イラン外相、米国との交渉否定 トランプ氏は日本などに海峡護衛の艦船派遣を呼びかけ

がれきの前を、マスクをした女性がスマートホンを見ながら歩いている。手には白いプラスチックバッグを持っている

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画像説明, 破壊された建物の前を歩く女性(15日、イラン)
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米・イスラエルによるイラン攻撃が続く中、ドナルド・トランプ米大統領がイランは取引に応じる用意があると発言し、イランの外相は15日、これを否定した。石油輸送の要衝ホルムズ海峡をイランが封鎖し、石油供給が打撃を受けていることをめぐっては、トランプ氏は海峡の通航を確保するためとして、日本、中国、フランス、韓国、イギリスに艦船派遣を呼びかけ、15日には米政権が「7カ国ほど」と海峡警護について話し合っていると述べた。

イランのアッバス・アラグチ外相は、米CBSニュースに対して、イランが合意を望んでいると述べたトランプ氏の発言を否定した。CBSはBBCのアメリカでの提携局。

アラグチ外相は、イラン政府が「停戦を求めたことは一度もなく、交渉を求めたことさえない」と述べた。

これに先立ちトランプ氏は、イランが合意を求めているものの「条件がまだ不十分なので」自分は同意する気はないと発言していた。

アラグチ外相は、「アメリカが我々を攻撃することにした時、こちらはすでに彼らと話をしていた。なので我々がアメリカと話す理由など、まったく見当たらない」と述べ、「これはトランプ大統領とアメリカ合衆国が選んで始めた戦争だ。私たちは自衛を続けていく」と強調した。

トランプ氏はこの後、大統領専用機内で記者団に対し、イランは交渉と合意を強く望んでいるとあらためて強調した。外交協議について「(イランとは)話をしているが、向こうはまだ用意が整っていないと思う。しかし、かなり近づいている」と述べた。

イランに対する勝利宣言をする用意があるかという質問には、「そうする理由はない」と答えた。アメリカはイランに相当の損害を加えているため、「(イランを)いま離れて放置すれば、再建には10年かかる」と述べた。

トランプ氏が右手で記者団に向けて指差しながら、口を開いている

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画像説明, 大統領専用機エアフォース・ワンで記者団の質問を受けるトランプ氏

ホルムズ海峡の通航警護は

トランプ氏は専用機内で、ホルムズ海峡を通航する船舶護衛のため、連合体を創設する可能性について記者団に聞かれると、政権がホルムズ海峡の「警備」について「7カ国ほど」と協議していると述べた。

トランプ氏は、中国に「参加したいか?」と尋ねたのだと話し、中国の決定を見守ると述べた。また、中国は石油を得るため、ホルムズ海峡経由の輸送に大きく依存しているのだと繰り返した。

トランプ氏は、ほかにどの国に打診しているのか国名を挙げなかったものの、北大西洋条約機構(NATO)や「自分たちの領土を守る必要がある」と考える国々がいると述べ、その「領土」とは、「彼らがエネルギーを得ている場所」だと定義した。

トランプ氏は、協力しない国については「覚えておく」と各国首脳に伝えたと述べた。

また、いくつかの国は「我々の助けになる」機雷掃海艇や「特定の種類の船」を保有しているとも話した。

これに先立ちトランプ氏は英紙フィナンシャル・タイムズに、ホルムズ海峡から利益を得ている国々がその再開に協力するのは「当然だ」と述べ、ヨーロッパと中国は湾岸地域からの石油に大きく依存していると主張していた。

トランプ氏、他国から反応がなければ「NATOの将来にとって非常に悪いことになり得る」と警告し、アメリカはヨーロッパの同盟国に「とても優しくしてきた」と述べた。

大統領は続けて「我々はウクライナを助ける必要はなかった。ウクライナは我々から何千マイルも離れている。(中略)それでも我々は助けた。今度は(ヨーロッパが)我々を助けるかどうかを見ることになる。私はずっと、我々は彼らのためにいるが、彼らは我々のためにはいないと言ってきた。そして、彼らがいてくれるかどうか、確信できない」とも話した。

