トランプ前米大統領、連邦法違反37件に無罪主張 機密文書の私的保管めぐり出廷

Former U.S. President Trump departs the Wilkie D. Ferguson Jr. United States Courthouse, following his arraignment on classified document charges, in Miami

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画像説明, 連邦法違反37件について無罪を主張した後、保釈され法廷を離れるトランプ前大統領(13日、フロリダ州マイアミ)

ドナルド・トランプ前大統領(76)は13日午後、フロリダ州マイアミの連邦地裁に出廷し、機密書類の私的保管や不当な共有、司法妨害などの罪37件について、無罪を主張した。出廷時に逮捕された前大統領は、事件について他の被告や証人と話し合わないことを条件に保釈が認められ、法廷を離れた。

濃紺のスーツに赤いネクタイのおなじみの姿で法廷に入ったトランプ前大統領は、硬い表情で腕を組んだりして被告人席に座っていた。裁判長に直接話すことはなく、隣の弁護人にときおり耳打ちしていた。ホワイトハウス時代から付き人で、機密書類の入った箱の移動などに携わったとして罪状6件で起訴された、ウォルト・ナウタ被告も並んで座っていた。前大統領と付き人が目を合わせることはほとんどなかった。

反対側の席には、トランプ前大統領に対する司法省の捜査を指揮するジャック・スミス特別検察官をはじめとする検察官たちが座り、前大統領の様子を見つめていた。

前大統領の無罪の主張は、弁護士が代わりに裁判長に伝えた。

Former U.S. President Trump appears on classified document charges after a federal indictment at Wilkie D. Ferguson Jr. United States Courthouse, alongside his aide Walt Nauta and attorneys Chris Kise and Todd Blanche in Miami, Florida, U.S., June 13, 2023 in a courtroom sketch.

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画像説明, 法廷画家が描くトランプ前大統領と弁護団、付き人ナウタ被告(左)の様子

検察はジョナサン・グッドマン地裁判事に、トランプ前大統領に逃亡の恐れはないと伝えた。これを受けて前大統領は、国内移動や国外への渡航に特に制限を課せられることなく、保釈が認められた。

ナウタ被告は、フロリダ州弁護士資格をもつ代理人がついていなかったため、罪状認否は月末に延期された。

アメリカの大統領経験者が、連邦法違反で起訴されるのは史上初めて。前大統領はすでに今年3月末、2016年大統領選直前に元ポルノ女優に支払った性的関係の口止め料をめぐり、ニューヨーク州の大陪審によって34件の事業記録改ざん罪で起訴され、4月に出廷していた。大統領経験者が起訴されるのは、この時が初めて。

前大統領が起訴された罪状は37件。退任後、フロリダ州の自宅兼リゾート施設「マール・ア・ラーゴ」の大広間やシャワーなどに、機密文書の入った箱を積み上げていたという。さらに、捜査員にうその証言をしたほか、機密文書に関する連邦捜査局(FBI)の捜査を妨害しようとしたという。

前大統領が私邸内で書類箱に入れて保持していた機密には、次の内容のものが含まれていた。

  • アメリカの核計画
  • アメリカや諸外国の防衛・兵器能力
  • アメリカや同盟国の軍事的弱点
  • 外国からの攻撃に対する反撃計画

前大統領はこうした文書を自宅に保管した上、2021年に2度にわたり、機密文書の内容を閲覧権限のない人物(文筆家とスタッフ2人)に見せたという。

大統領記録法は、大統領や副大統領について、公務に関する記録を退任時に国立公文書館に提出しなければならないと定めている。その上で政府文書は、厳重に管理・保管されなくてはならないとしている。

Boxes of papers are stacked in a bathroom with a chandelier and a toilet visible, at Mar-a-Lago

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画像説明, 米司法省が公開した起訴状には、トランプ邸のシャワー室や広間に積み上げられた機密書類の箱の写真が掲載されていた
A photo of a box of spilled documents

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画像説明, トランプ前大統領の私邸で公文書の入った箱の中身が床にこぼれ出ている写真も、起訴状に含まれていた

次回公判の期日は決まっていないが、アイリーン・キャノン連邦地裁判事が事件審理の裁判長を務める見通し。キャノン判事はトランプ政権中に指名され、就任した。

判事は昨年秋、連邦捜査局(FBI)がトランプ邸から押収した文書数千点を捜査対象にするかどうかをめぐり、前大統領側の請求を認め、すべての文書を検証するよう「特別補佐官(スペシャル・マスター)」を任命。これについては第11連邦巡回区控訴裁が、キャノン判事の命令を覆した。こうした経緯のため法曹関係者の間では、今回の事件の裁判長としてキャノン氏が適任かどうか疑問視する声も出ている。

法廷からキューバ料理のレストランへ

法廷を離れたトランプ前大統領は、裁判所前に集まった支持者たちに車内から笑いかけ、親指を立てて見せた。

大統領経験者を警護するシークレットサービスを含む車列は、マイアミ市内で人気のキューバ料理レストランへ向かった。そこで前大統領は支持者と記念撮影をしたり、一緒に祈ったりした。翌日に77歳になる前大統領のため、「ハッピー・バースデー」の歌をうたう人たちもいた。

前大統領が法廷に向かう際、自ら運営するソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」のトランプ前大統領のアカウントに、複数の投稿が相次いだ。「この国の歴史で一番悲しい日だ」と、すべて大文字で強調する内容もあった。またかねて繰り返しているように、スミス特別検察官を狂人と罵倒し、起訴内容はでっちあげだとする投稿もあった。

A supporter of former US President Donald Trump and an anti-Trump demonstrator argue near the Wilkie D. Ferguson Jr. United States Courthouse

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画像説明, 前大統領の支持者(左)と、囚人服のような姿で前大統領を非難する人が、裁判所前で言い争った(13日、フロリダ州マイアミ)

トランプ前大統領の代理人を務めるアリナ・ハッバ弁護士は裁判所前で記者団に対して、起訴は政治的動機によるものだと主張。「この国の歴史の転換点に直面している。主要な政敵をねらって起訴するなど、キューバやヴェネズエラなどの独裁国家で起きることだ」、「トランプ大統領に対して行われていることに、全国民は震え上がるべきだ」などと述べた。

罪状認否の開始前、裁判所の担当者たちは報道陣に、前大統領の顔写真を逮捕時にあらためて撮影することはないが、指紋のデジタル採取と綿棒によるDNA採取は行うと話した。

BBCがアメリカで提携するCBSニュースが18日に公表した世論調査によると、大統領選の共和党予備選で投票する予定の有権者のうち、76%が今回の起訴について、前大統領の行動がアメリカの安全保障を脅かしたのかどうかよりも、起訴が政治的動機によるものなのかどうかが気がかりだと答えている。

複数の法曹関係者は、今回の起訴内容を受けて前大統領が有罪となった場合、量刑は相当なものとなり、場合によっては長期の禁錮刑につながる可能性もあると話している。

トランプ前大統領自身は週末に開いた支持者集会で、今回の起訴を「腐敗した」FBIによる「選挙妨害」だと攻撃。さらに、たとえ有罪になっても2024年大統領選で再選を目指すことには変わりないと強調した。

12日にはスペイン語ラジオ番組に対して、バイデン政権が司法省や捜査機関を「武器化」して、自分に対して使っているのだと非難した。

司法省はホワイトハウスから独立して捜査に当たることが、長年の取り決めとなっている。ジョー・バイデン大統領は今回の起訴が明らかになる前に記者の質問に答えて、トランプ前大統領について自分が司法省に「何か提案したなど一度もない」と話していた。