ロシアの人権団体代表、ノーベル平和賞を断るよう政府に言われたと
チャーリー・ヘインズ、ルーシー・ポール BBC番組「ハードトーク」

今年のノーベル平和賞を受賞したロシアの人権団体「メモリアル」の代表が、ロシア政府に受賞を断るよう指示されたとBBCに話した。平和賞は「メモリアル」と並んで、ベラルーシの人権活動家アレシ・ビャリャツキ氏(60)、ウクライナの人権団体「市民自由センター(CCL)」が共同受賞した。
「メモリアル」はソヴィエト連邦時代に暗殺、投獄、迫害されるなどした何百万人もの無実の人の記録を回復するため活動していた、ロシアで最も古い人権団体のひとつだが、2021年12月にロシア最高裁が解散を命令した。
その「メモリアル」のヤン・ラチンスキー代表は、ノーベル平和賞受賞の発表後、ロシア政府から受賞を拒否するよう指示されたと、BBC番組「ハードトーク」の単独インタビューで話した。理由は、共同受賞したウクライナの人権団体と、ベラルーシの人権活動家が、「不適切」だからだと言われたという。
ラチンスキー氏はBBCに対して、「もちろんそのような助言はまったく無視した」と話した。
BBCはロシア外務省にコメントを求めている。
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ラチンスキー氏は、脅迫を受け続けており身の危険を感じているが、「メモリアル」の仕事は不可欠だと強調した。
「今のロシアでは、身の安全が保証されている人間など誰もいない」、「確かに大勢が殺されてきた。しかし、国家が何のとがめもなく好き勝手に行動できるなら、どういうことになるかは分かっている。私たちは何とかしてこの穴から脱出しなくてはならない」と、ラチンスキー氏は述べた。
ソ連による市民弾圧を記録してきた「メモリアル」の初代代表、アルセニー・ロギンスキー氏は、当時の政府に「反共産主義的」な歴史研究を理由に強制労働収容所に送られた。
今年10月に平和賞受賞者を発表したノルウェー・ノーベル委員会は、「過去の犯罪に直面することは、新しい犯罪を阻止するために不可欠」だという考えをもとに「メモリアル」が創設されたと説明した。
ラチンスキー氏は、ロシア、ベラルーシ、ウクライナの3カ国の人権活動家や団体に平和賞を同時に授けるという、ノーベル委員会の判断は「素晴らしい」ものだと評価。「市民社会は国境で分けられるものではなく、共通の問題を解決するためまとまって取り組んでいるひとつの存在」なのだと証明する選考だったと述べた。

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しかし、ロシアの団体を共同受賞に含めたことには異論もある。
「メモリアル」と共にノーベル平和賞を共同受賞したウクライナの人権団体「市民自由センター(CCL)」のオレクサンドラ・マトヴィチュク代表は、ラチンスキー氏と一緒にインタビューを受けることを拒否した。BBCはオスロで、2人を別々に取材した。
なぜ別々のインタビューを希望したのか質問すると、マトヴィチュク氏はBBC「ハードトーク」に対して、「いま私たちは戦時下にあって、ウクライナの人権活動家の声を具体的にはっきりさせたかった」からだと話した。
「別々にインタビューを受けても、私たちは同じメッセージを発信するはずだ」
CCLは、ウクライナでの民主政治推進と、ロシアによる戦争犯罪とされる行為を特定する活動が評価された。
マトヴィチュク氏は合同インタビューを拒否したものの、ラチンスキー氏の業績を評価し、「メモリアル」を「私たちのパートナー」と呼んだ。
マトヴィチュク氏は、「メモリアル」がもう何年も自分たちCCLを支援してくれたと話し、厳しい状況で人権のために働く「すべてのロシアの人権活動家を大いに尊敬している」と述べた。
マトヴィチュク氏はさらに、ロシアによる犯罪を適切に追及していかなくては、東欧に平和は訪れないと警告。
同氏は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領をはじめとするロシア人がウクライナに対して行った行動を裁くには、現在の体制では不十分だとして、新しい国際法廷の設置を呼びかけた。
「戦争犯罪の犠牲になった数十万人のため、いったい誰が正義を実現するのか。それが問題だ」と、マトヴィチュク氏は述べた。
マトヴィチュク氏はさらに、ロシアが地政学上の目的を果たす道具として戦争を駆使し、その戦争に勝つために戦争犯罪を犯していると非難した。
「メモリアル」およびCCLと共に、今年のノーベル平和賞を受賞したベラルーシの人権活動家、ビャリャツキ氏は現在、公判を受けられないままベラルーシ国内で勾留中。ベラルーシで1994年以来、独裁を続けるアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が、市民の抗議行動を強権的に抑圧したのを受けて、1996年に人権団体「ヴィアスナ(春)」を設立した。
「(ビャリャツキ氏は)自分の国で民主主義と平和的発展を推進するため、人生をささげてきた」と、ノーベル委員会は授賞理由を説明した。
ビャリャツキ氏は2011年から2014年にかけて、脱税容疑で逮捕され、収監された。同氏は容疑を一貫して否認している。
ビャリャツキ氏についてマトヴィチュク氏は、「非常に勇敢な人なので、刑務所の中からでもこの戦いを続けるはずだ」と話した。

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