズボラは、ハマスよりもはるかに手ごわいとされる。15万基近いロケット弾を保有し、中にはイスラエル全土を射程に収めるものもあるとみられている。戦闘員らはハマスよりもよく訓練されており、装備も充実している。シリアでの戦争を経験した者もいる。
ガザでの紛争が始まってからほぼ1年が経過した今、イスラエルに別の戦争への意欲があるのか疑問視する人もいる。イスラエルでは予備役の何十万人もがガザでの戦闘のために招集されており、何回か現地におもむいた人もいる。
一方で、イスラエル北部の住民らをはじめ、多くのイスラエル人が、ヒズボラへの対処が必要だとしている。イスラエル北部では、ガザでの戦争が始まって以来、何万人もが自宅から避難しており、事業を失った人も多い。
レバノン南部でも、イスラエルの攻撃を恐れた数万人が、家を追われている。
イスラエルとヒズボラの指導者らは、再び本格的な戦争になることは望んでいないと言う。しかし双方とも、その準備はできているとしている。











