「エブリシング・エブリウェア~」が7冠、フレイザーさんは復活の受賞 アカデミー賞

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米アカデミー賞の授賞式が12日夜、ロサンゼルスで開かれ、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」が7部門で受賞した。主演のミシェル・ヨーさんは、アジア系として初めて主演女優賞を獲得した。
一般女性がマルチバースに巻き込まれて大活躍するこの映画は、主演女優賞のほかに、作品賞、監督賞、助演男優賞、助演女優賞、編集賞、脚本賞を得た。
名前を呼ばれて壇上に上がったヨーさんは、「私のような見た目で、今晩これを見ているすべての小さい男の子や女の子にとって、これは希望と可能性を示す光です」と述べ、オスカー像を掲げた。
「そして女性の皆さん、自分はもう旬が過ぎただなんて、誰にもそんなことを言わせてはなりません」。60歳になるヨーさんがこう強調すると、会場からは大きな歓声が沸いた。
今年度の映画賞レースでは、当初は「ター」で指揮者リディア・ターを演じたケイト・ブランシェットさんが主演女優賞に有力視されていたが、授賞式が近づくと、ヨーさんへの支持がうなぎのぼりに増していった。
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「これは、夢はかなうという証明です」と、ヨーさんは歴史的な受賞を喜んだ。映画でヨーさんは、コインランドリーを経営しながら家族との関係でいろいろな問題を抱える主婦エヴリンを演じる。エヴリンはいつしか、マルチバースに巻き込まれ、あらゆる時空で同時に存在する自分の力を利用して、宇宙を救うスーパーヒーローにならなくてはならない。
「(この受賞を)世界中のお母さんたちにささげなくてはなりません。みんなスーパーヒーローで、お母さんたちがいなければ、私たちは誰も今晩ここにいないので」とも、ヨーさんは述べた。
白人以外がアカデミー賞の主演女優賞を得るのは、2002年に「モンスターズ・ボール」でハリー・ベリーさんが受賞して以来、2人目。
カムバックの受賞

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主演男優賞は、「ザ・ホエール」でブレンダン・フレイザーさん(54)が受賞した。フレイザーさんは、約20年前には「ジャングル・ジョージ」や「ハムナプトラ」などのアクション大作で主演する大スターだったものの、その後は長年、出演作に恵まれずハリウッドのスポットライトを浴びずにいた。それだけに、今作での見事なカムバックが広く注目されていた。
オスカー像を手にしたフレイザーさんは、今作のダレン・アロノフスキー監督が「クリエイティブな命綱」を自分に投げてくれたと、涙ながらに感謝した。
「自分は30年前にこの業界に入って、いろいろ苦労してきたけれども、それがなくなるまでいかにありがたいことか分かっていなかったものがあった。今回こうして自分を認めてくれて、本当に感謝しています」と、フレイザーさんは続けた。
他の主演男優賞候補に対しては、「(観客が)みなさんの心の中をのぞきこめるよう、みなさんはそれぞれ、クジラ(ホエール)のように巨大な心を開いてくれた。ほかの人にはできないような形で。なのでこの部門で、皆さんと並んで自分が候補になったのは光栄なことでした」とエールを送った。
フレイザーさんは「ザ・ホエール」で、娘との関係を築きなおそうとする肥満体形の大学教授を演じた。フレイザーさんの外見を大きく作り替えたヘアメイクのチームもこの日、メイクアップ・ヘアスタイリング部門で受賞した。
難民ボートから始まった……涙のスピーチ

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「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」からは、キー・ホイ・クァンさんが助演男優賞を、ジェイミー・リー・カーティスさんが助演女優賞をそれぞれ受賞した。
ヴェトナム生まれのクァンさんも、フレイザーさんと同じようにカムバックを果たしたと、注目を集めていた。
ヨーさんの夫役を演じたクァンさんは、「夢は自分で信じないとなりません。僕は自分の夢を諦めそうになっていた」と泣きながらスピーチした。
クァンさんは子役として「グーニーズ」や「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」などのヒット作に出演した後、大人になってからは映画製作の道に進み、俳優としての活動を長く中断していた。
51歳になったクァンさんはオスカー像を手にして、「僕の母親は84歳で、自宅でこれを見ています。ママ、いまオスカーをとったよ。僕の旅はボートで始まりました。1年間、難民施設で過ごしました。それが今こうしてなんとかして、ハリウッドの最大のステージにいます。こんな物語は映画でしかありえないと言われるし、自分に起きていることだなんて信じられない。これこそ、これこそがアメリカン・ドリームです」と喜んだ。

