ロシアの新しい歴史教科書、ウクライナ侵攻を正当化 人類の文明守るためだと
ヴィタリ・シェフチェンコ、BBCモニタリング

画像提供, Getty Images
ロシア政府は7日、ウクライナ侵攻を正当化し、西側諸国がロシアを破壊しようとしていると主張する新しい教科書を発表した。17~18歳の子供が学ぶ学年で使用されるという。
ロシアのメディアが伝える抜粋によると、教科書は生徒に、ウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに対する「特別軍事作戦」を開始していなければ、人類の文明はおしまいだったかもしれないと教える。
「ロシア史:1945~21世紀初頭」と題された教科書は、共著者にかつてロシアの文化相だったウラジーミル・メディンスキー大統領顧問が名前を連ねている。
ロシア政府が認定した教科書が、昨年2月に始まったウクライナ侵攻など最近の出来事を内容に含むのは、これが初めてとなる。
今年9月から、17~18歳が学ぶ11年生の授業で、この教科書が使用される。
教科書は、「西側諸国は、ロシアの国内情勢をなんとしても不安定化させようとしている」と書き、この目的実現のため西側は「あからさまなロシア嫌悪」を広めているのだと、生徒に教えることになる。
教科書はさらに、西側がロシアをさまざまな紛争に「引きずり込む」ようになったのだと書く。西側の究極的な目的は、ロシアを破壊してロシアの天然資源を奪うことなのだと、教科書は主張している。
クレムリン(ロシア大統領府)がプロパガンダで繰り返す決まり文句が、教科書にも数多く登場する。たとえば「ウクライナは国家主義の過激派が支配する侵略国家」で、「西側に操られて」おり、「西側はロシア打倒の道具としてウクライナを利用している」のだという内容が含まれる。
教科書では、ウクライナという国がそもそも西側がロシアへのあてつけとして作り出したものに過ぎず、ウクライナの青と黄色の国旗さえ、「君たちはロシアとは違う」とウクライナ人に信じ込ませるためにオーストリア人が発明したことになっている。
事実を意図的にゆがめた記述も散見される。
たとえば、ロシアが2014年に最初にウクライナを攻撃した時のことは、「ロシア人のままでいたかった」東部ドンバス地方の住民による民衆蜂起で、そこにロシアの「志願兵」が参加したのだと、この教科書は書いている。ロシアが当時、そしてその後の8年間にわたり、ドンバスに送り込み続けた軍事物資や人員については、教科書はまったく触れていない。
2022年2月の「特別軍事作戦」開始については、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟するかもしれないことを、大きな理由に挙げている。
もしもウクライナがNATOに入ってから「クリミアかドンバスで挑発行動を起こし紛争を仕掛けていたら」、ロシアはNATOの全加盟国相手に戦争する羽目になっていたと教科書は書いている。
「そのようなことになれば、文明の終わりだったかもしれない。それは到底、許されなかった」と教科書は主張する。
ただし、ウクライナのNATO加盟は当時も今も、実現の見通しははるかに遠い事柄だった。
教科書はさらに、ロシアが2014年にクリミアを併合する前、ウクライナはセヴァストポリ(ロシア黒海艦隊の母港)をNATO基地にしようとしていたのだと、事実無根の主張をしている。ウクライナ政府が核武装を目指すと発言していたのだという、虚偽の主張もしている。
加えて教科書は、2014年までウクライナの人口の80%が、ロシア語を母語と認識していたと、事実と異なる内容を書いている。定評あるキーウのシンクタンク、ラズムコフ・センターが2006年に公表した世論調査によると、ロシア語が母語だと答えたウクライナ住民は30%に過ぎず、自分の母語はウクライナ語だと答えたウクライナ住民は52%に上った。
教科書は生徒たちに、「やらせ映像や偽の写真・動画を大量に作り出す世界的な産業」に留意するよう警告もしている。これは、ウクライナでロシア軍がさまざまな残虐行為を重ねたと示す資料が、オンラインに大量に掲載されていることへの言及と思われる。
「西側のソーシャルメディアや報道機関は、実に積極的に偽の情報を拡散する」と教科書は、「特別軍事作戦」の章で書いている。
ロシア当局はこれまでに、ロシア軍がウクライナの民間人を攻撃していると批判するロシアの活動家たちを、刑務所に入れている。たとえば、反政府活動家のイリヤ・ヤシン氏は昨年12月、キーウ近郊ブチャでロシアが戦争犯罪を重ねた疑いについてオンラインのライブ配信で言及した後、禁錮8年半の判決を言い渡された。
ロシアのウクライナ侵攻後に西側諸国が科した対ロ制裁についても、新しい教科書は、「ロシア経済を破壊しようとする」行為だと批判。さらに、西側による制裁は「西側が何かというと口にしたがる国際法の規範に、何から何まで違反している」と、誤った主張を展開している。
同時に教科書は、西側企業がロシアから次々と撤退したことは、ロシアのビジネスパーソンにとって「素晴らしい機会」だと位置づけている。









