イギリスの成長率見通し、G7で最低に ウクライナ侵攻が世界経済に影響=IMF

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国際通貨基金(IMF)は19日に発表した世界経済見通しの中で、ウクライナでの戦争が世界経済の回復を「著しく後退させる」と述べた。紛争によって食料や燃料の価格が上昇し、世界的に成長が鈍化すると予想。中でも、イギリスが最も大きな打撃を受けるとしている。
IMFは今回、2022年の世界経済成長率見通しを3.6%と、1月予想から0.8ポイント下方修正した。2023年についても同0.2ポイント下げ、3.6%で横ばいになるとみている。
イギリスの成長率見通しも、2022年は1月予想より1ポイント低い3.7%、2023年は同1.1ポント下げてわずか1.2%になると、それぞれ変更された。
これにより、イギリスは主要7カ国(G7)で最も経済成長のスピードが速い国ではなくなる。2023年には、最も成長が鈍化した国になる。
IMFによると、イギリスでは物価の上昇圧力により家計が支出を抑制するほか、金利の上昇で「投資が冷え込む」ことが予想される。
世界銀行も先に、世界経済の成長率の見通しを4.1%から3.2%に下方修正した。
物価上昇、利上げ、ブレグジット
2023年のイギリスの経済成長率の見通しは、中国やインドを含む主要20カ国(G20)の枠組みの中でも、重い制裁を科されているロシアの次に小さい値だ。
IMFの統計では、イギリスは2021年にはG7内で最も経済成長が著しい国だった。2022年も、これまでは2位になると予想されていた。
2023年の経済成長が鈍化する一因としては、イギリスがG7の他の国よりも早く、新型コロナウイルスのパンデミックから回復していたことが挙げられる。
一方で、イギリスは高いインフレ率に悩まされており、実質所得の縮小によって消費が減ることで、2023年の成長に打撃が出るという。IMFは、イギリスのインフレ率は今年後半に9%に達するとみている。
また、利上げが経済成長を鈍化させるほか、政府の一部税制優遇措置の撤廃方針が投資の縮小につながるとしている。
IMFはさらに、イギリスの欧州連合(EU)離脱が輸出の成長を阻害していると指摘。移民が減っていることで、パンデミックに関連した労働力不足が「著しく」悪化し続けるだろうと予測した。
IMFの広報担当者は、「しかし、ブレグジットの影響は数年にわたっており、2023年の成長鈍化の主要因ではない」と述べている。
戦争の影響は他国にも波及
戦争はすでに、ウクライナとロシアの経済に壊滅的な影響を与えている。ロシアについては侵攻開始後、西側諸国が制裁として、主要な貿易や金融ネットワークを遮断した。
IMFによると、ウクライナ経済は今年、少なくとも35%縮小する見通し。ロシアは8.5%のマイナス成長となると予想されている。
しかし、ロシアは世界の主要なエネルギー供給国であり、ウクライナと共に小麦の主要産地としても知られている。そのため、両国経済の後退は他国に影響を与えるとIMFは警告している。
「戦争の経済への影響は広範囲に及ぶ。震源地から広がっていく地震波のように」
たとえば経済的に両国とつながりの深いドイツでは、この戦争によって経済成長が1.7ポイント下がるとみられている。
しかし、直接的な貿易関係がほとんどない国々でも、中央銀行が急激なインフレ率上昇に利上げで対応することで、家庭でも戦争の影響を感じられるかもしれないとIMFは指摘している。
IMFはアメリカについて、より積極的な利上げの可能性があるとして、2022年の経済成長率の見通しを0.3ポイント下げて3.7%とした。

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インフレは「明確で差し迫った危険」
IMFは、多くの国でインフレが「明確で差し迫った危険」になっており、コロナウイルスの大流行による供給のひずみに、この状況が上乗せされていると述べた。
ピエール=オリヴィエ・グランシャ調査局長は今回の見通しの中で、「たった数週間のうちに、世界は再び大きな変革的衝撃を経験した」と書いている。
「パンデミックによる世界経済の崩壊からの持続的な回復が見えてきた矢先に、戦争によって、最近得た利益の大部分が帳消しにされるという極めて現実的な見通しが生まれた」
全体として、インフレ圧力は1月にIMFが前回の見通しを発表したときよりも大幅に悪化している。
現在では、「先進国」のインフレ率は今年5.7%に達し、新興国では8.7%に達する可能性があると予測している。
イギリスのインフレ率は、2023年に5.3%になると予想されている。これはG7で最も高く、すべてのEU加盟国よりも高い。G20では危機にひんしているアルゼンチンとトルコ、ロシアが上回るのみだ。
グランシャ調査局長は、「インフレは多くの国にとって明らかに危険な状態になっている」と書いている。
一方、石油輸出国など一部の国は恩恵を受けている。IMFは、たとえばサウジアラビアの経済成長は1月の予想よりも強くなるとみている。
しかし、こうしたリスクは純粋に経済的なものだけではない、とIMFは述べている。
IMFは、戦争は難民危機を生み出し、政治的緊張を悪化させ、「世界経済が、技術標準や国境を超えた決済システム、基軸通貨などの地政学的区画に、さらに永久に分断される」危険性があると指摘。
「こうした 『地殻変動』が長期的な効率低下を引き起こし、ボラティリティー(価格などの変動性)を増大させ、過去75年間、国際関係や経済関係を支配してきたルールベースの枠組みに対する大きな挑戦となるだろう」とした。

<解説>ファイサル・イスラム経済編集長
2つの深刻なショックが立て続けに世界経済に起こっている。パンデミックとウクライナ戦争だ。
後者は、前者が引き起こした問題に、さらに問題を積み上げた。健全な回復を阻み、さらに速いスピードで物価を上昇させている。
パンデミック後のサプライチェーンのボトルネックによって、食料とエネルギー価格が既に上昇していたところに、世界最大のエネルギー供給国の一つが、世界最大の食物輸出国の一つに侵攻したのだ。
しかし今、中国の一部の地域では、厳しい新型コロナウイルス対策の制限によって、新たなボトルネックが生まれつつある。
物価の上昇は、食料輸入に依存する貧しい国々の社会的安定を脅かす。
インフレが定着することへの懸念から、世界の中央銀行は金利の引き上げに動いている。その結果として多くの国で、パンデミック時に積み上げた記録的な債務のために、借り入れコストが上昇している。
こうした状況では、新旧の金融大国の間で、ある程度の技術と協力が必要になる。しかし、その技術と協力という物資もまた、近年では不足気味だ。











