米下院がマカーシー議長の解任動議を可決、史上初 共和党の8人造反

McCarthy seen leaving

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画像説明, 下院を後にするケヴィン・マカーシー氏(中央)

米連邦議会下院は3日、ケヴィン・マカーシー議長(共和党)の解任動議を216対210の賛成多数で可決した。身内の共和党議員8人が造反した。下院議長の解任動議が可決されたのは米史上初めて。

下院は、野党・共和党が221議席、与党・民主党が212議席と、共和党が僅差で過半数を占める。議場内は採決の結果が発表されるまでの間、ほとんど静まり返っていた。

「下院議長職はこれにより空席とする」と、スティーヴ・ウォマック議員(共和党)は小づちをたたいて宣言した。

マカーシー氏をめぐっては、その指導力に対する共和党内の少数の強硬右派議員の不満が、先週末に爆発した。強硬派はこれまで、かたくなに歳出削減を要求し、議会での交渉を妨げてきたが、9月30日につなぎ予算が可決・成立。短期的法案の可決のために民主党票に頼るというマカーシー氏の決断は、強硬右派が下院で反乱を起こすきっかけになる可能性があるとみられていた。

ドナルド・トランプ前大統領の盟友、マット・ゲイツ下院議員(フロリダ州)は2日夜、マカーシー氏の解任動議を議会に提出した。

先に成立したつなぎ予算には、共和党強硬派が強く反対していた、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの追加援助は盛り込まれなかった。しかしゲイツ氏は、マカーシー氏がウクライナへの資金提供を継続するためにホワイトハウスと密約を交わしていたと非難した。

マカーシー氏は自身の解任をめぐる採決を前に、連邦政府の閉鎖を回避するために民主党側と協定を結んだ自身の決断を擁護した。

「政府(機関)が開かれたままにし、わが国の兵士に給与を支払うことは、正しい決断だった」

「私はその決断を支持する。最終的に自分の職を失うことになるのなら、それはそれで仕方がない」

マカーシー氏は1月に下院議長選で当選したばかりだった。ゲイツ氏ら身内の右派議員の造反により、異例の15回目の投票で過半数票を得た

3日の採決では、共和党議員のうち8人が解任動議に賛成した。ほかの210人はマカーシー氏の続投を選んだ。

しかし、民主党の全議員が賛成票を投じ、マカーシー氏の解任が決まった。

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採決に先立ち、トランプ前大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、共和党は身内同士ではなく「急進左派の民主党と戦う」べきだと述べた。

「再出馬はしない」

3日夜の共和党議員の内輪の会合で、マカーシー氏は下院議長選に再出馬するつもりはないと語った。

マカーシー氏はその後、ゲイツ氏が注目を集めようとしていると非難した。

「(解任動議が)個人的なものだったことは分かるでしょう」、「(政府)支出とはなんら関係のないものだった」と、記者会見で述べた。

マカーシー氏は、党内で争いが起きている中でゲイツ氏が資金集めの電子メールを送ったとし、「議員らしくない」と指摘した。

そして、自分を追放した強硬派たちは「保守派ではない」と付け加えた。

民主党の反応

民主党のハキーム・ジェフリーズ下院院内総務は3日、採決を前に同僚議員に宛てた書簡の中で、マカーシー氏を救うつもりはないと述べていた。

「結局のところ、この国は信頼できる議長を必要としている」と、民主党のアダム・シフ下院議員(カリフォルニア州)は述べた。

「我々は彼を信用していない。(共和党の)メンバーは彼を信用していない。議長になるには、ある程度の信用が必要だ」

民主党の左派議員プラミラ・ジャヤパル氏(ワシントン州)は採決前、「彼ら(共和党議員)を無能の豚小屋の中で転げ回らせておけばいい」と記者団に述べた。

採決後、2人の民主党議員は共和党内の抗争について声を出して笑った。そのうちの1人はエレベーターの中で、「内戦の始まりだ」と皮肉を言った。

共和党で何が

下院共和党のトップ議員3人は3日の討論会で、マカーシー氏を擁護した。

下院共和党会議エリス・ステファニック議長は、マカーシー氏は「困難に屈しない人」だと称賛した。

一方で、共和党の穏健派ナンシー・メイス議員の造反は、成り行きを注視している多くの人たちを驚かせた。

メイス氏は、「私は米国民に真実を語る議長を求めている。議会と両党に対して誠実で信頼できる人物を」と述べた。

ゲイツ氏はマカーシー氏の解任決定後、同僚議員によって排除されるのではないかと質問されても、気にかけていないようだった。

「彼ら(同僚議員)が私を追い出したいのなら、票が集まったときに私に知らせてくれ」と、ゲイツ氏は議事堂の外で記者団に語った。

マカーシー氏の後任は

マカーシー氏を支持していたパトリック・マクヘンリー議員(共和党、ノースカロライナ州)が臨時の下院議長に就任し、休会を宣言した。

臨時議長が議長職の全権限を持つのか、それとも単に行政権限と新たな議長の選挙を監督する権限を持つことになるのかは不明。

臨時議長の任期や、新たな選挙の実施時期に関する規則はない。

マカーシー氏の後任が誰になるのかも不明だが、スティーヴ・スカリス議員(共和党、ルイジアナ州)とトム・エマー議員(共和党、ミネソタ州)が候補として挙がっている。

ホワイトハウスのカリーヌ・ジャン=ピエール報道官は声明で、ジョー・バイデン大統領は「下院が速やかに議長を選出することを望んでいる」、「我が国が直面する課題は待ったなしだ」とした。

下院議長は、大統領権限の継承順位が副大統領に次ぐ2位の要職。下院における立法上の優先事項を決定し、ホワイトハウスの政策課題の行方を左右する立場にある。