米テキサス州とワシントン州、経口中絶薬の使用めぐり正反対の判断 20年以上普及

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アメリカなどで20年以上普及し妊娠初期の中絶に使われている経口中絶薬「ミフェプレックス」(一般名:ミフェプリストン)について、米テキサス州の連邦地裁判事が7日、認可を一時停止した。しかしそれから間もなく、ワシントン州の連邦地裁判事が、この薬の使用は引き続き認められると、真っ向から対立する判断を示した。このため、判断は連邦最高裁へと至る可能性が高まった。アメリカでは昨年6月、女性が人工中絶手術を受ける権利を認める長年の最高裁判例が覆され、中絶が合法な州と違法な州で地域差が出ている。
テキサス州では人工中絶に反対する市民団体が、ミフェプレックスの安全性確認が不十分だと主張して使用停止を連邦地裁に訴えた。
これについて、ドナルド・トランプ前大統領が在任中に指名したマシュー・カズマリク判事は訴えを認め、米食品医薬品局(FDA)によるミフェプリストンの認可は、特定の医薬品に関する迅速認可のルールに違反したとの判断を示した。さらに、ミフェプリストンの「心理的影響」をFDAが「十分に考慮しなかった」ことの「重大性は看過できない」と指摘し、「生殖機能が発達中の18歳未満の少女への影響」が確認されていなかったと述べた。
その上でカズマリク判事は、連邦政府に上訴の機会を与えるため、自分の判断の適用を7日間猶予すると決定した。
米司法省は、テキサス州地裁の判断を上訴する方針を明らかにした。
FDAは2000年にミフェプリストンを初認可するまで、審査に4年かけている。
テキサス連邦地裁の判断から約1時間後、ワシントン州の連邦地裁は別の訴訟において、バラク・オバマ元大統領の在任中に指名された判事が、ミフェプリストンの使用を認めた。
ワシントン州のトマス・O・ライス連邦地裁判事は、人工中絶を州法などで認める民主党知事の17州と首都ワシントンにおいて、テキサス連邦地裁の判断の適用を差し止め、ミフェプリストンの使用を引き続き認めると判断を示した。
ワシントン州のジェイ・インスリー知事(民主党)は4日、ミフェプリストンが全国的に入手できなくなった場合に備えて、3年分を州内で備蓄したと発表していた。
双方が「勝利」と
テキサス州のカズマリク判事の判断によって、数百万人の女性が中絶薬を使えなくなる可能性がある。さらに法曹関係者からは、アメリカの医薬品認可システムの基礎そのものが揺らぐ恐れがあるという指摘もある。
そのためワシントン州のボブ・ファーガソン州司法長官は、ワシントン連邦地裁の判断を「巨大な勝利」と歓迎した。
それに対して、テキサス州でミフェプレックスの使用停止を求めた市民団体「自由防衛同盟」は、テキサスでの連邦地裁判断を女性や医師にとって「大きい勝利」と歓迎。別の中絶反対団体「命のための行進」も、「女性や少女のため大きな前進」とたたえた。
民主党のエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州)はテキサスの連邦地裁判断を非難し、「トランプに指名されたたった1人のテキサスの裁判官が、何十年も積み上げられた科学的知見より自分の方が詳しいと思って」いるとツイート。「1人の過激な右派に、女性や、医師や、科学者を否定させるわけにはいかない」と批判した。
ミフェプリストンとは
ミフェプリストン(ミフェプレックス)を使った妊娠中絶は二剤併用で行われる。最後の月経開始日から70日以内の妊娠初期に、ミフェプリストンを内服する。ミフェプリストンには、妊娠状態を保つために必要なホルモンの働きを抑える作用がある。続いて、ミソプロストールで子宮の入り口を開き、陣痛を起こさせる。
FDAは承認当初、妊娠7週までの使用を認め、2016年に妊娠10週まで延長した。
流産や、クッシング症候群(副腎皮質ステロイドホルモンの過剰分泌による病気)の治療にも使われる。
FDAや米産婦人科学会(ACOG)のほか主な医学団体は、ミフェプリストンとミソプロストールの使用は安全だと認めている。
日本での使用は未承認だが、厚生労働省は薬事分科会での審議を予定している。朝日新聞などによると、3月中にも審議予定だったが、募集したパブリック・コメントが多数寄せられたため、審議予定をいったん見送った。










