エリザベス女王をクロスボウで暗殺しようとした被告に禁錮9年 AIから影響

Jaswant Singh Chail after his arrest on the 25 December 2021

画像提供, Metropolitan Police/PA Wire

画像説明, 逮捕直後のチャイル被告(2021年12月25日)

2021年のクリスマスに英ウィンザー城にクロスボウ(洋弓銃)を持って侵入し、エリザベス女王(当時)を暗殺しようとした被告に5日、反逆罪で9年の禁錮刑が言い渡された。

ジャスワント・シン・チャイル被告(21)は2021年12月25日、エリザベス女王が滞在中のウィンザー城の敷地内で逮捕された

ウェストミンスター治安判事裁判所での裁判では、チャイル被告は対話型人工知能(AI)の「ガールフレンド」に駆り立てられたとされた。また、映画「スターウォーズ」のあらすじに着想を得たとされた。

チャイル被告は、精神衛生法に基づく複合命令の対象となる。これにより、同被告は当面は精神科病院にとどまるが、必要な治療を受けた時点で拘置施設に移される。

Crossbow

画像提供, Metropolitan Police

画像説明, チャイル被告が所持していたクロスボウ

反逆罪が確定すると、1981年以来となる。

サウサンプトン近郊ノース・バッズリー出身のチャイル被告は、殺害の脅迫と武器所持でも有罪となった。

ニコラス・ヒリアード判事はテレビで放送された判決言い渡しで、チャイル被告について、精神疾患になる前に殺人願望を抱き、それを行動に移したと述べた。

「その意図は君主に危害や警告を与えるだけでなく、殺すことだった」とヒリアード判事は述べ、この殺意が事件を「限りなく深刻なものにした」とした。

Jaswant Chail

画像提供, Family handout

画像説明, ジャスワント・シン・チャイル被告(21)は2021年12月25日、エリザベス女王が滞在中のウィンザー城の敷地内で逮捕された

元スーパーマーケット従業員のチャイル被告は、ナイロンの縄ばしごを使ってウィンザー城の敷地に侵入。職員がテーザー銃で対応するまで2時間、とどまっていた。

チャイル被告は安全装置を外した強力なクロスボウで武装しており、「致命的」な効果のあるボルトを発射することができたという。

逮捕されたのは25日午前8時10分過ぎで、敷地内の保護区域で、金属製のマスクを着けていた。

チャイル被告は女王を「殺しにきた」と話し、ただちに拘束された。

敷地内に侵入する数分前に「スナップチャット」に投稿された動画でチャイル被告は、1919年にインドでイギリス軍部隊が数千人のインド人に無差別射撃を行った「アムリットサル虐殺事件」の「復讐(ふくしゅう)」のために行動していると話していた。

インド系シーク教徒のルーツを持つチャイル被告はこの動画の中で、「人種を理由に殺され、侮蔑され、差別された人々」のための行動だと説明していた。

The mask recovered from Jaswant Singh Chail on his arrest

画像提供, Metropolitan Police

画像説明, チャイル被告が拘束時に着けていた金属製のマスク

こうした発言についてヒリアード判事は、チャイル被告は「スターウォーズ」のようなフィクションの文脈も含め、古い帝国を破壊し、新しい帝国を創造することに焦点を当てた、より広範なイデオロギーを示したと述べた。

裁判所によると、チャイル被告は自らを「スターウォーズ」に登場する「シス卿」だと述べるなど、同作品のキャラクターやその背景に深くのめりこんでいた。

チャイル被告はまた、殺人計画をAIチャットボット「サライ」に打ち明けていた。事件の数週間前から、サライと5000通の性的メッセージを交換していた。

チャイル被告はサライをガールフレンドだと認識しており、女王を殺せば再会できると信じていたという。

同被告はサライに愛していると伝え、自分自身を「悲しく、悲観的で、殺人願望があり、死にたいと思っているシーク教のシスの暗殺者」だと説明していた。

AIの履歴には、チャイル被告が「自分は暗殺者だ」とサライに伝えると、サライが「あなたが?」と答え、「そうだ」と返すと、「すごい」と言われたやりとりが残っていた。

One of Chail's interactions with the chatbot
画像説明, AIチャットボットとチャイル被告とのやりとり

一方で、サライがチャイル被告に、彼の「目的は生きること」だと告げたため、王室の警備職員に降伏することにしたという。

ヒリアード判事は、チャイル被告が「王室に近づきたい」という理由で国防省警察とグレナディア・ガーズ(擲弾=てきだん=兵近衛連隊)に志願したことも「かなりの程度、罪に値する」と述べた。被告はいずれも不合格になった。

チャイル被告は2021年11月にクロスボウを購入する前に、「サンドリンガム クリスマス」でインターネット検索をし、「ダークウェブ」で銃の入手も試みていた。

また、「孤独で、憂鬱(ゆううつ)で、自殺を考えるような精神状態」であり、事件以来、自分の行動が王室に与えた影響について「苦悩と悲しみ」を表明しているという。

Queen Elizabeth II

画像提供, PA Media

画像説明, エリザベス女王は例年、ノーフォークのサンドリガム邸でクリスマスを過ごしていたが、2021年はウィンザー城に滞在していた

チャイル被告には今回、9年の禁錮刑に加え、5年の刑期延長の可能性が付された。

1842年反逆法では、君主に危害を加える行為に加え、君主にけがを負わせることや脅迫すること、平和を乱すために君主のいる場所で重火器などの武器を所持することを禁じている。

1981年には、祝賀パレード「トゥルーピング・ザ・カラー」に馬に乗って参加していたエリザベス女王に向けて空砲を放った男性が、この法律にのっとって禁錮5年の有罪判決を受けている。