ゼレンスキー氏、EUが「脅迫」と非難 ロシア産石油を運ぶパイプラインめぐり

草地に高さ3メートルほどの赤い柱が並べられ、その上に白いパイプが通っている。背後には黄色い機材や白い設備が見える。柱のそばに2人の人物が立っている

画像提供, Bloomberg via Getty Images

画像説明, ウクライナ西部ストリイ近郊にあるドルジバ・パイプライン(資料写真、2009年撮影)
この記事は約 7 分で読めます

ジェイムズ・ランデイル外交担当編集委員

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は15日、ヨーロッパの同盟国が、ロシア産石油をハンガリーとスロヴァキアへ輸送するパイプラインを再開するよう、ウクライナ政府を「脅迫」しようとしていると非難した。

ゼレンスキー大統領は、ロシア産原油をウクライナを経由して欧州連合(EU)供給するルートを回復させることは、ロシア政府への経済制裁を解除するのと同じだと述べた。

ウクライナは、ソ連時代の石油パイプライン「ドルジバ」が、今年1月のロシアによる空爆で損傷したままで、まだ修復されていないと説明している。

ハンガリーはロシア産エネルギーに依存している。また、同パイプラインが再開されるまで、EUによる追加の対ロ制裁を阻止し、ウクライナ向けの重要な900億ユーロ(約16兆円)の融資も阻んでいる。

ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相は、4月の総選挙に向けて、反ウクライナ的メッセージを主要な選挙メッセージにしている。オルバン氏率いる「フィデス・ハンガリー市民連盟」は、世論調査で後れを取った状態で選挙戦に入っている。

EUはゼレンスキー氏に対して、パイプラインの速やかな修復を促すとともに、損傷箇所を確認するための査察受け入れを求めている。一部のEU当局者は、ゼレンスキー氏の抵抗が、オルバン氏の再選を後押しする可能性を懸念している。

しかし、キーウでBBCを含む記者団に話したゼレンスキー氏は、自分は原則として、EUが他地域でロシア産石油の販売を制裁している時に、その石油をウクライナを通過させることに反対しているだけだと述べた。

「ロシア産石油を売るのか、売らないのか、そのどちらかだ。なぜなら、EUが私にドルジバ復旧を迫っているからだ」と、ゼレンスキー氏は話した。

「このことは、ロシア制裁の解除とどう違うのか。なぜ一方ではアメリカに対して制裁解除に反対すると言いつつ、他方ではウクライナにドルジバ経由の石油輸送再開を強制するのか。しかもそれは実質的に、反EU政策への資金提供という政治的代償を伴うのに」

ゼレンスキー氏の発言は、アメリカが、米・イスラエルとイランの戦争によって生じたエネルギー供給への圧力を緩和するため、他国によるロシア産石油購入を妨げていた制裁を緩和したことを受けたもの。トランプ政権のこの措置を、欧州首脳たちは批判している。

ゼレンスキー氏は「(EUが)ロシア産石油の供給回復を決めたのなら、私は反対だと(EUに)知ってもらいたい。そして、私が何かを妨害しているなどという非難は不要だ。私は妨害していない」と述べた。

「私は率直に言っている。私は反対だ。だが、ウクライナが武器を受け取れなくなるという条件を突き付けられるのなら、申し訳ないが、私はこの問題では無力だ。私はヨーロッパの友人たちに、これは脅迫と呼ぶものだと伝えた」

ゼレンスキー氏は、EUからの900億ユーロの融資は、加盟全27カ国が採択したことで、実行されなくてはならないと付け加えた。

ドルジバ・パイプラインの位置を示す東欧の地図。ロシアからウクライナ西部を通ってスロヴァキア、ハンガリーへと至る

ゼレンスキー氏は、アメリカの対ロ制裁緩和も批判し、「私たちはこうした政策を支持しない。対ロ制裁を解除しても世界の助けにはならず、ロシアの助けにしかならないと私は思う」と述べた。

「私たちは制裁緩和を決して支持しない。そして全体として、中東でのこの戦争は、今ここにいる私たちの助けにはならない。控えめに言っても、我々はイランの政権について幻想は持っていないし、全く支持していない」とも大統領は話した。

スコット・ベッセント米財務長官によると、アメリカがロシア産石油に対する制裁を、すでに海上にある分について30日間猶予した措置は、4月11日まで続く見通し。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の経済特使を務めるキリル・ドミトリエフ氏は、この制裁解除はロシアが世界のエネルギー市場の安定に不可欠だとを示していると述べ、いっそう緩和が「不可避」だと主張した。

迎撃ドローンは「ウクライナの石油」

ゼレンスキー氏は中東で拡大する紛争について語るなかで、自国の迎撃用ドローンを「ウクライナにとっての石油」だと呼んだ。また、アメリカとの500億ドルの共同生産協定に応じる用意があると述べた。

ゼレンスキー氏は、アメリカが「私たちに何度か連絡してきた」と言い、トランプ政権がこの協定に「非常に関心」を寄せていると主張した。

米・イスラエルとイランの戦争が始まって以来、多くの国々、特に湾岸地域の国々が、安価なイラン製ドローンに対する防衛でウクライナの支援を求めている。

ウクライナは、安価な迎撃用ドローンの製造において世界的な先進国。同時に、ほぼ毎夜続くロシアの攻撃に対し、こうしたドローンを最適に運用する方法も、学び続けてきた。

ゼレンスキー氏は記者団に、「これは私たちにとっての石油のようなものだ」、「現代的なドローン生産と、それに関するウクライナの知見こそが、今日のウクライナの石油だ」と語った。

そのうえでゼレンスキー氏は、どのような協定でも、ウクライナは資金と技術の両方を求めると強調。さらに、ウクライナは昨年、アメリカにのドローン共同生産協定を提案したが、合意には至らなかったと述べた。

「私たちは当時、準備ができていた。今も完全に準備ができている。そうした経験の共有を歓迎する。だからこそ提案した」と、ゼレンスキー氏は話した。

動画説明, 中東の戦争でウクライナの迎撃ドローンの需要高まる

ゼレンスキー氏は、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃以降、アメリカがウクライナに何度か連絡してきたと言い、「要請がいくつかあった。特定の国への支援か、あるいはアメリカ側への支援だ。私たちの軍はさまざまなレベルで連絡を取り合っている。私たちは軍のあらゆる機関から、文書や電話、要請を受け取った」と話した。

一方で、中東での戦争がウクライナにもたらす危険についても警告し、「アメリカを失いたくない。私たちはこれを率直に語っている」と述べた。

「アメリカが現在、中東に重点を置いているのは間違いない(中略)私たちにとって不可欠な特定の兵器の供給が遅れる可能性や、その供給量が減る可能性がある」