タイに2年で3人目の新首相 野党「タイ名誉党」のアヌティン氏

ダークスーツ姿の男性が顔の前で両手を合わせ、笑顔を浮かべている

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画像説明, 野党「タイ名誉党」のアヌティン氏が新首相に選ばれた

タイ議会下院は5日、実業家アヌティン・チャーンウィラクン氏(58)を新しい首相に選出した。ペートンタン・シナワット前首相の解任によるもので、アヌティン氏は過去2年間で3人目のタイ首相となる。

タイ政治で強い影響力を持つシナワット一族のペートンタン前首相は8月末、カンボジアとの国境問題の対応をめぐる倫理違反を問われ、憲法裁判所によって解任を命令された

アヌティン氏率いる「タイ名誉党」は、シナワット一族の「タイ貢献党」が主導する連立から離脱し、国会で首相指名に必要な支持を確保した。

ただし、タイでは近年、複数の政権が裁判所の介入や軍事クーデターによって退陣に追い込まれているため、不安定な情勢は続く。

シナワット一族は、ペートンタン氏の父タクシン氏が2001年に首相に就任して以来、タイ政治で圧倒的な影響力を維持してきた。その一族にとって、アヌティン氏の首相選出は大きな打撃となった。

4日夜には、タクシン元首相を乗せたプライベートジェットが国外へ出発した。タクシン氏は5日朝になると、治療のためドバイに向かったとソーシャルメディアに投稿。元首相は、汚職罪で有罪となったものの刑期を刑務所でなく病院で過ごしていた問題についての判決を、今月9日に言い渡される予定となっている。元首相はこれについて、9月の公判には出廷すると書いた。

アヌティン新首相は、経験豊富なベテラン政治家で、前から首相の座を目指していた。ただし、新首相が率いるタイ名誉党は議会の定数500議席のうち69議席しか持たず、政権運営には2大政党のいずれかの支持が不可欠となる

プームジャイタイ党は、イデオロギーにこだわらない取引型の政党として知られており、過去には保守的な軍部系政党や、最近ではタイ貢献党とも連携していた。今回の連立離脱は、ペートンタン氏とカンボジアのフン・セン上院議長との電話会談の音声が流出し、世論の反発を招いたことが表向きの理由とされているが、他にも意見の相違があったとされる。

残された選択肢は、国会最大勢力である進歩的な人民党のみだったが、アヌティン氏は強硬な王党派なのに対し、人民党幹部の一部は王室への不敬罪で有罪となっているだけに、両党の連携はあり得ないとされていた。

しかし、前首相の解任を受け、元首相でかつてクーデターを主導したプラユット・チャンオチャ氏が再び首相に返り咲く可能性も浮上していた。人民党にとってこれは、アヌティン氏との連携よりもさらに受け入れがたい事態だったため、同党はアヌティン氏の首相就任を支持する条件として、4か月以内の総選挙実施と、軍主導で制定された現行憲法の改正手続き開始を求めた。

人民党は、新政権の存続を支援するのみで、法案には協力しないとしている。

そのため、アヌティン新首相はさまざまな制約下で首相に就任し、4カ月という短期間で成果を出す必要に迫られている。

アヌティン氏は裕福な政治一族の出身で、父親は複数の閣僚ポストを歴任した。家業の建設会社は、今回の首相選出が行われた新国会議事堂の建設も手がけた。

アヌティン氏は、2022年に保健相としてタイの大麻規制を緩和し、医療目的で大麻の販売や使用ができるようにしたことで知られる。熱心なパイロットでもあり、自家用機を3機所有している。