タイ憲法裁、首相解任を命令 流出したカンボジア前首相との電話音声を理由に

笑顔で演台に向かうスーツ姿のペートンタン首相。その左右と後ろに政府関係者が並んでいる

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画像説明, 首相解任の裁判所命令後、官邸で記者会見に臨んだペートンタン首相(29日、バンコク)

グレアム・ベイカー、BBCニュース

タイの憲法裁判所は29日、ペートンタン・シナワット首相(39)の解任を命令した。ペートンタン首相をめぐっては、隣国カンボジアのフン・セン前首相との電話音声が6月に流出。この中で、首相がフン・セン氏を「おじさん」と呼び、タイ軍を批判する発言をしていたことが倫理違反に当たると判断された。タイとカンボジアとの国境が緊迫する最中の事態だった。

フン・セン氏自身が公開した電話音声を受け、首相に批判的な勢力は、同氏が国軍を損なったとした。今回の判決により、ペートンタン氏は2008年以降、憲法裁判所によって解任された5人目の首相となった。

憲法裁判所の判事9人のうち6人が解任に賛成し、同氏の行為が首相として求められる倫理基準に違反していたと判断した。

裁判所は、ペートンタン氏の個人的関係が「カンボジアと一致しているように見える」と判断。電話は「暴力を使わずに平和を回復するための、個人的交渉だった」とする首相側の主張を退けた。

判決文は、彼女の行為が「国益よりもカンボジアに利益をもたらすのではないかという国民の疑念を招いた」と指摘した。

ペートンタン氏は判決を受け入れるとしながらも、自分は命を救おうとしていたと主張した。

ペートンタン氏とフン・セン氏が電話で話をした当時、タイとカンボジアの国境では緊張が高まっていた。数週間後には5日間にわたる武力衝突が発生し、数十人が死亡、数十万人が避難した。フン・セン氏は、ペートンタン氏の父タクシン・シナワット元首相の親友だった。

ペートンタン氏は2021年、タクシン派のタイ貢献党に入党。タクシン元首相が首相に指名した実業家スレッタ・タヴィシン氏が、収賄で有罪歴のある人物を閣僚に任命したことを理由に憲法裁判所により解任された後、政治経験の浅いペートンタン氏が、昨年8月にタイ史上最年少の首相となった

ペートンタン氏の解任から数時間後、かつて連立していた保守系のタイ名誉党は、他党からの支持を得て、アヌティン・チャーンウィラクン党首の下で新政権を樹立すると発表した。同党は、カンボジアとの紛争問題の解決と、今後4カ月以内の議会解散を優先課題に掲げている。

シナワット一族はこれまで複数の政権を率いてきたが、ペートンタン氏の首相解任はその政治的影響力にとって大きな打撃となった。

ペートンタン氏は、2006年に軍事クーデターで失脚した父タクシン氏、2014年に憲法裁判所に解任された叔母インラック・シナワット氏に続き、首相職を途中で退いたシナワット一族の3人目となった。

タクシン元首相は政界を引退した後も、強大な影響力を持ち続けた。しかし今回の件で、シナワットの名前が今後どれだけ力を持ち続けるかは不透明となった。