トランプ氏、NATO軍がアフガニスタンで最前線を避けたと発言 英首相は「侮辱的」と反発

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ドナルド・トランプ米大統領が北大西洋条約機構(NATO)について、アフガニスタンでの戦争で「部隊をいくらか」派遣したが「前線から少し離れたところにとどまっていた」などと発言し、NATO加盟国や各国の退役軍人、その家族らが激しい怒りの声を上げている。キア・スターマー英首相は23日、トランプ氏の発言は「侮辱的だ」と反発。NATO軍と英軍のアフガニスタンでの役割を軽視するものだと批判した。
トランプ氏は22日の米FOXニュースのインタビューで、NATOに関して、「私たちが(NATOを)必要とすることがあったとして」、アメリカを助けてくれるのか「確信していない」と話した。
また、「私たちが(NATOを)必要としたことは一度もない」、「何かを求めたことは全くない」と発言。
「(NATOは)アフガニスタンに部隊をいくらか送ったと言うだろう」、「確かに送ったが、少し下がったところにとどまっていた。前線から少し離れたところにだ」と述べた。
これに対し、スターマー氏は23日、「トランプ大統領の発言は侮辱的であり、率直に言ってひどいものだ。死傷者の家族や、実際、全国民を大きく傷つけたのは驚きではない」と反発した。
また、「(兵士らの)勇気、勇敢さ、そして自分たちの国のために払った犠牲を私は決して忘れない」と強調。「負傷した人もたくさんいた。人生を変えるほどのけがを負った人もいた」と述べた。
スターマー氏はさらに、「あのような失言」をしたなら、自分だったら「間違いなく謝罪する」とした。
トランプ氏は大統領2期目に入ってからNATO批判を繰り返しており、他の加盟国を防衛支出が不十分だと非難してきた。
ここ数週間は、NATO加盟国デンマークの自治領グリーンランドを領有したい意向をたびたび表明。軍事行動や関税をちらつかせ、加盟国との関係を揺るがしてきた。
NATOは条約の第5条で、一つの加盟国に対する攻撃はすべての加盟国に対する攻撃とみなすと定めている。
この条項はこれまで1度だけ、2001年の米同時多発攻撃のあとに発動された。それを受けてイギリスなどNATO加盟国は、アメリカのアフガニスタンでの軍事攻撃に加わった。
英部隊はカナダの部隊とともに、前線から離れたところにとどまるどころか、武装勢力タリバンが勢力を誇る非常に危険なヘルマンド州とカンダハル州に展開した。
最も激しい戦闘が繰り広げられたヘルマンド州では、デンマークとエストニアの兵士らも英部隊に加わった。それらすべての国の兵士が戦闘で死傷した。
アメリカが撤退した2021年時点で、同国中心の連合軍側の兵士の死者は3500人を超えた。うち約3分の2の2461人は米軍人だったが、英軍人の死者もそれに次いで多い457人に上った。

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イギリスのジョン・ヒーリー国防相は、同国などNATO加盟国は2001年に「アメリカの呼びかけに応えた」と強調。犠牲になった英軍人は「国家のために命をささげた英雄」として記憶されるべきだと述べた。
アフガニスタンで数回従軍したアル・カーンズ軍務担当閣外相も、トランプ氏の発言を「まったくばかげている」と批判。「世界はアメリカ支持のために結集した」と述べた。
最大野党・保守党のケミ・ベイドノック党首は、トランプ発言を「まったくナンセンスだ」と断じ、「私は命を落とした若者らの親たちと話した。その人たちの記憶を否定するのは恥ずべきことだ」と述べた。
そして、「トランプ大統領は不用意な発言が多すぎる。彼は明らかに、過去に起きたことの歴史を知らない。このような放言はあってはならない」と主張。英軍とNATO軍の犠牲は尊敬に値するとし、トランプ氏に謝罪を求めるようスターマー氏に迫った。
BBCのクリス・メイソン政治編集長は、スターマー氏の今回の反応について、これまでで最も強いトランプ氏に対する批判だと説明。
トランプ氏の発言について「侮辱的であり、率直に言ってひどいものだ」と述べた際のスターマー氏の口調と身振りは、言葉と同じくらい怒りを示していたとした。
英軍関係者や家族らも憤慨
イギリスでは軍関係者やその家族らも、トランプ氏の発言に怒りをあらわにしている。
アフガニスタンのムサ・カラ近郊で2006年、陸軍の車両に乗っていて地雷で重傷を負ったベン・パーキンソン氏の母親ダイアン・ダーニー氏は、トランプ氏の言葉は「とても侮辱的」で、聞くに堪えないとBBCに話した。現在41歳の息子は新たな手術を終えて療養中だという。
ダーニー氏はトランプ氏の発言について、「自分の行動から目をそらそうとする幼稚な男」であることを示していると主張。スターマー氏に対し、「自国の軍隊のために立ち上がり」、トランプ氏を非難するよう求めた。

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アフガニスタンでは何百人もの英軍人が手足を失った。その1人で、簡易爆発装置(IED)を踏んで両足と右腕を失ったアンディ・リード中尉は、「私たちは毎日、あの紛争のことを考え、肉体的にも精神的にも苦痛を感じている」とBBCの番組「ブレックファスト」で話した。
リード氏はまた、アフガニスタンでは米兵と協力していたとし、「彼らが最前線にいて、私がその隣に立っていたなら、明らかに私たちも最前線にいたことになる」と述べた。
アフガニスタンに2度派遣された英王室のハリー王子も23日、NATO部隊の犠牲は「真実に沿って、敬意を持って語られるべきだ」と訴えた。
そして、「私はそこで任務に就いた。そこで生涯の友を得た。そしてそこで友を失った」と述べた。
ポーランドやカナダの閣僚らも反発
トランプ氏への批判は、イギリス以外の国の閣僚からも出ている。
ポーランドのラドスワフ・シコルスキ外相は、「私たちの兵士の軍務をあざける権利は誰にもない」と反発した。同外相はアフガニスタンの前線で従軍したポーランド兵3万3千人の1人。
カナダのデイヴィッド・J・マクギンティ国防相は、同国の「兵士らは最初から現地に展開した。義務からではなく、正しいことだったからだ」と主張。カナダ兵158人はアフガニスタン・カンダハル州で連合軍の作戦を主導し、「究極の犠牲を払った」と述べた。
一方、米ホワイトハウスは23日、NATOに関するトランプ氏の見解を維持する声明を発表した。
ホワイトハウスは、「トランプ大統領は正しい。アメリカのNATOへの貢献は、他の国々のそれをはるかに上回っている。また、(トランプ氏は)NATO同盟国から5%の(防衛)支出の約束を引き出すのに成功し、ヨーロッパが自分たちの防衛により大きな責任を負うことを促している」と主張。
「アメリカはグリーンランドを守ることができる唯一のNATOのパートナーであり、大統領はそうすることで、NATOの利益を促進している」とした。











