イギリス財務相、増税や財政支出削減を発表 秋期財政報告書

画像提供, Jessica Taylor/UK Parliament
イギリスのジェレミー・ハント財務相は17日、英下院で秋期財政報告書を発表し、財政状態を改善する緊急対策として、数十億ポンド相当の増税や財政支出削減を実施すると明らかにした。
ハント財務相は1時間あまりかけて、増税と支出削減によって、インフレを抑制できるとの見方を下院に示した。
ハント氏は、わずか55日前に前任者のクワジ・クワーテング前財務相が発表した、「ミニ・バジェット」と呼ばれる減税策のほとんどを撤回した。
財務相が発表した主な経済対策は次の通り。
- 納税額の上限導入は2028年4月まで凍結される。このため、数百万人の納税額が増えることになる。
- イングランドでは公的サービス支出の増額ペースが当初予定より遅れる。省庁の部門によっては、2024年に予定される次期総選挙の後に予算が削減される。
- 公的年金支給額の伸び率をインフレ率、賃金上昇率、2.5%の3つの指標のうち最も高いものとする「トリプルロック」制度は、維持される。このため年金生活者の毎週の受給額は10.1%増える。
- 各家庭の光熱費上限の期限は来年4月から1年間、延長された。ただし、その内容は前より厳しくなり、標準世帯の年間光熱費の上限は2500ポンドから、3000ポンドに引き上げられる。
- 「特に弱い立場」にある人たちへの生活補助金は増額され、就労不能給付を受けている人は900ポンド、年金生活者は300ポンド、多く受け取ることになる。
- 所得税の最高税率45%は、年収15万ポンドではなく12万5140ポンドがその課税対象になる。
- 23歳以上の人への最低賃金は、時給9.50ポンドから10.42ポンドに引き上げられる。
- 石油・ガス会社への超過利潤税の税率は、現行25%から35%に引き上げられる。これによって、2028年まで年間税収は550億ポンド増える見通し。
ハント財務相はさらに、今後2年間でイングランドの学校や国民保健サービス(NHS)、社会福祉の予算を増額すると述べた。
2024年に予定される総選挙までは家計支援が強化されるものの、2025年以降には公的支出の削減が進むという内容になっていると、BBCのファイサル・イスラム経済編集長は説明する。
1年余り続く景気後退の予想
秋期財政報告書に伴い、政府の予算責任局(OBR)は経済・財政見通しを発表。今後18カ月で平均世帯収入は7%以上、減少するとしている。
OBRは、高いインフレ率と金利上昇で、消費者支出は減り、イギリス経済は「1年余り続く」景気後退に入るとの見方を示した。イギリス経済は2023年に1.4%縮小した後、ゆっくりと成長基調に戻るとしている。
さらに、財務相の増税と支出削減措置による、納税者の税負担は第2次世界大戦の終戦以降、最高レベルに達するとの見通しを示した。
財務相の発表を受けて、最大野党・労働党は、財務相が「ステルス税」でこっそり国民の収入を取り上げようとしていると批判。レイチェル・リーヴス影の財務相は、ハント氏の対策は、リズ・トラス前首相が作り出した「悲惨な経済の目録」のようなものだとも述べた。
「景気後退を悪化させたくない」
下院での報告後、ハント氏はBBCのクリス・メイソン政治編集長に対して、この財政計画はインフレ率を引き下げながら、公的サービスを保護するものだと話した。
「国中で現在、多くの家庭が本当に大変な状態に直面している。これからも大変になるし、そんなことはないというふりをするつもりもないが、計画はあるし、希望もある。この計画にしっかり沿って行動すれば、大変な状態の向こう側に出られる」と、財務相は述べた。
「分別をもって対応していく必要がある。景気後退をこれ以上悪化させたくはない」
ハント氏は、増税や公的支出の削減は、トラス前首相の「ミニ・バジェット」による混乱が原因で、余儀なくされたものかという質問には、これを否定。確かに複数の間違いはあったものの、政府は間違いを「数週間で是正した」と強調した。
さらに、ドイツ、フランス、アメリカなどの国々も、ウクライナでの戦争とエネルギー価格高騰の影響で、イギリスと似た問題に直面しているのだと主張した。
他方、政府省庁の予算削減も今後予定しており、困難な決断を先送りしたわけではないと述べた。