トランプ氏は14日には、中国、フランス、日本、韓国、イギリスに対し、ホルムズ海峡を開くための「共同作業」への参加を呼びかけていた。

ホルムズ海峡は通常時、世界の石油供給の約20%が通過する。

トランプ氏は重ねて同紙に、北京で予定されている中国の習近平国家主席との首脳会談についても触れ、「石油の90%をこの海峡から受け取っている」中国が会談に先立ちホルムズ海峡の封鎖解除に協力すると見込んでいると話した。

北京での会談は3月末に予定されているが、トランプ氏は理想的にはそれ以前に中国の行動を見たいとし、2週間は「長い時間だ」と述べた。訪問延期の可能性にも触れたが、それ以上は詳しく話さなかった。

米英首脳が電話会談

イギリス首相官邸の報道官は15日、キア・スターマー英首相とトランプ氏が「中東で続く情勢や、世界的な輸送を混乱させて世界中でコスト上昇を招いている状況を終わらせるため、ホルムズ海峡を再開することの重要性について議論した」と明らかにした。

「首相はまた、紛争中に命を落とした米軍関係者に哀悼の意を表した。両者は今後も連絡を取り合うことで一致した」という

官邸報道官によると、スターマー首相はカナダのマーク・カーニー首相とも別途電話で協議し、封鎖を終わらせることの重要性で一致したという。

会場に浮かぶ複数のタンカー

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画像説明, ペルシャ湾内のタンカー。アラブ首長国連邦ラス・アル・ハイマから撮影(11日)

国際エネルギー機関(IEA)は15日、石油が「間もなく」世界市場へ供給され始めると述べた。IEAは11日、石油備蓄の協調放出に加盟32カ国が合意したと発表していた。

IEAによると、アジア・オセアニア地域では「即時」に、アメリカとヨーロッパでは3月末から放出分が利用可能になるという。

今回の放出量は、ロシアが2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始した後、IEA加盟国が放出した過去最大量の2倍以上となる。

原油価格は、中東で戦争が始まった2週間前と比べて約25%上昇している。

イランと独自に交渉

赤茶色のボンベを足元に置いた人が屋外に行列している。

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画像説明, 空のLPGボンベと共にガス供給事務所の前に行列する人たち(13日、インド・ニューデリー)

インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相は、イランとの直接協議を通じてインドの船舶がホルムズ海峡を通過できるようになったと英紙フィナンシャル・タイムズに話した。

ジャイシャンカル外相は、2国間の交渉の結果、インド船籍のガスタンカー2隻が14日に海域を通過できたと明らかにした。

「私は現在、彼らと話をしている。その結果がいくつか出ている」と外相は述べ、イラン当局との協議は続いていると付け加えた。

インドは家庭用の液化石油ガス(LPG)の約60%を輸入しており、そのうち約90%がサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など湾岸産油国から供給されている。その多くがホルムズ海峡を経由して輸送される。

インドでは3億3000万超の世帯が、調理用にLPGボンベを必要としている。ソーシャルメディアには複数のインドの都市で、調理用ガス販売業者の前に長い行列ができている動画が出回るなど、供給不安が高まっている。一部のレストランは、ガス不足のため一時的に閉店している。

イランのアラグチ外相はCBSに対して、ホルムズ海峡での船舶の安全な航行について「話し合いたい国々」にイランは「応じる」と述べた。アラグチ氏は具体的な国名は挙げず、安全な通航を望む「複数の国」からイランに接触があったと述べた。

イランの核施設については、すべてがれきの下だとして、「当面、それを回復する計画はない」と話した。

アラグチ外相はまた、イランとアメリカの核合意協議がまだ続いていた当時、イランは「濃縮物質を低濃度に希釈する」提案をしていたと発言。「それは大きな譲歩だった」ものの、「今は(交渉の)テーブルの上に何もない。すべては今後次第だ」と話した。

