ロシア、アメリカの人気俳優をだましウクライナ批判動画に マイクロソフト報告

ナディーン・ユーシフ、BBCニュース

Elijah Wood at a premiere

画像提供, Getty Images

画像説明, マイクロソフト社の報告によると、イライジャ・ウッドさんなど複数の人気俳優の映像が悪用された

米マイクロソフトは7日、ロシアが複数のアメリカ人俳優をだまし、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領について偽情報を拡散するために悪用したと明らかにした。著名人がファンに個別メッセージを送ることで人気の、動画プラットフォーム「カメオ」を使った工作だという。

マイクロソフトの脅威分析センターによると、映画「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズなどで知られるイライジャ・ウッドさんたちがゼレンスキー氏に対し、薬物などの利用について治療を受けるよう呼びかける個人的なメッセージを送っているかのように見えるという。

「カメオ」は、こうした動画はサービスの利用ガイドラインに違反する可能性があるとしている。

「カメオ」は新型コロナウイルスのパンデミック時に、一躍人気となった。利用者は有名人や公人に、有料の録画メッセージをリクエストできる。

マイクロソフトによると、今回の調査で発覚した著名人の動画は、いずれも「Vladimir」という名前の人に向かって、アルコールの過剰摂取や薬物利用について周囲に助けを求めてくださいと促すメッセージで、おそらく「カメオ」ユーザーのリクエストに応じたもの。「Vladimir」をウクライナ語読みすると、ゼレンスキー大統領のファーストネームになる。

「Vladimir」へのメッセージ動画を録画した著名人は、ロシアのプロパガンダに悪用されると知らずに提供したものと思われている。

ロシアはかねて、自分たちのウクライナ侵攻を正当化し支持を集めるため、ゼレンスキー氏をはじめとするウクライナ政府幹部はアルコールや薬物の依存症だと、虚偽の主張を繰り返してきた。

ウッドさんは動画の一つで、「必要な助けがあなたのところに届きますように。愛してますよ、Vladimir、自分を大事にして」と語りかけている。

この「カメオ」動画にはそこからさらに、絵文字やマスコミのロゴが足され、ソーシャルメディアで広く拡散された。ロシア政府あるいはロシア政府系のアカウントを通じて、広められることもあった。

ロシアのゴールデンタイムの政治トークショーで、こうした動画が話題になったこともあるという。

マイクロソフトによると、2023年7月以降に発見したこうした動画は7本。ウッドさんのほか、プリシラ・プレスリーさん、人気米ドラマ「ブレイキング・バッド」で知られる俳優ディーン・ノリスさん、人気BBCドラマ「The Office」のアメリカ版に出演した俳優ケイト・フラネリーさん、米ドラマ「Scrubs」で知られる俳優ジョン・C・マギンリーさんなどが、出演している。

「カメオ」は、信頼と安全関連で実施中の調査について公にコメントしないと述べる一方、ロシアのプロパガンダに自社動画が使われることは、コミュニティー・ガイドラインに違反すると補足した。

「そのような違反行為が立証されれば、カメオは通常、問題のあるコンテンツを削除し、再発防止のために購入者のアカウントを利用停止にする」と、カメオの広報担当はコメントした。

ウッドさんの代理人は各報道機関に、ウッドさんはカメオを通じたリクエストに応えたに過ぎず、当該の動画は「ゼレンスキー氏にあてたつもりのものでもなければ、ロシアやウクライナや戦争に何の関係もないもの」だとコメントした。

ロシアはソーシャルメディアでウクライナでの戦争に関する偽情報を拡散し続けており、その手段も増え続けている。

米テクノロジー誌WIREDによる調査報道では、テイラー・スウィフトさんやキム・カーダシアンさんといったアメリカの著名人の映像と、反ウクライナのメッセージを並べて、まるでアメリカの著名人がそれを言ったかのように見せる動画や画像が、ソーシャルメディアで拡散されている。

WIREDによると、この偽情報工作は、フェイスブックだけで少なくとも760万人に届いた。かつてクレムリン(ロシア大統領府)とのつながりが指摘されたロシアの影響工作に関係するものだと、WIREDは分析している。