ノーベル平和賞、収監中のイラン女性人権活動家に イランは「偏った」受賞と非難

Narges Mohammadi

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画像説明, ノーベル平和賞の受賞が決まったイランの人権活動家ナルゲス・モハンマディ氏。イランでの女性への抑圧と闘い、人権を推進したことが評価された

ノルウェー・ノーベル委員会は6日、2023年のノーベル平和賞をイランの人権活動家ナルゲス・モハンマディ氏(51)に授与すると発表した。イランでの女性への抑圧と闘ったことが評価された。

ノルウェー・ノーベル委員会のベリト・ライスアンデシェン委員長は、モハンマディ氏は「イランでの女性への抑圧と闘い、すべての人の人権と自由を推進するために闘った」と受賞理由を説明した。

また、モハンマディ氏の闘いには「多大な個人的犠牲」が伴ってきたと述べた。

モハンマディ氏は、2003年のノーベル平和賞受賞者、シリン・エバディ氏らが設立した人権団体「人権擁護センター」の副代表。女性やマイノリティー、死刑囚の人権擁護などのために活動してきた。

現在は、イランの首都テヘランにある悪名高いエヴィン刑務所で10年の懲役刑に服している。

イラン外務省は受賞について、「一部の欧州諸国の介入主義者と反イラン的政策」に沿った、「偏った」ものだと述べた。

アメリカのジョー・バイデン大統領は、イラン政府にモハンマディ氏の解放を求めるとともに、同氏の「揺るぎない勇気」を称賛した。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、モハンマディ氏は「自由の戦士」だと述べた。

イランで抗議した大勢を評価する受賞

ライスアンデシェン委員長は、モハンマディ氏の受賞理由についての説明を、イランの反政府デモのスローガンになっている「女性、命、自由」という言葉から始めた。

今回の受賞は、「神権的な政権による、女性を標的にした差別と抑圧の政策」に対して、この1年間にデモを行った何十万人ものイラン人を評価するものであり、この運動をモハンマディ氏が率いたと同委員長は述べた。

ノーベル委員会の決定は、イラン当局を承認しないという非常に強力なシグナルを送ることになる。

ノーベル平和賞の授賞式は毎年12月10日にノルウェーの首都オスロで行われる。ライスアンデシェン委員長は、モハンマディ氏が授賞式に出席できるよう、イランに釈放するよう求めた。

「イラン当局が正しく判断するなら、彼女を釈放し、受賞の場に本人が出席できるようにするはずだ。それこそ、私たちが最も望んでいることだ」と、委員長は述べた。

ただ、モハンマディ氏が直接賞を受け取れる可能性は、極めて低いとみられる。

国連は、今回の受賞が「イランの女性たちの勇気と決意、そして彼女たちがいかに世界にインスピレーションを与えているか」を浮き彫りにしたとしている。

受賞は「不正の犠牲になった人たちのもの」

Evin prison in Tehran, Iran. File photo

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画像説明, モハンマディ氏は、イランの首都テヘランにある悪名高いエヴィン刑務所で女性たちがどのように虐待されるか、その悲惨な詳細を明らかにしている。画像はエヴィン刑務所

2022年3月に釈放されるまで、モハンマディ氏とともにエヴィン刑務所で過ごした、イギリスとイランの二重国籍を持つナザニン・ザガリ=ラトクリフ氏は、友人の受賞を喜んでいると語った。

「涙が出てくる。彼女はエヴィン刑務所で、私たち全員のために、本当にたくさんのことをしてくれた。ナルゲスはイランの司法制度が、女性の権利を侵害し、独房に監禁し、処刑していることに対抗して、恐れずに闘っている。彼女は、エヴィン刑務所の女性収容棟にいる女性たちのインスピレーションとなり、支柱のような存在となっている」

「この賞は、イランで何かしら不正の犠牲となり、いまも犠牲者であり続けているイラン人女性ひとりひとりのものだ」

モハンマディ氏さんが8年間会えずにいる息子のアリ・ラフマニ氏は、授業中に母親の受賞決定を知った。

ラフマニ氏はBBCに対し、「とても嬉しかったし、お母さんを誇りに思った」と述べた。

「このことを受けとめるのに少し時間がかかった。初めはとても嬉しかったし、いつもと同じように、昨日もおとといもそうだったように、お母さんを誇りに思った。この賞はイラン人のもの。抗議行動のおかげなので」

刑務所内での女性の扱い

現在服役中のモハンマディ氏は、これまでに13回逮捕されている。有罪判決を5回受け、命じられた量刑は計31年に及ぶ。154回のむち打ち刑も言い渡されているが、この刑が執行されたのかどうかは不明。

モハンマディ氏は昨年12月、抗議デモで拘束されたイラン人女性たちが受けている性的・身体的虐待の悲惨な詳細をつづった書簡を、獄中からBBCに送った。

イランでは昨年9月、髪の毛を覆うよう女性に義務づけた法律に違反したとして、マサ・アミニさん(22)が道徳警察に逮捕され、その後に死亡した。この事件をきっかけに抗議行動が広まる中、刑務所内でのこうした暴行がより日常的になっていったと、モハンマディ氏は述べていた。

アミニさんの死に端を発した抗議行動は全国に広まり、抗議者の要求は自由の拡大から国家転覆に至るまで多岐にわたった。

イラン人女性が反抗的にスカーフに火をつける映像は、世界の注目をひきつけた。しかし、当局が抗議行動を残忍に取り締まったため、今では抗議行動はほぼ止まっている。

モハンマディ氏は2020年にBBCの取材に応じた際、イランにおける女性の権利向上に身を捧げる理由を次のように説明した。

「イランでもほかの国でも、世界のどこでも、自由と正義の達成を目指す人権への取り組みや行動を支援することは、非常に重要で非常に心温まるものだと、私は考えている」

モハンマディ氏は昨年、世界中から影響力を持ち人の心を動かす女性、BBC「100 Women(100人の女性)」の1人に選ばれた。

動画説明, BBC記者に託された、イランで抗議を続ける女性たちの日記