ロシア諜報機関が「軍よりも成果」 ウクライナ侵攻で=英シンクタンク報告

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英王立防衛安全保障研究所(RUSI)は29日、ウクライナ侵攻において、ロシアの保安・情報機関が軍よりも成果をあげているとする報告書を公表した。
RUSIの報告書によると、ロシアの情報機関、連邦保安局(FSB)は2021年6月の時点でウクライナ侵攻の準備を始めていた。
FSBはまた、ウクライナ政府のコンピューターのハードディスクの中身をダウンロードすることによって、逮捕・尋問すべき親ウクライナ派の人物を特定したという。
報告書はさらに、ロシアがウクライナの占領地域を外界から遮断して支配を強めようと、電子戦部隊を配備したと説明。
このほか、ロシア対外情報庁(SVR)のトップがウラジーミル・プーチン大統領に対し、準備にさらなる時間が必要だとして侵攻開始を先延ばしするよう求めたが却下されたなどとした。

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39ページに及ぶこの報告書は、ウクライナの情報機関職員からの情報や傍受した通信、入手した文書、現地調査などをもとに作成された。ロシアが外国の転覆を狙って実施する秘密作戦について、西側諸国に警告するのが目的。
親ウクライナ派リスト作成
報告書の主執筆者ジャック・ワトリング氏は、ロシア政府に極秘情報を渡したとされるドイツ情報機関の高官が最近逮捕されたと指摘している。
報告書は、「ロシアの特殊機関が侵攻前にウクライナで、大規模な諜報員ネットワークを形成していたこと、そして侵攻後もその支援体制の大半が存続し、ロシア軍に対し、人による諜報活動によって情報が安定供給されていることは明らかだ」と書いている。
ロシア諜報機関のFSBは、ウクライナ南部メリトポリなど、狙いを定めた都市に一時的な作戦グループを形成することで、情報提供を可能にした。
FSBはプーチン氏がかつて所属したソ連国家保安委員会(KGB)の後継組織。
ロシア軍が前進する中、FSBは現地本部からウクライナ政府の記録を入手し、コンピュータのハードディスクをダウンロード。ウクライナ政府関係者とその住所のリストを作成したとされる。
その後、家宅捜索を一軒一軒行い、複数の人が逮捕され、地下室で尋問を受けた。ワトリング氏は、拷問は情報を引き出す目的より、住民の抵抗心を削ぐための脅迫目的であることが多かったと指摘する。ウクライナで複数の人権侵害行為があったとの声が上がっているが、ロシア側は一貫して否定している。

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少なくとも800人のウクライナ当局者が、FSBへの協力を強いられた、あるいは進んで協力したとされる。
同じころ、電子戦部隊はロシア軍の占領下にある住民をさらに孤立させるため、ウクライナのテレビやラジオ、インターネットへのアクセスを遮断した。ワトリング氏によれば、FSBは一つの地域を制圧するには人口のわずか8%を支配すればいいと評価していた。
誤算も
全体的に見れば、数々の挫折を味わったロシア軍よりも、ロシアの諜報機関の方がウクライナで大きな成果を収めたといえる。
ただ、諜報活動でも失敗はあった。侵攻前にプーチン氏に伝えられた最初の評価では、ロシア軍はウクライナで歓迎され、ウクライナ政府はすぐに崩壊するとされていた。しかしこれは、ロシア政府にとって壊滅的な誤りだったことが、侵攻後に証明された。
「ロシアの特殊機関は、自分たちの取り組みを正確に報告するという誠実さに欠けている。自分の成功を過大報告し、弱点を上司に隠すという、システム的な問題があるようだ」と、報告書は書いている。
ワトリング氏はその例として、KGBの元スパイ、セルゲイ・スクリパリ氏の毒殺未遂事件の責任者だったロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の将校を挙げた。ロシアは2018年、英南部ソールズベリーで、スクリパリ氏を神経剤ノビチョクを使って殺害しようとした。
この作戦が明るみになり、容疑者が公表されたにもかかわらず、作戦の責任者だった将校は解任されるどころか昇進した。








