オーストラリア、ナチスのシンボルを全面禁止へ 最長1年の禁錮刑

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オーストラリア政府は8日、全国でナチスのシンボルの使用を禁止する意向を示した。極右集団の取り締まりを強化する一環。
今後、公の場で鉤十字(かぎじゅうじ)やナチス親衛隊(通称SS)のシンボルを使うと、最長1年の禁錮刑となる。一方、新法はナチス式の敬礼は禁止の対象としていない。
オーストラリアではすでに、多くの州でナチスのシンボルが禁じられてきた。
しかし政府は、それが全ての場所で禁止していることにはならないと説明した。
オーストラリアでは現在、極右活動の勢いが増している。
今年3月には、トランスジェンダーの権利に反対する活動家ケリー=ジェイ・キーン=ミンシュル氏が主催したメルボルンでの抗議運動に、ネオナチ系の組織が参加。ヴィクトリア州議会の階段でナチス式の敬礼を行った。
キーン=ミンシュル氏はこの組織との関与を否定しているが、この出来事をきっかけに、ナチスの象徴の使用に対する規制を求める声が高まった。
マーク・ドレイフュス司法長官は、「オーストラリアには、ホロコーストの恐怖を美化するシンボルを許す場所はない」と述べた。
「ナチスを称賛する製品を見せたり売ったりすることで利益を生むことは許されない」
新法では、ナチスの旗や腕章、Tシャツ、記章などの販売や掲示のほか、インターネット上にナチスのシンボルを掲載し、そのイデオロギーを宣伝することが禁じられる。
一方で、学問や教育、文芸、報道や科学的な目的で鉤十字とSSのシンボルを見せることは、対象とはならない。
この法律では、ナチス式の敬礼は対象に含まれていないが、各州当局に監視が任されている。ヴィクトリア州とクイーンズランド州は今年初めに、敬礼の禁止を発表している。
ナチスの鉤十字は、ヒンドゥー教や仏教、ジャイナ教で古代から神聖視されてきた鍵型の十字をモチーフにしている。新法では、こうした宗教的な文脈での十字の掲示については、慎重に対象から除外しているという。
オーストラリアの名誉毀損防止委員会のドヴィル・アブラモヴィッチ会長は、新法は「6年越しの活動の集大成となる感動の瞬間」だと語った。
アブラモヴィッチ氏は、近年オーストラリアで拡大しているネオナチの存在が、ホロコーストの生存者を「最もつらい日々に引き戻していた」と述べた。
「それが生存者の心に穴をあけていた。自分たちが生きている間にネオナチ主義が再び台頭するなんて思っていもいなかったと思う」
アブラモヴィッチ氏は、「筋金入りの偏屈者」に対する「特効薬」はないとしながらも、新法が正しい方向に踏み出していると語った。
「(ネオナチを)根源から倒すには、社会全体でのアプローチが必要だ」
メルボルンでの出来事以前にも、ネオナチが新型コロナウイルスのパンデミック時にロックダウンに抗議する集会に入り込み、その価値観を広めてメンバーを集めていたと報じられている。
今年5月にはオーストラリアの安全保障トップが、極右過激派がデモ行進をするよう「奨励」されていると警告した。
保安情報機構のマイク・バージェス局長は、「私たちが十分に理解できない理由で、このイデオロギーに引き寄せられる人が増えている」と述べた。








