アメリカのロシア産石油制裁の緩和、各国が批判

青空の下、タンカー2隻が洋上で並んでいる

画像提供, Reuters

画像説明, ロシア・ナホトカ港沖を航行するタンカー(資料写真)
この記事は約 6 分で読めます

ピーター・ホスキンズ、アーチー・ミッチェル 経済記者

アメリカ政府は12日、イスラエルと共に開始したイラン攻撃によってエネルギー供給が打撃を受ける中、海上輸送中のロシア産原油や石油製品の購入を禁止してきた制裁を緩和した。欧州やカナダの首脳たちは、これがロシアのウラジーミル・プーチン政権の利益につながるものだと警告している。

スコット・ベッセント米財務長官は、この「短期的措置」は「世界のエネルギー市場の安定」促進を目的としていると述べた。

しかし、制裁緩和の発表後も、原油価格は13日に再び1バレル当たり100ドル付近で推移し、各国の株式市場は下落した。

湾岸地域では、船舶やエネルギー関連インフラへの攻撃に加え、ホルムズ海峡が事実上閉鎖された。このため世界のエネルギー市場は動揺し、前例のない供給不足が生じている。

ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は13日、現時点で制裁を緩和するのは誤りだと述べた。また、ドイツのウクライナ支援はイランでの戦争によって「妨げられたり、ほかに気を取られたりしない」と強調した。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領も、ホルムズ海峡が閉鎖されているからといって、ロシアへの制裁解除を「まったく」正当化しないと批判。カナダのマーク・カーニー首相は、ロシアとその影の艦隊への制裁を維持すべきだと主張した。

イギリスのイヴェット・クーパー外相はサウジアラビア訪問中、ロシアとイランが「世界経済を乗っ取ろうとしている」と非難し、両国の関係性を指摘した。

ただし、ロシア産石油制裁の緩和というアメリカの決定についての批判は避け、「特定の、限定的な問題だ」と述べた。

通常は世界の石油の約2割が、イランとオマーンの間にある狭いホルムズ海峡を通過する。

それが2月末以来、戦闘の拡大によりタンカーはおよそ2週間足止めされ、産油国は減産を余儀なくされている。

このため石油価格は上昇し、アメリカを含む世界各地に影響が出ている。アメリカでは、イラン攻撃開始の前から、経済の状態についてドナルド・トランプ米大統領は非難されていた。

ペルシャ湾とホルムズ海峡では、タンカーや貨物船などへの攻撃が続いている。さらにイラン政府は12日、新しい最高指導者モジタバ・ハメネイ師の声明として、ホルムズ海峡封鎖を続けると表明した。

これを受けてピート・ヘグセス米国防長官は13日、アメリカはホルムズ海峡の安全確保に取り組んでいると述べた。

国際エネルギー機関(IEA)は11日、加盟32カ国が過去最大となる4億バレルの石油備蓄を協調放出合意したと発表した。4億バレルのうち、アメリカの放出量は1億7200万バレルに上る。しかし、それでも原油価格は下がらなかった。

トランプ大統領ら米政府関係者は、ホルムズ海峡を航行する船舶に対し米海軍の護衛を「できるだけ早く」提供すると述べたが、時期の見通しは示していない。

今回の制裁緩和は、ロシアが現在輸送中だとする約1億バレルのロシア産石油に影響するとみられている。

ベッセント長官は、一時的な制裁免除は4月11日まで続くと述べた。

ホルムズ海峡の位置を示す中東の地図

かねて中東での紛争はロシアの利益につながり、ウクライナ戦争終結に向けた国際的な取り組みが後退するのではないかと指摘されていたが、アメリカによる今回の制裁緩和で、その懸念が再燃した。

AFP通信によると、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は13日、パリで記者会見した際、アメリカの決定はロシアに「約100億ドルの軍資金」を与えることになるかもしれないと指摘。「平和の助けにはまったくならない」と述べた。

加えて多くの専門家は、今回の決定が原油価格の上昇を緩和する可能性は低いと見ている。

英シンクタンク「エネルギー・気候インテリジェンス・ユニット(ECIU)」の交通部門責任者コリン・ウォーカー氏は、「最近発表された4億バレルの備蓄放出でさえ、原油価格をほとんど下げることはできなかった。原油はまだ、1バレル約100ドルの高い水準にある」と述べた。

動画説明, ホルムズ海峡の通航量をタイムラプス映像で、戦闘激化で急減

イギリスのマイケル・シャンクス・エネルギー相は、イギリスはアメリカに追随してロシア産石油制裁を緩和するようなことはしないと述べた。

シャンクス氏はBBCラジオの番組で「クレムリン(ロシア大統領府)にいるプーチンが、これを自国の戦争マシーンへの投資機会だとみなす、そのような事態は絶対にあってはならない」と強調した。

一方、プーチン大統領の経済特使キリル・ドミトリエフ氏は、アメリカが「ロシア産石油なしには世界のエネルギー市場は安定を維持できないという、言うまでもない明白なことを、認めたに等しい」と評価した。

ドミトリエフ特使はさらに、「エネルギー危機が深刻化する中で、ロシア産エネルギー源への制限緩和は避けがたいという見通しが強くなっている」と付け加えた。