英下院、不法入国者のルワンダ移送法案を可決 最高裁判断を回避する内容

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英下院は17日、小型ボートなどで英仏海峡を渡ってイギリスに来た不法入国者をアフリカ・ルワンダに移送する計画について、リシ・スーナク政権が提出した緊急法案を可決した。
この緊急法案は、物議をかもしているルワンダ移送計画に対する法的な異議申し立てをできないようにするもの。同計画はスーナク首相の主要政策の一つで、首相はこれが不法移民の抑止につながるとしてきた。
野党は、この計画はコストがかかりすぎ、違法だとして反対している。
一方、与党・保守党の右派からは、法案をさらに踏み込んだ内容にするべきだと不満の声が上がっており、多くの保守党議員が造反をほのめかしていた。
しかし採決では造反はわずか11人にとどまり、法案は賛成320、反対276で可決された。
法案は今後、上院で審議されるが、厳しい反対に直面することが予想される。
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不法入国者をルワンダへ移送する計画は、2022年4月にボリス・ジョンソン首相(当時)が最初に発表。以来、法的な異議申し立てに直面してきた。
昨年6月には欧州人権裁判所(ECtHR)の差し止め判断を受け、移送の第1便が出発直前にキャンセルされた。英最高裁も11月、この政策がルワンダに移送される人々を人権侵害にさらすとした控訴院の判決を支持し、違法と判断した。
英最高裁判事は判断の中で、ルワンダに強制移送された人々が、ルワンダ政府によって安全ではない場所に送られる可能性があると信じるに足る「相当な根拠」があると指摘した。
国際規範のノン・ルフールマン原則では、亡命希望者を危険な状況に陥る可能性がある国に送ることが禁じられている。
スーナク政権は最高裁の判断を受け、ルワンダが亡命希望者にとって安全な国だと、イギリスの法律で明示する緊急法案を策定。裁判所に人権法の主要部分の適用除外を命じることで、最高裁判断の適用を回避するものとなっている。
また、ルワンダへの強制移送の妨げとなる、イギリスの他の法律や、難民条約などの国際的ルールについても、適用除外を求めている。

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保守党の右派からの圧力
保守党の右派は、スーナク政権の法案ではなお、計画が裁判所で差し止められる可能性があるとして、内容を厳格化する修正を求めていた。
ロバート・ジェンリック議員は採決前、政府がルワンダへの移送に関して人権法の一部を無視できるとする修正案を提出。また、内閣がECtHRからの暫定命令を自動的に拒否するようにする修正案も提案した。
ジェンリック議員は昨年11月、法案の内容が不十分だとして、移民担当相を辞任している。
同議員の修正案は可決されなかったものの、保守党議員61人が賛成。スーナク政権にとって最大の造反となった。
緊急法案を否決するには、30人が造反する必要があった。右派議員らは、法案が修正されなければ投票を棄権するか、反対票を投じると示唆していた。
直前には、党幹部2人が修正案に賛成するために役職を辞任した。
だが結局は、ジェンリック議員やスエラ・ブラヴァマン前内相ら11人だけが反対票を投じた。
ジェイムズ・クレヴァリー内相はこの法案を擁護し、「不法にイギリスに入国した場合、滞在することはできないという明確なメッセージ」だと述べた。
「この法案は、法廷闘争のメリーゴーラウンドに終止符を打つために綿密に起草されたものだ」と、クレヴァリー内相は付け加えた。
ルワンダと新協定、コスト面で問題も
英最高裁の判断を受け、イギリスとルワンダは昨年12月、新たな移民条約を結んでいる。
クレヴァリー内相は、この条約は、ルワンダに送られた人々が出身国に戻される危険性がないことを保証するものだと説明。
また、ルワンダが義務を果たしていると確認するための新しい独立監視委員会や、イギリスの裁判官が新しい上訴プロセスに関わることなども盛り込まれた。
英政府は、不法入国した人をルワンダに移送し、そこで亡命申請手続きを行わせるために、ルワンダ側に1億4000万ポンド(約262億5000万円)をすでに支払っている。2024~2025会計年度にはさらに5000万ポンドを支払う予定だ。
しかし最大野党・労働党は、イギリスはこの計画で4億ポンドをルワンダに支払うことになると試算。
イヴェット・クーパー影の内相は法案を「コストのかかる詐欺」と呼び、スティーヴン・キノック影の移民担当相も、「負担し切れず、機能せず、違法」だと指摘している。
イギリス政府はこの計画の総費用を明らかにしていない。
だが英内務省が昨年6月に出した試算によると、不法移民をルワンダなどの「安全国」に移送する計画は、移民をイギリスに滞在させるよりも1人あたり6万3000ポンドほど高くつく。











