オランダ総選挙、反イスラム掲げる極右政党が勝利 連立成立が焦点

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オランダ下院総選挙(定数150)の投開票が22日に行われ、反イスラムを掲げるヘルト・ウィルダース党首(60)が率いる極右・自由党が議席を倍増させ、第一党となるのが確実となった。開票率94%の時点の予測では、改選前の17議席から20議席を増やし、37議席を得る見通し。続く左派連合は、25議席にとどまるとみられている。
ウィルダース党首は、「自由党をこれ以上、無視することはできない。我々が国を治める」と述べた。
勝利演説でウィルダース氏は強い調子で、「自分たちは国を治めたい、そして自分たちが国を治める。(獲得した議席数は)我々に対する多大な評価だが、多大な責任でもある」と述べた。
ウィルダース氏は「全員の首相」になると約束。他党との連立を通じ76議席を与党議席としたい考えを示した。
BBCに対してウィルダース氏は、首相になるために「もちろん」他党と交渉し譲歩する用意があると話した。
ウィルダース氏と自由党は、移民受け入れについて国内に広がる不満に働きかけて、支持を伸ばした。国境を閉鎖する一方、イスラム教の聖典コーラン禁止を呼び掛けてきた従来の姿勢をいったん保留にした。
左派連合を率いる、欧州連合(EU)欧州委員会の上級副委員長だったフランス・ティメルマンス氏は、ウィルダース氏が率いる政権とは一切かかわらない方針を示している。オランダの民主主義と法の支配を守ると約束し、「オランダにいる人が追い出されるようなことは、許さない。オランダでは全員が平等だ」と支持者に述べた。
第二党となる見通しの左派連合が自由党と連立しない方針を示すなか、連立相手になり得るのは議席数3位の中道右派リベラル「自由民主国民党(VVD)」か、4位の中道派新党「新社会契約党(NSC)」とされる。
VVD党首のディラン・イェジルゲス前司法・安全相と、NSCのピーター・オムツィヒト党首は共に、ウィルダース氏の勝利を祝している。
VVDのイェジルゲス党首は、ウィルダース氏が首相になるために必要な議席数を獲得できるか疑わしいとしつつ、連立に参加するかは党内の議員ら次第だとしている。総選挙前には、ウィルダース氏を首班とする内閣には参加しないと強調していたが、ウィルダース氏が勝利した場合に協力する可能性は否定しなかった。
7歳の時にトルコから難民としてオランダに移住したイェジルゲス氏は今年7月、内閣総辞職に伴うマルク・ルッテ首相の政界引退を受け、VVD党首となった。移民対策強化を掲げ、ウィルダース氏と連携する可能性を排除しなかったことが、極右・自由党の台頭につながったとの批判も一部の政治家やイスラム教関係者から出ている。
NSCのオムツィヒト党首も当初は、ウィルダース氏と協力しないとしていたものの、選挙後は「(有権者の)信託を行動に移すため、力を貸す」としている。

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欧州連合と移民対策
欧州各国のナショナリスト政党や極右リーダーは、ウィルダース党首の勝利をたたえた。フランスの極右「国民戦線」(FN)党首マリーヌ・ル・ペン氏は、「国民的アイデンティティーを守りたいという強い感情がふくれあがっていることが、確認されたと述べた。
ウィルダース氏は、オランダのEUからの離脱を問う国民投票の実施を呼びかけている。ただし、現時点ではEU離脱を支持する世論が形成されていないことも、同氏は認識している。EU離脱に関する国民投票の実施を掲げた状態での、他党との連立政権づくりは容易ではないとされている。
オランダは、のちのEU誕生につながった1952年設立の欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)の創設メンバー。
ウィルダース氏は今回の投票に向けて、従来の反イスラム言動も少し調子をやわらげ、「今はそれよりも喫緊の課題がある」として、モスクやイスラム教の学校を廃止する方針も「いったんは棚に上げる」用意があるとしていた。この作戦は成功し、今回の議席倍増につながったとされる。
ウィルダース氏は選挙戦の間、移民の受け入れ制限をめぐる閣内対立から連立が崩壊した前政権に対する世論の不満に乗じて、支持を伸ばした。
オランダのトゥウェンテ大学で政治学を研究するマルティン・ロゼマ准教授によると、前政権の混乱はウィルダース氏にとっては絶好の機会だったと指摘。さらに、中道右派政党の党首がウィルダース氏と協力する可能性を認めたことも、極右政党の台頭につながったと説明する。
「国際的な前例からも、極右政党は排除されると失速することが分かっている」と、ロゼマ博士は指摘する。
今回の選挙では移民問題が、主な争点だった。ウィルダース氏は22日の時点で、「亡命と移民の津波」に取り組むつもりだと言明していた。
オランダへの昨年の総移民数は、前年の2倍強の22万人に達した。ロシアによるウクライナ侵攻が影響している。39万戸の住宅が不足しているとされ、移民増加は国民生活に影響する問題となっている。










