キーウ中心部などウクライナ各地へ砲撃、全国で約70人死傷と 電力施設などに被害

動画説明, ウクライナ首都キーウで爆発 BBC記者の生中継中

ウクライナの首都キーウで10日午前8時過ぎから、複数の砲撃と爆発が相次いだ。ウクライナ当局によると、少なくとも民間人11人が死亡し、60人が負傷した。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、キーウのほかにも、南東部ザポリッジャ、北東部ハルキウ、中部ドニプロ、西部リヴィウなどで、電力施設が攻撃されたと明らかにした。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は同日、砲撃を認めた。

ウクライナの緊急事態庁によると、ロシアの砲撃で少なくとも11人が死亡した。そのうち8人はキーウで死亡したという。さらにウクライナの国家警察によると、全国で約60人が負傷した。

キーウで取材するBBCのヒューゴ・バシェーガ記者によると、午後4時過ぎにも空襲警報が市内で響いたという。

プーチン氏、砲撃認める

ロシアのプーチン大統領は同日午後1時すぎ、ウクライナの複数の標的を長距離ミサイルで砲撃したことを認めた。

プーチン氏はビデオ演説で、長距離ミサイルでエネルギー、軍事、通信施設を破壊したと述べ、ロシア領土へこれ以上「テロ行為」が続けば、「厳しく」反応すると述べた。

8日朝には、ロシア本土と同国が併合したクリミア半島をつなぐ橋で爆発があった。プーチン大統領は9日、ウクライナによる「テロ行為」だと非難していた。

プーチン氏は橋での爆発について、「これがロシアの重要な公共インフラの破壊を狙ったテロ行為であることに疑いはない」と述べ、「立案し、実行し、利益を得るのは、ウクライナの保安当局だ」としていた。

プーチン氏は10日のうちにロシア連邦安全保障会議を招集し、クリミア橋での爆発について協議する見通し。

83発のうち43発以上は撃墜とウクライナ軍

ウクライナ内務省のロスティスラフ・スミルノフ顧問は、キーウへの攻撃で民間人8人が死亡し24人が負傷したと、フェイスブックに書いた。攻撃で車両6台が炎上し、15台が破損したという。

ウクライナ軍は、ロシアが朝からこれまでにミサイル83発をウクライナに向けて発射したものの、そのうち43発以上を防空システムで撃墜したと明らかにした。空軍のユーリ・イーナト報道官によると、ロシアはカスピ海と黒海から、「カリブル」、「イスカンデル」、「Kh-101」などのミサイルを発射したという。

BBCのバシェーガ記者が10日朝にキーウのホテル屋上から生中継中、上空を通過し背後で爆発したのも、そうしたミサイルの一つと思われる。

キーウで取材するBBCのポール・アダムス外交担当編集委員によると、午前8時前から空襲警報が続き、砲撃が絶え間なく続いた。最初の数発は首都中心部を直撃。2月24日にロシアのウクライナ侵攻が始まって以来、首都中心部が被害に遭うのは初めてだとアダムス記者は指摘する。

キーウのヴィタリ・クリチコ市長によると、中心部シェフチェンキウスキー地区が被害に遭った。「重要インフラ」が被害を受けたという。

エネルギー・インフラが標的=ゼレンスキー大統領

ゼレンスキー大統領は10日午前、キーウの大統領外から国民に向けて演説し、通信アプリ「テレグラム」に投稿した

画像提供, Volodymyr Zelensky/Telegram

画像説明, ゼレンスキー大統領は10日午前、キーウの大統領外から国民に向けて演説し、ソーシャルメディアに投稿した

ウクライナのゼレンスキー大統領は通信アプリ「テレグラム」で、キーウのほか南部ザポリッジャ、中部ドニプロが砲撃されているとして、ロシアは「我々を破壊し、地球上から消滅させようとしている」と非難した。大統領は「残念ながら、死傷者がいる」として、国民に防空シェルターにとどまるよう呼びかけた。

ゼレンスキー氏はロシアがウクライナ各地のエネルギー・インフラを標的にしていると非難。「(ロシアは)パニックとカオスを作り出そうとしている。我々のエネルギー供給体制を破壊したいのだ。なんの望みもない、どうしようもない連中だ」と述べた。これまでにキーウ、リヴィウ、ドニプロ、ヴィンニツィア、ザポリッジャ、ハルキウなど各地で、電力施設が攻撃されたという。

大統領は、ロシアの2つ目の標的は人間だとして、「このタイミングでのこの標的は、最大限の破壊をもたらすために特別に選ばれたものだ」と述べ、「私たちはウクライナ人だ。お互いを助ける。自分を信じる。破壊されたものはすべて修復される。いまは一時的に停電するかもしれないが、私たちの自信、勝利への自信は決して停止しない」、「決して忘れないで。この敵が現れる前からウクライナは存在したし、ウクライナはこの敵の後にも存在し続ける」と強調した。

炎上する車両(10日、キーウ)