攻撃続く

イスラエル軍のエフィー・デフリン報道官はテレビ放送された会見で、イラン国内で攻撃すべき標的はまだ「何千」も残っていると述べた。

ロイター通信によると、デフリン氏は「私たちは毎日、新たな標的を特定している」と話した。さらに、イスラエル軍は「脅威を除去し、作戦の目的を達成するまで、イランおよびヒズボラに対する攻撃を続ける」と述べたという。

イタリア軍によると、クウェートの米伊陸軍基地がドローン攻撃を受けた。

イタリア国防省はソーシャルメディア「X」に、ルチアーノ・ポルトラーノ国防参謀総長の声明を投稿。15日に「クウェートのアリ・アル・サレム基地がドローン攻撃の標的となり、イタリア空軍タスクフォース(TFA)の遠隔操作航空機を収容したシェルターに命中し、これが破壊された」とした。また、要員は全員無事だと明らかにした。

レバノン保健省は、中東での今回の紛争開始以来、イスラエルの攻撃で死亡した人数が850人に達したと発表した。

イランが支援するイスラム教シーア派組織ヒズボラがイスラエルにロケット弾を発射したことを受け、イスラエルは3月2日からレバノンを攻撃している。

UAEは15日、イランから発射された弾道ミサイル4発とドローン6機を追加で迎撃したと発表。紛争開始以降に迎撃したのは、弾道ミサイル298発、巡航ミサイル15発、ドローン1606機に上ると説明した。また、これまでの攻撃で6人が死亡し、142人が「軽傷から中程度の負傷」を負ったとした。

バーレーン当局は、イラン革命防衛隊(IRGC)に「正確かつ機密性の高い情報」を収集し渡した疑いで、5人を逮捕したと発表した。

バーレーン内務省によると、逮捕理由には、バーレーンに対するテロ計画を実行するための「テロ要員の勧誘」も含まれていた。

同省は、国外に逃亡している6人目の人物がいるとも述べている。

イラン国内では

イラン国内からBBCペルシャ語に寄せられるメッセージや動画は、国内で弾圧が強まっている状況を示している。

市民によると、各地で検問所は増加している。こうした検問所が空から攻撃されたという報告もあり、一部は橋の下や道路のトンネル内に移動しているという。

多くの検問所には民兵組織バスィージが配置されているという。市民の携帯電話を押収し、内容を確認しているとの報告もある。

米・イスラエルに攻撃された地域の写真や動画を外国メディアに送ったり、ソーシャルメディアに投稿したりした者を訴追すると司法当局が発表して以来、そうした画像を外部に共有する人はほとんどいなくなった。

大多数の市民は過去16日間、国内の一部サイトを除いてインターネットにアクセスできていない。

このため、インスタグラムで利用客とつながっていた何十万もの小規模・零細事業者が深刻な影響を受けている。その多くは、自宅でビジネスを経営していた女性たちだと、BBCペルシャ語のベフラン・タジディン記者は説明する。

BBCペルシャ語のゴンチェ・ハビビアザド記者によると、エネルギー施設の再建には数年かかる可能性があり、攻撃がこの調子で続けばイランは「荒廃」しかねないと、複数のイラン市民が心配している。

男性の一人は、アメリカが13日に90以上の軍事目標を攻撃したというカーグ島について、「とても小さな島で、優しい人々が暮らしている」が、あまり発展してこなかったと言い、「あの島が無視されてきたのは、イスラム共和国の責任だ」と述べた。

テヘランに住む20代の男性は、今回の攻撃には強く反対しており、「この調子で攻撃が続けば、イランは荒廃してしまう」とBBCに話した。

カラジに住む20代の男性は、「エネルギー施設は攻撃されないでほしい。再建に何年かかるのかわからない。軍事施設については正直どうでもいい」と話した。

BBCペルシャ語は、BBCニュースのペルシャ語サービス。イラン当局によって遮断され、日常的に妨害されているものの、世界中で2400万人が利用している。利用者の大半はイラン国内にいる。