デンマークの空港などにドローン飛来、防衛のぜい弱性が浮き彫りに 政府は対応模索

画像提供, BO AMSTRUP/Ritzau Scanpix/AFP
ポール・カービー、欧州デジタル編集長
デンマーク西部の空港や軍事基地で25日にかけて、複数のドローンの飛来が確認された。負傷者や物的被害は報告されていないものの、同国の防衛体制のぜい弱さが浮き彫りになった。
いわゆる「ハイブリッド戦争」の時代において、北大西洋条約機構(NATO)の創設時からの加盟国であるデンマークの重要インフラが攻撃を受けやすい状態にあることに、国内では困惑が広がっている。
警察によると、ドローンは24日午後9時44分ごろ、オールボー空港近くで確認された。
また、25日未明にはビルン空港周辺でもドローンとみられるものが確認された。
両空港は閉鎖を余儀なくされた。
エスビャウやセナボー、スクリュドストルプでもドローンが目撃された。オールボー空港は軍事基地としても機能しており、スクリュドストルプには空軍のF-35戦闘機やF-16戦闘機が配備されている。また、ユトランド竜騎兵連隊が展開するホルステブロー上空でもドローンが確認された。
報道では、北海の石油・ガスプラットフォームや、コアセーの港周辺におけるドローン活動について、警察が調べているとされる。
デンマーク軍は現在、どう対応すべきかという問題に直面している。
今回、ドローンは1機も撃墜しなかった。防衛幹部らが、撃墜しない方が安全だと判断したためだった。ただ、これは長期的な解決策にはならない。
同様の課題に直面しているのは、デンマークだけではない。
ここ数週間の間に、ノルウェーやエストニア、ポーランド、ブルガリア、ルーマニアなど、NATOの東側に位置する国々もハイブリッド戦争の標的となっている。
19日にはロシアと国境を接するエストニアの領空に、ロシア軍の戦闘機3機が計12分間侵入した。その約1週間前には、ウクライナと国境を接するポーランドの領空に約20機のロシア製ドローンが侵入。ポーランド軍はドローンを撃墜したと発表した。
こうした事態を受け、エストニアとポーランドはNATO条約第4条に基づく協議を要請した。
NATOはアメリカとヨーロッパの一部の国々の集団防衛体制。NATO条約第4条は、加盟32カ国間の緊急協議開始手続きを定めている。
デンマーク政府は、今回のドローン攻撃は「専門的な勢力」によるものだとしつつ、それ以上は明かさなかった。
デンマーク政府は現在、NATO第4条に基づく協議を要請するか検討している。
デンマークの対応
深刻な事態を受け、デンマークの政府や国防・警察当局の幹部は緊急記者会見を開いた。トロールス・ルン・ポールセン国防相は、標的となった場所の数から、「組織的な」活動とみていると述べた。
ポールセン国防相は「これはハイブリッド攻撃と定義できる」としたが、具体的な証拠がないため、誰による攻撃なのかは明確にしなかった。
ロシアが関与している可能性は排除されていない。メッテ・フレデリクセン首相は、22日夜にコペンハーゲン上空にドローンが飛来した際に、そのことを明確にした。
一方、ロシア政府は関与を「断固として否定」し、在コペンハーゲンのロシア大使館も「仕組まれた挑発行為」だと非難している。
だが、フレデリクセン氏は、ロシアのリスクをはっきり自覚している。つい先週も、「(ロシアは)今後何年にもわたり、ヨーロッパとデンマークにとって脅威となるだろう」と述べた。
これまでのところ、ドローンの飛来による被害は出ていない。これは、ドローンが撃墜されずにデンマークを離れたためだ。
マイケル・ヒルドガード国防長官は、「上空で何かを撃墜すれば、何かが落下してくることになる」とした。
実際、ポーランド東部ウィリキでは、住宅の屋根が破壊された。NATOの戦闘機が発射したミサイルによる被害だと報じられている。
ユトランド警察は、安全が確保できる場合にはドローンの撃墜を試みる方針だとしている。デンマーク軍も、「具体的な脅威評価と、撃墜がもたらすであろう影響」次第で、軍事施設の上空で対応する用意があると明言している。
ただし、これまでのところは実行には至っていない。
専門家の反応
南デンマーク大学のドローンセンターに所属するケル・イェンセン氏は、デンマークのぜい弱性が露呈したことに当惑しているとしつつ、警察と軍の対応は適切だったと評価している。
「都市部や空港上空でドローンを撃墜すべきではない。落下時に燃料やバッテリーが火災を引き起こすリスクを考慮しなければならないので」と、イェンセン氏は述べた。
デンマークの王立国防大学のピーター・ヴィゴ・ヤコブセン氏は、「飛行させておくことより危険かどうかを判断するべきだ。ただし、この状況は持続可能なものではなく、対応策を考える必要がある」と述べた。
デンマークの慎重な対応は、9月10日にロシアのドローンが領空を侵犯した際のポーランドの対応とは対照的だ。
ポーランドのラデク・シコルスキ外相は今週、国連でロシア政府に警告を発した。「もしまたミサイルや航空機が、意図的か偶発的かを問わず、領空を侵犯した場合、撃墜されてNATO領内に残骸が落ちても文句を言いに来るな。そう警告しておく」。
デンマークや近隣諸国に不足しているのは、ドローンを撃墜するための手段だ。
政府は最近、「統合型多層防空システム」の構築と、敵の領土を攻撃可能な長距離精密兵器への投資計画を発表した。
しかしこれは、デンマークの現状の防衛体制にはほとんど役立っていない。
「工学的観点から言うと、飛行可能なドローンを製造する方が、ドローンの飛行を阻止するためのものを製造よりもずっと簡単だ」と、前出のイェンセン氏は指摘する。
デンマークは一部のNATO加盟国やウクライナとともに、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が提案した「ドローンの壁」構想について26日に協議する予定。これは欧州連合(EU)の東側境界の防衛を目的としている。
協議では、デンマーク上空で目撃された明るい光を放つ非武装ドローンではなく、ポーランド領空に到達したような武装ドローンについて話し合われる可能性が高い。
これは、早期警戒システムの構築が目的としたものだ。
今回、ユトランド上空で確認されたドローンが国内から発射されていたら、対応できていなかった可能性がある。
ロシアがドローンの飛来に関与していたとすれば、ハイブリッド戦争の観点からは、作戦は成功だったと言えるだろう。
空港が一時閉鎖され、デンマークの軍事施設のぜい弱性が露呈し、政府高官が国民の懸念を和らげるために緊急記者会見を開かざるを得なくなったのだから。
それでも、この出来事はデンマーク国民に新たな警鐘を鳴らすこととなり、警察は警戒レベルを引き上げた。デンマークは新たな現実に直面していると、国防相は述べている。