画像提供, Reuters

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injured people

画像提供, Getty Images

ウクライナのオレクシー・レズニコフ国防相は、「テロリストのミサイルがたとえ首都の中心を砲撃しようとも、この国の勇気をくじくことは決してできない」、「テロリストのミサイルが不可逆に破壊できるのは、ロシアの未来だけ。世界的に唾棄(だき)されている、ならず者テロ国家の未来だけだ」とコメントした。

ミサイルが落下した公園(10日、キーウ)

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ミハイロ・ポドリャク大統領顧問は、首都キーウ中心部や南部ザポリッジャ、中部ドニプロへの市街地への「意図的な攻撃」は「クレムリンがテロリストとして無能」だと示すのみで、「ロシアは戦場で戦うことはできないが、民間人を殺すことはできる」と非難したうえで、「話をするより我々には防空システムや多連装ロケットシステム(MLRS)、長距離ミサイルが必要だ」と、西側諸国にいっそうの武器供与を求めた。

キーウで2019年に開通した歩行者・自転車用の「クリチコ橋」も破壊された

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ウクライナ各地で停電や断水

これまでウクライナではキーウのほか、北東部ハルキウ、中部ドニプロ、南部ザポリッジャ、ポーランド国境に近い西部リヴィウでも、砲撃が続いているようす。

リヴィウのアンドリイ・サドヴィ知事は住民に、防空シェルターにとどまるようよびかけ、学校の授業は空襲警報が終わったあとにオンラインで始めると述べた。市内の一部で停電しているほか、火力発電所が稼働を停止しているという。

北東部ハルキウでは、ミサイル砲3発の砲撃があり、エネルギーインフラが破壊されたとイホル・テレホフ市長が「テレグラム」に書いた。市内の一部で停電や断水が起きているという。

Ukraine
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「戦争犯罪」の非難相次ぐ

欧州連合(EU)は、ロシアがウクライナの民間人を「無差別」に攻撃したことを、「戦争犯罪」と呼んで非難した。

欧州委員会は、「野蛮で卑怯」な攻撃だと批判。ペーター・スタノ報道官は、民間人と公共インフラ施設への「凶悪」な攻撃を「これ以上ないというくらい強く」非難すると述べた。

イギリスのジェイムズ・クレヴァリー外相は、民間人へのロシアの攻撃は「受け入れがたい」もので、「プーチンは強さではなく弱さを示した」と批判した。

ポーランドのズビグニェフ・ラウ外相は、ロシアによるミサイル砲撃を「蛮行で戦争犯罪だ」と非難し、「ロシアはこの戦争に勝てない。ウクライナ、私たちはみなさんを支えている!」とツイートした

フランス政府によると、エマニュエル・マクロン大統領はゼレンスキー大統領と緊急に電話会談を行い、ウクライナへの支持をあらためて伝えるとともに、民間人の死傷を「深く心配している」と伝えた。

ドイツ政府によると、オラフ・ショルツ首相もゼレンスキー大統領と電話で会談し、ドイツをはじめとする主要7カ国(G7)の支持継続を約束した。ドイツは現在、輪番制のG7議長国。

ドイツ外務省によると、ドイツ領事部の入る建物もロシアの砲撃で損傷したという。ただし開戦以降、領事部のこの査証発行事務所は使用されておらず、ドイツ大使館職員に負傷者はないと、ドイツ外務省はツイートした

ゼレンスキー大統領はツイッターで、G7の緊急会合を開くことでショルツ首相と合意したと書き、自分もそこで「ロシア連邦によるテロ攻撃について発言する」と明らかにした。さらにロシアへの圧力強化と、損傷したインフラ修復のための支援強化についても、ショルツ首相と協議したという。

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ロシア主戦派が強力な反撃要求

これに先立ち南東部ザポリッジャでは9日、ロシアのミサイル攻撃があり、少なくとも13人が死亡、数十人が負傷している。

ロシア国防省は8日、ウクライナでの軍事作戦を統括する司令官に、航空宇宙軍のセルゲイ・スロヴィキン総司令官を任命したと発表している。

動画説明, クリミアとロシアを結ぶ唯一の橋、爆発の瞬間
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BBCのサラ・レインズフォード東欧特派員は、「今日はスロヴィキン将軍の着任初日だった」と指摘。「国営テレビのプロパガンダ推進者や他のプーチン信奉者は依然から、冬にウクライナを凍えさせて屈服させるため、ウクライナのエネルギー・インフラを攻撃するよう呼びかけていた」と説明する。

「その一人のウラジーミル・ソロヴィヨフは、『いつ戦い始めるのか』と問いただし、『笑いものにされるよりは恐れられたほうがいい』と宣言していた」

「朝のラッシュ時に公園や往来に直撃した今回の砲撃を、彼らはたたえている。ロシアの国営テレビRTのマルガリータ・シモニャン編集長は、クリミア橋の攻撃をロシアにとっての『越えてはならない一線』だったとして、それに対する『私たちのささやかな反応』が着地したのだと書いている」と、レインズフォード記者は説明している。