トランプ氏のイギリス訪問、スターマー英首相にとって貴重な機会 BBC政治編集長

スターマー英首相とトランプ米大統領が明るい室内で、白い花の置かれた小さいテーブルを挟んで笑顔で握手している。

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画像説明, トランプ氏の非公式訪問で会談した米英首脳(28日、英スコットランド・ターンベリー)

クリス・メイソンBBC政治編集長(英スコットランド・アバディーンシャー)

アメリカ大統領とイギリス首相は28日、アバディーン北部にあるドナルド・トランプ氏の新しいゴルフ場の上空を2周旋回した後、ようやく降り立った。数日間にわたる外交は、どこか滑稽な不条理に彩られていた。

英首相官邸は、トランプ流の国際交渉術を受け入れている。

大統領がスコットランドに新しく開くゴルフ場の上空をヘリコプターで何周か飛びまわることが、大統領との私的な夕食会へと向かうために、必要な「儀式」の一部ならば、それもまたそういうものなのだ。

「私的」だと言われたトランプ氏の今回の訪英は、実際には極めて公然としていた。

当然ではあった。それが大統領のやり方だからだ。

トランプ氏の私的な関心事が、公職の場でも積極的に話題になる。たとえば大統領がアバディーンシャーに向かう前に訪れていた、スコットランド・アイルシャーにあるターンベリー・ゴルフ場では、どういう合板が使われているか――なども、話題になった。

今回の訪英は、トランプ氏にとって再選後初の訪問だ。さらに、9月に予定される前例のない2度目の国賓訪問を目前に控えてのものだ。

ターンベリーでの会談は、大統領が首相の妻ヴィクトリア氏を熱烈に称賛する光景で始まった。彼女が隣に立つ中、近くでバグパイプが鳴り響き、会話はほとんどかき消された。

両首脳はその後、30分以上にわたり一対一で会談した。そして、トランプ流そのものの気ままで即興的な記者会見が、1時間以上にわたり行われた。

会見の話題はというと、風力タービン、ドイツ、言論の自由、スコットランド独立、中国、国王、金利、製薬業界――など多岐にわたった。

動画説明, スターマー英首相、トランプ氏を歓待 ゴルフ場視察や報道陣との長時間質疑にも同席

キア・スターマー英首相にとっては、報道陣のカメラのあるなしを問わず、トランプ氏と顔を合わせられる貴重な時間だった。大統領専用機エアフォースワンに同乗する機会さえあった。両者の関係はあり得ないほど意外だが、それでも堅固で、今回の訪問はそれにいっそう磨きをかけるチャンスだった。

ただし、スターマー首相にとっては、危険もはっきりしている。記者団と気楽に、一見いつまでも雑談できそうな自由気ままな大統領と、一緒に同乗し続けることのリスクは明白だ。

スターマー氏は慎重に言葉を選びながら、大統領から厳しく非難されたロンドン市長を擁護し、自身の移民政策やガザ情勢への見解を説明した。

1時間以上に及んだ記者とのやりとりの前にも、大統領の気ままなおしゃべりは首相官邸の意表を突いた。首相夫人が完璧なポーカーフェイスをより完成させていく横で、大統領は果てしなく質疑応答を続けたのだ。

建物の入り口でトランプ氏が両手でジェスチャー氏、スターマー夫人が笑顔で隣に立っている

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画像説明, ヴィクトリア・スターマー首相夫人とトランプ氏

イギリスにとっては常に、「この関係がイギリスにもたらすものは何か」が鍵となる。

首相官邸は、今回のような形でトランプ大統領に首相が接近できるのは、極めて貴重なことだと見なしている。

大統領がガザ情勢について語った内容についても、イギリス政府は歓迎している。トランプ氏がガザ情勢について厳しい見解を示すようになったため、イギリス、フランス、ドイツがここ数日重ねてきた議論に、トランプ政権が歩調を合わせる可能性もあると、政府は期待している。

さて、どうなることやら。

29日には午後2時に、夏としては珍しい閣議が開かれる。閣僚の一部はダウニング街の官邸に集まり、他の閣僚はリモートで参加する予定だ。

議題の中心はガザ情勢だ。、中東から届く数々の悲惨な映像を前に、国際社会として解決の糸口を見出せるかが焦点となる。