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俳優になって45年のジェイミー・リー・カーティスさんも、初のオスカー受賞を涙ぐみながら喜んだ。
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」で、ヨーさん演じるエヴリンの前に立ちはだかる税務職員を演じたカーティスさんは壇上で、「ここに私1人で立っているように見えるでしょうけど、そうじゃないんです。私は何百人もの人なんです。この映画を作ったアーティスト集団全員が、私たちが、いまオスカーをとったんです」とスピーチした。

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「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」を作った、「ダニエルズ(2人のダニエル)」と呼ばれる、ダニエル・クワン監督とダニエル・シャイナート監督は、共同で監督賞と脚本賞を受賞。編集担当のポール・ロジャーズさんが編集賞を受賞した。作品賞はプロデューサーのジョナサン・ワンさんが受け取った。
第1次世界大戦の惨禍を描いた小説「西部戦線異状なし」を原作にした同名のネットフリックス映画は、国際長編映画賞、撮影賞、美術賞、作曲賞を受賞した。
ギレルモ・デル・トロ監督の「ピノキオ」は長編アニメ賞を、「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」の衣装を担当したルース・E・カーターさんは前作の「ブラックパンサー」に続いて衣装賞を受賞した。
イギリスからは「ぼく モグラ キツネ 馬」が短編アニメ賞を受賞。絵本作家チャーリー・マッケジーさんが自作をアニメ化したこの作品は、昨年のクリスマスにBBC Oneで放送された。
長編ドキュメンタリー賞は、ロシアのプーチン政権と対立し、今は刑務所に収監されている野党指導者アレクセイ・ナワリヌイさんが、2020年に毒をもられた事件を取り上げた「ナワリヌイ」が受賞。
ダニエル・ロアー監督はスピーチで、受賞をナワリヌイさんと世界中の政治犯にささげ、「アレクセイ、あなたが世界に向けた大事なメッセージを、世界は忘れていません」と呼びかけた。
一緒に登壇したナワリヌイさんの妻、ユリア・ナワリナヤさんは、「アレクセイ、あなたが自由になり、私たちの国が自由になる日を夢見ています。愛する人、がんばってください」と述べた。
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世界的な大ヒット作「トップガン マーヴェリック」は音響賞を受賞。インド映画として初めてアカデミー賞候補になったアクション大作「RRR」は、劇中のダンスバトルナンバー「ナートゥ・ナートゥ」で歌曲賞を受賞した。

司会者は昨年の「平手打ち」に言及

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今年の授賞式の司会は、アメリカの深夜トークショー司会で人気のコメディアン、ジミー・キメルさんが務めた。キメルさんの司会は2018年以来で3回目。
冒頭のモノローグでこの1年の映画界を振り返ったキメルさんは、「ハリウッドがネタ切れだと言われる。あまりにネタがないので、スティーヴン・スピルバーグがスティーヴン・スピルバーグについて映画を作る始末だ」と、作品賞などの候補だった「フェイブルマンズ」を念頭に笑いをとった。
「今年は多様性と包摂(ほうせつ)性にとって大事な年だった」と、キメルさんは続け、「ダブリンのあらゆる場所から候補が来ている」と冗談を飛ばした。アイルランドを舞台にした「イニシェリン島の精霊」からは、アイルランド人の俳優4人が主演部門と助演部門にノミネートされていた。
「アイルランドの俳優が5人もノミネートされているので、またステージ上でけんかざたになりそうだ」ともキメルさんは述べ、昨年の式典で俳優ウィル・スミスさんがプレゼンターのクリス・ロックさんを平手打ちした問題に言及した。昨年の授賞式では、ロックさんをたたいた直後のスミスさんが主演男優賞を獲得した。
「今日ここで誰かが番組中に暴力行為をはたらいたら、その人には主演男優賞を与えて、19分間じっくりスピーチさせてあげます」とキメルさんが皮肉を言うと、会場からは笑いが起きた。
「でもまじめな話、アカデミーは危機対策チームを用意しているので。何か予想外のことや暴力的なことが式典の最中に起きたら、みんなじっとそこに座って、なにもしないでください。暴漢をハグするのもいいかもしれない」と、さらにキメルさんは昨年の会場の様子を皮肉り、冗談を続けた。
ヒュー・グラント的ユーモア

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司会者と並ぶくらい笑いを誘ったのは、美術賞のプレゼンターとして登場した英俳優ヒュー・グラントさんだった。
1994年の大ヒット作「フォー・ウェディング」で共演したアンディー・マクダウェルさんと並んで登壇すると、グラントさんは「私たちが登場した目的は2つあります。第一に、良い保湿剤がいかに大事か啓蒙することです。アンディーはこの29年間、良い保湿剤を毎日使い続けてきました。私は一度も使ったことがありません」と発言。
グラントさんは続けてマクダウェルさんを「今もすごくきれいだ」とほめる一方、片や自分は「要するに陰囊(いんのう)だ」と断言。会場の人々を爆笑させた。








