ろうの家族描く「コーダ」が作品賞、「ドライブ・マイ・カー」は国際長編映画賞 米アカデミー賞

Coda's Marlee Matlin and Troy Kotsur

画像提供, Getty Images

画像説明, ろうの男性俳優として初めてアカデミー賞を得たトロイ・コッツァーさん(右)と共演者のマーリー・マトリンさん(27日、米ロサンゼルス)

米ロサンゼルスで27日、第94回アカデミー賞の授賞式が開かれ、聴覚障害の家族の中で育った聴者の若者を描いた「コーダ」が作品賞を得た。村上春樹さん原作で濱口竜介監督による「ドライブ・マイ・カー」は、国際長編映画賞に選ばれた。

「ドライブ・マイ・カー」で国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督

画像提供, Reuters

画像説明, 「ドライブ・マイ・カー」で国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督

西島秀俊さん主演で、美しい風景と多国籍のキャストを通じて人の喪失と回復を描いた「ドライブ・マイ・カー」が、国際長編映画賞を受賞した。濱口監督はオスカー像を手にすると、「ありがとうございます。あなたがオスカーですね」と英語で語りかけた。

NHKなどによると、受賞後の記者会見では、「(他のノミネート作品には)本当に素晴らしいものがそろっていたので、この中で賞をとれたのは本当に驚くべきことだし、だからこそ喜ぶべきことだと思っています」と述べた。作品がアメリカで受け入れられた理由については、新型コロナウイルスで大勢が亡くなった状況もあるだけに、「そのことが喪失と、そこからどう生きていくかを描いた物語と、響き合うところがあったのではないか」と話した。

Jane Campion with her Oscar

画像提供, EPA

画像説明, 「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のカンピオン監督は、1994年の「ピアノ・レッスン」に次ぐ2度目の監督賞を得た

「コーダ」はアップルTVが配給権を得て配信した作品。配信作品がアカデミー賞の作品賞を得るのは初めて。ネットフリックス配信でジェーン・カンピオン監督の西部劇「パワー・オブ・ザ・ドッグ」は作品賞など12部門でノミネートされていたが、受賞は監督賞のみにとどまった。カンピオン監督にとっては2度目の監督賞となった。

「コーダ」の原題「CODA」は、「ろうの成人の子供(Children of Deaf Adults)」の頭文字をとったもの。低予算の独立系映画が、実際に聴覚障害の俳優を通じて、ろうの家族を的確に温かく描いたと評価されている。キャストには、35年前に「愛は静けさの中に」でろうの俳優として初めてアカデミー賞の主演女優賞を得たマーリー・マトリンさんや、今回ろうの男性俳優として初めてアカデミー賞を得たトロイ・コッツァーさんが参加した。

通訳を通じて受賞スピーチをしたコッツァーさんは、自分の受賞を「ろうのコミュニティー、CODAのコミュニティー、そして障がい者のコミュニティーに」捧げる」と述べ、「今こそ僕たちの時だ」と呼びかけた。

Emilia Jones with her Coda co-stars

画像提供, Reuters

画像説明, 「コーダ」の出演者たち。抱きかかえられているのが、主役ルビーを演じたイギリス出身のエミリア・ジョーンズさん

「コーダ」で17歳のルビー役を演じたイギリス出身のエミリア・ジョーンズさんは、BBCに対して「信じられません」と作品賞受賞を喜んだ。「本当に。『コーダ』と呼ばれたとき、みんな誰も信じられなくて。だって私たちの作品は、大本命とは程遠いけど成功した、小さい独立系映画なので。この映画を見て、大好きになって、支えてくれたすべての人に、心から感謝します」と述べた。

助演女優賞には、スティーヴン・スピルバーグ監督によるリメイク版「ウェスト・サイド・ストーリー」から、アニータ役のマリアナ・デボーズさんが選ばれた。

主演女優賞は、アメリカのテレビ伝道師タミー・フェイを描いた「タミー・フェイの瞳」から、ジェシカ・チャステインさんが受賞した。

Ariana DeBose (left) and Jessica Chastain with Troy Kotsur and their Oscars

画像提供, EPA

画像説明, 左から、助演女優賞のデボーズさん、助演男優賞のコッツァーさん、主演女優賞のチャステインさん

主演男優賞は、テニスのセリーナとヴィーナス・ウィリアムズ姉妹を育てたリチャード・ウィリアムズを描いた「King Richard」(邦題「ドリームプラン」)の演技で、ウィル・スミスさんが獲得した。

これに先立ちスミスさんは、コメディアンのクリス・ロックさんに妻の髪形をからかわれた後、壇上のロックさんを平手打ちし、その後も座席から放送禁止の罵倒語を繰り返した。スミスさんの妻、ジェイダ・ピンケット=スミスさんは、脱毛症と闘っていることを公表している。

<関連記事>

生放送していたABCが中継を一時中断するほどの騒ぎのあと、主演男優賞に選ばれたスミスさんは、「アカデミーに謝りたい。ほかの候補者全員に謝りたい」と述べた。

さらにスミスさんは、涙を流しながら、「芸術は人生を模倣する。リチャード・ウィリアムズをみんながあの父親は頭がおかしいと言ったのと同じで、今の自分もそう見えているんだろう。でも愛は人に、とんでもない狂ったまねをさせる」と話した。

ウィル・スミスさんがクリス・ロックさんをたたいた瞬間

画像提供, Reuters

画像説明, ウィル・スミスさんがクリス・ロックさんをたたいた瞬間

最多受賞作はSF大作「DUNE/デューン 砂の惑星」で、6部門で受賞した。イギリスからは、サー・ケネス・ブラナーが自分の生まれ故郷と子供時代を描いた「ベルファスト」で脚本賞を受賞。サー・ケネスにとって初のオスカー(アカデミー賞)受賞となった。

Sir Kenneth Branagh with his Oscar

画像提供, EPA

画像説明, サー・ケネス・ブラナーは、自分の子供時代を描いた「ベルファスト」で自身初のアカデミー賞となる脚本賞を受賞した

イギリスからはほかに、リズ・アーメドさんの「The Long Goodbye」が短編実写映画賞、「クルエラ」でジェニー・ベヴァンさんが衣装賞を得た。

授賞式では多くのスターが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が中心となっているキャンペーンに賛同し、「#WithRefugees(難民と共に)」と書かれた青いリボンを身に着け、軍事侵攻を受けるウクライナの人たちへの連帯を示した。

授賞式の最中には、「自分たちの国境内で侵攻と紛争と差別に直面するウクライナの人たちへの支援を示す」ため、黙とうをささげる場面もあった。