英カンタベリー大主教に初の女性、マラーリー氏指名 約1年の空席経て

濃い色のジャケットに身を包み、紫のシャツに白い牧師の襟をつけたデイム・サラ・マラーリーが、両手を広げ、微笑んでいる。首には十字架をかけている。背景にはローマ風の大きな柱が見える

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アリーム・マクブール宗教編集長、ポール・グリッベン記者(BBCニュース)

英イングランド教会の最高指導者であるカンタベリー大主教に3日、デイム・サラ・マラーリー(63)が指名された。女性がこの役職に選ばれるのは初めて。

デイム・サラはイギリス政府の看護トップ、イングランド看護主任(CNO)を務めた経験がある。2006年に牧師となり、2018年にロンドン主教に任命された。ロンドン主教はイングランド教会ので3番目に高い職位で、女性として初の任命だった。

デイム・サラは3日、指名後初の声明で、2日にグレーター・マンチェスターのシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)で起こった襲撃事件を「恐ろしい暴力」だと非難。「憎悪と人種差別は私たちを引き裂くことはできない」と述べた。

イングランド教会では昨年11月、ジャスティン・ウェルビー前大主教が児童の保護に関する不祥事で辞任して以来、約1年間にわたって最高位が空席となっていた。

ウェルビー氏は、教会関係者(故人)による児童虐待に関する報告書で厳しく批判されて辞任した。報告書は、ジョン・スマイス弁護士(2018年に死去)による子供や若い男性への暴力行為について、ウェルビー氏は報告を受けた2013年の時点で警察に通報「できたし、すべきだった」と結論づけている。

その後、暫定的な措置としてスティーヴン・コトレル・ヨーク大主教がウェルビー氏の職務の大半を引き継いだ。コトレル大主教は、カンタベリー大主教の後任を選定する機関で投票権を持つ委員の一人でもある。一方で自分自身も、虐待事件への対応をめぐって辞任を求められている。

イングランド教会で女性が初めて牧師に叙階されたのは1994年。女性が初めて主教になったのは、その20年後の2014年だった。

白い布が敷かれた祭壇に、金色に見える杖が置いてある。祭壇の角には白い蝋燭が置かれ、火が灯っている。祭壇の前には白いシャツに黒いローブ姿の男性がひざまずき、手を組んで頭を下げて祈りを支えている。背後には紋章が埋め込まれた木製の家具が見える

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画像説明, 前任者のジャスティン・ウェルビー氏は今年初めに正式に退任し、象徴の杖を祭壇に置いた(2025年1月、ロンドン)

新しい大主教を選ぶ伝統的な手続きでは、候補者の名前がキア・スターマー首相に提出され、その後、チャールズ国王に伝えられる決まり。

スターマー首相は、デイム・サラの指名を歓迎し、「彼女の成功を心から願っている。共に働けることを楽しみにしている」と述べた。

形式上は、イングランド教会では君主が「信仰の擁護者」としてのトップだが、実際にはカンタベリー大主教が、同教会と世界各地の聖公会共同体における最高位であり、精神的指導者とされる。

バッキンガム宮殿によると、チャールズ国王は、デイム・サラの新たな役職は「イギリス国内および世界の聖公会共同体にとって極めて重要なものだ」と述べ、祝意を表した。

一方、聖公会の保守派グループ「GAFCON」はこの指名を批判し、「歓迎する者もいるだろうが、聖公会共同体の大多数は、聖書が男性のみの主教職を求めていると今なお信じている」と述べた。

法的には、デイム・サラは来年1月に予定される選出確認を経てカンタベリー大主教となる。叙任式はその後、国王への忠誠の礼を行った後に執り行われる。

動画説明, イギリスの看護トップから教会トップへ……初の女性カンタベリー大主教

3日にカンタベリー大聖堂で演説したデイム・サラは、「確実性と部族主義が求められる時代において、聖公会はそれよりも静かだが、より強い何かを提供している」と述べた。

また、「深い傷と不信の遺産を残した」児童保護の失敗に向き合うことを約束し、「教会内での役割に関係なく、私たちは皆、自らの行動に光が当てられることを受け入れなければならない」と述べた。

2日にマンチェスターのシナゴーグで発生した「恐ろしい暴力」については、「私たちは、地域社会の亀裂から立ち上る憎悪を目の当たりにしている」と指摘。「私たち教会は、あらゆる形の反ユダヤ主義に対して、ユダヤ人コミュニティーと共に立つ責任を負っている。どのような種類の憎悪や人種差別も、私たちを引き裂くことは許されない」と語った。

イギリスの看護トップから牧師へ

既婚者で2人の子供を持つデイム・サラは、英国民保健サービス(NHS)に35年以上勤務し、1999年に史上最年少でCNOとなった。

当時は教会でボランティア活動をしていたが、数年後に牧師になる決意をし、すぐに教会の虐待対応の改革に関与する任務を与えられた。

2012年にソールズベリー大聖堂の財務参事に就任した後、2015年にはエクセター教区のクレディトン主教となった。

ロンドン主教に叙任後は、NHSの管理職としての経験を活かし、教区の近代化を推進する人物と見なされていた。

BBCの取材で、カンタベリー大主教という役職に何をもたらすのかと質問されたデイム・サラは、「私には、複雑な組織を率いる看護師としての経験、政府の主任看護官としての経験、そして非常に多様性のあるロンドン教区での経験をがある。なので、この役職についてある程度の準備はできているが、一人では成し遂げられないと分かっている。他の同僚たちと共に取り組む必要がある」と述べた。

また、「初の女性(大主教)になることは歴史的だ。私はよく学校を訪問するが、特に若い女性たちは身を乗り出すようにして聞き入ります。彼女たちはロンドン主教やカンタベリー大主教になりたいとは思っていないが、それでも自分の夢をかなえる可能性があると考えるきっかけにはなる」と語った。

「片手に新聞、もう片手に聖書」

デイム・サラが直面する課題の中で最も緊急性が高いのは、虐待への対応においてより良い道筋を描き、より思いやりを持って被害者に接することだ。

教会への出席者数は減少傾向にあるが、ロンドンはある程度、その傾向に逆らっている。

デイム・サラが最も率直に意見を述べてきた分野の一つが、終末期にある成人が支援を得て自ら死を選ぶ権利だ。デイム・サラは前任者のウェルビー氏と同様、この制度に強硬に反対している。

下院で関連法案が可決された際、デイム・サラは「実行不可能で、安全性に欠け、社会の中で最も弱い立場にある人々に危険をもたらす」と述べた。

また、ロンドン主教時代には教会が同性婚を祝福するかを決定する機関の議長を務めていた。

2023年に牧師が同性カップルを祝福することをついに認めた際には、「教会にとって希望の瞬間だ」と述べていた。

2002~2012年にカンタベリー大主教を務めたローワン・ウィリアムズ氏は、この職位では「片手に新聞、もう片手に聖書を持つことが求められる」と説明した。

ウィリアムズ氏はBBCに対し、「すべての事柄に意見を持つことが期待されるのは、かなり重い負担だ」と語った。