ガザ地区で人口の半分が飢えている=国連WFP幹部

ナセル病院に避難する子供や女性(ガザ地区南部ハンユニス)

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画像説明, ナセル病院に避難する子供や女性(ガザ地区南部ハンユニス)

パレスチナ自治区ガザ地区でイスラエル軍とイスラム組織ハマスとの戦いが続くなか、国連世界食糧計画(WFP)の幹部は9日、ガザ地区の人口の半分が飢えていると警告した。他方、イスラエル国防軍(IDF)報道官のリチャード・ヘヒト中佐はBBCに対して同日、民間人の死傷について「つらいことだが、ほかに方法がない」と話した。

国連WFPのカール・スコウ副事務局長はロイター通信に対し、「(ガザ地区の)人口の半分が飢えている。10人のうち9人が、毎日食事ができずにいる」として、現地の人道支援活動が崩壊しつつあると話した。

「ガザ地区内にできるだけたくさんの援助物資を届けるため、できる限りのことをしている」とも、スコウ氏は述べた。

8日にガザ地区を訪れたスコウ氏は、地区内の「法と秩序が破綻(はたん)しつつある中で、意味のある人道支援活動は不可能だ。必要な食料のごく一部しか届かず、燃料が決定的になく、通信システムが頻繁に遮断され、WFPスタッフや配給場所で食べ物を配る人たちの安全が確保されない状態では、私たちは仕事ができない」とも報告していた。

スコウ氏は、ガザ地区にあふれる「恐怖とカオスと絶望」に衝撃を受けたとして、「ガザの人たちは必至だ。女性や子供たちの目に、恐怖を見て取れる。ガザの人たちは不衛生なシェルターにぎゅうぎゅう詰めになって暮らすか、あるいは冬の寒さが本格化する路上で暮らしている。そして、食料が不足している」と報告。「(援助物資)倉庫や配給場所に、空腹の人が大勢押し寄せ混乱が生じていた。スーパーマーケットの棚には何もなく、シェルターは満員でトイレはあふれかえっていた」とも説明している

ガザ地区を実効支配するハマスは10月7日にイスラエル国内を奇襲し、約1200人を殺害、約240人を人質にした。イスラエルはただちにガザ攻撃を開始し、ガザ地区を封鎖。住民にとって不可欠な援助物資が、ガザに入らなくなった。

ハマスが運営するガザ保健省によると、イスラエルの攻撃でこれまでに1万7700人がガザで死亡した。そのうち、7000人以上が子供という。

10月7日以降、エジプトとの境界沿いにあるラファ検問所だけが限定的に再開され、少量の援助物資がガザに届くようになった。イスラエルは近く、イスラエルとガザの境界とガザとエジプトの境界が交差する場所にあるケレム・シャロム検問所を再開する方針を示しているが、援助トラックを審査するだけだとしている。審査済みトラックはケレム・シャロムからラファへ進み、そこからガザに入ることになるという。

南部ハンユニスの医師が涙ながらに

ナセル病院のアフメド・モグラビ医師
画像説明, ナセル病院のアフメド・モグラビ医師は、食べ物も水も医薬品も不足し、患者の手術ができないとBBCに話した

ガザ地区南部ハンユニスは現在、二方面からイスラエル軍の戦車に囲まれている。市内で唯一機能し続ける医療機関、ナセル病院のアフメド・モグラビ形成外科部長はBBCに、食料が不足する状況について涙をこらえながら話した。

「うちには3歳の娘がいます。何か甘いものはないか、リンゴか何か、果物はないか、ずっと聞いてくる。でも私は応えてあげられない。どうしようもない無力感です」

「食べ物が足りない。ともかく、食べ物が足りない、米しかない。信じられますか。1日に一度しか食事ができない」

イスラエル軍によるハンユニスへの激しい空爆が連日続き、ナセル病院の院長は、運ばれてくる死傷者の数を「把握できなくなった」と話す。

イスラエルは、ハンユニス攻撃の理由について、ハマス幹部が市内に潜伏していると主張。地下に張り巡らせたトンネルに隠れている可能性があるため、現地部隊は戦いながら家屋を一軒ずつ、「(トンネルの)縦穴をひとつずつ」前進し、ハマスの戦闘力を破壊しているのだと説明する。

アメリカの拒否権行使に賛否

動画説明, 国連事務総長はガザの壊滅的状況を警告、アメリカは停戦決議案に拒否権

国連安全保障理事会は8日、パレスチナ自治区ガザ地区での人道目的の即時停戦を求める決議案の採決を行ったが、常任理事国のアメリカが拒否権を行使したため、決議案は否決された

これについて、国連にオブザーバー資格を持つパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は9日、アメリカが戦争犯罪に加担していると非難した。

アッバス氏は、「ガザでパレスチナの多くの子供や女性や高齢者が、(イスラエル)占領軍によって殺され」ており、その「流血」の責任の一端はアメリカにあると述べた。

対するイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は9日、アメリカが安保理で「正しい姿勢」をとったことをありがたく思うと述べた。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長の要請を受けて開かれた安保理の緊急会合に、アラブ首長国連邦(UAE)がガザでの即時停戦を求める決議案を提出。拒否したアメリカと棄権したイギリスを除き、15の理事国のうち13カ国が賛成した。

停戦決議案に拒否権を行使したアメリカのロバート・ウッド代理大使は、「維持できない停戦」を求める決議案だったと、拒否権発動を擁護。「ハマスは、10月7日にしたことを繰り返せるようになってしまう」とした。