ノーベル平和賞はベラルーシの人権活動家、ウクライナとロシアの人権団体に

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ノルウェー・ノーベル委員会は7日午前11時(日本時間同日午後6時)、今年の平和賞を、ベラルーシの人権活動家アレシ・ビャリャツキ氏(60)、ロシアの人権団体「メモリアル」、ならびにウクライナの人権団体「市民自由センター(CCL)」に授与すると発表した。
ノルウェー・ノーベル委員会のベリト・ライスアンデシェン委員長は会見で、今年の平和賞の受賞者はベラルーシ、ロシア、ウクライナにおいて「人権と民主主義と平和的共存の優れた推進者」として活動してきたと授賞理由を説明した。
委員長はまた、受賞者について、「平和と民主主義にとって市民社会がいかに重要か示し」、「権力を批判する権利と市民の基本的権利を守ること」の重要性も示したほか、「戦争犯罪や人権侵害、権力の乱用」を記録してきたとたたえた。
さらに、受賞者はノーベル賞の創設者アルフレッド・ノーベルが掲げた、国同士の「平和と友愛」のビジョンを尊重したことが評価されたと委員長は述べ、「今の世界で特に必要とされているビジョンだ」と強調した。
勾留中の人権活動家

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受賞したベラルーシの人権活動家、ビャリャツキ氏は現在、公判を控えて勾留中。ベラルーシで1994年以来、独裁を続けるアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が、市民の抗議行動を強権的に抑圧したのを受けて、1996年に人権団体「ヴィアスナ(春)」を設立した。
「(ビャリャツキ氏は)自分の国で民主主義と平和的発展を推進するため、人生をささげてきた」と、ノーベル委員会は授賞理由を説明した。
ビャリャツキ氏は2011年から2014年にかけて、脱税容疑で逮捕され、収監された。同氏は容疑を一貫して否認している。
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2020年にルカシェンコ氏の大統領選「6選」を不正だと非難する抗議デモが国内各地で相次いだ際にも、ビャリャツキ氏は再び拘束された。ルカシェンコ氏の「6選」については、ベラルーシ野党だけでなく、独立監視団も不正選挙だったと批判している。
ノーベル委員会のライスアンデシェン委員長は、ベラルーシにおける「人権のための闘いで(ビャリャツキ氏は)一歩たりとも引いていない」とたたえた。
ビャリャツキ氏の妻ナタリア・ピンチュク氏はAFP通信に対して、ノーベル平和賞受賞の知らせに「感極まっている」と話し、「アレスと彼の仲間や組織の働きを認めてくれて、ノーベル委員会と国際社会に深く感謝する」と述べた。
ロシアは受賞した「メモリアル」を昨年閉鎖

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受賞したロシアの「メモリアル」はロシアで最も古い人権団体の一つで、1989年の創設以降、ソヴィエト連邦時代に暗殺、投獄、迫害されるなどした何百万人もの無実の人の記録を回復するため、活動していた。
ロシア当局は「メモリアル」が外国から資金提供を受けていることを理由に、2016年に同団体を「外国のエージェント(代理人)」に指定。ロシア最高裁は2021年12月28日に、解散を命じた。「メモリアル」がソーシャルメディアの複数投稿に、自分たちは「外国のエージェント」だと明記しなかったことが法律違反だというのが、その理由だった。
「メモリアル」のドイツ支部はロイター通信に対して、「言語道断の攻撃や報復」を前に人権のために取り組んできたロシアの仲間たちの、努力が認められたとコメントした。
「モスクワのメモリアル・インターナショナルは強制的に解散させられたものの、ロシアの仲間たちが別の場所で活動を続けられるよう、我々は何としてでも支援していくし、(ノーベル平和賞の受賞は)その励みになる」と、同団体ドイツ支部は述べた。
ロシアの人権侵害を記録するウクライナ団体も受賞
同様に受賞したウクライナの「市民自由センター(CCL)」は受賞の知らせを受けて、「ノーベル平和賞を受賞して誇りに思う。ウクライナと、ウクライナだけでなくそれ以外の、多くの人権活動家の働きが認められた」とツイートした。

2007年に発足したCCLはウクライナ有数の人権団体。旧ソ連圏の9カ国から人権団体のリーダーが集まり、キーウに国境を越えた支援センターを作ることにしたのが、始まりだった。
それ以来CCLは、ロシアが2014年に併合したクリミアでの政治的抑圧を記録するほか、ウクライナ東部ドンバス地方での戦争犯罪や人道に対する犯罪の事案を記録。ロシア政府が投獄する政治犯の釈放を求めて、国際的な運動も推進してきた。
ロシアが今年2月にウクライナ侵攻を開始してからは、ウクライナ民間人へのロシアの戦争犯罪を特定し、記録する作業を続けてきた。

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「反プーチンではない」と委員長
受賞した1人と2団体を発表したライスアンデシェン委員長は記者団に、今年の選考結果はロシアのウラジーミル・プーチン大統領へのメッセージなのかと質問された。
それに対して委員長は、平和の手助けをする人たちを選んだのだと説明。ノーベル委員会が「プーチン大統領に、今日が誕生日だから何かを言おうとしたとか、そのほかの理由で彼に何かを言おうとした」わけではないと答えた。
平和賞は「誰かに反対する」ために授与するものではなく、前向きな行為をたたえるためのものだとも話した。
委員長はさらに、「プーチン大統領が自らに注目を集める中で、この文脈で関連するのは、市民社会と人権活動家が抑圧されているという部分だ」と述べ、「この賞において言及したいのはそこです」と話した。







