ロシア政府、ジョンソン英首相ら英政府首脳の入国禁止 ウクライナめぐり

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ロシア政府は16日、ボリス・ジョンソン英首相をはじめ英政府首脳がウクライナ情勢をめぐりロシアに対して「敵対的」態度をとり、「反ロシアヒステリーをあおり立てている」と批判し、入国を禁止した。
ロシア政府は、ジョンソン首相のほか、リズ・トラス外相、ベン・ウォレス国防相など閣僚を中心に、計13人のイギリス政府関係者の入国を禁止すると発表した。ウクライナ侵攻開始以降にイギリス政府が発動した対ロ制裁への報復措置だとしている。
ロシア政府は3月、同様の入国禁止措置をアメリカのジョー・バイデン大統領に対しても発表している。
ロシア外務省は声明で、「イギリス政府は、ロシアを国際的に孤立させ、我が国を封じ込める状況を作り出し、ロシアの国内経済を逼迫(ひっぱく)させることを目的に、無軌道な情報戦、政治キャンペーンを展開している」と批判。「要するにイギリスの指導部はウクライナをめぐる状況を意図的に悪化させ、キエフの政権に殺傷力の高い武器をつぎ込み、北大西洋条約機構(NATO)の一員として同様の取り組みを調整している」とも述べた。
ウクライナの首都キーウを、ロシア語ではキエフと呼ぶ。
英外務省はまだロシア政府の発表に直接回答していないが、英政府報道官はロシアのウクライナ侵攻を非難する声明を発表。「イギリスと国際的なパートナーは共に連帯し、ロシア政府がウクライナで繰り広げるおぞましい行動を非難する。そしてロシア政府に対して、戦争をやめるよう呼びかける」と報道官は述べ、「私たちは引き続き断固としてウクライナを支持する」と強調した。
ロシアの入国禁止の対象になったイギリス政府関係者は次の通り。
- ボリス・ジョンソン首相
- リズ・トラス外相
- ベン・ウォレス国防相
- ドミニク・ラーブ司法相
- グラント・シャップス運輸相
- プリティ・パテル内務省
- リシ・スーナク財務相
- クワシ・カーテング・ビジネス・エネルギー・産業戦略相
- ナディーン・ドリス・デジタル・文化・スポーツ担当相
- ジェイムズ・ヒーピー国防閣外大臣
- ニコラ・スタージョン・スコットランド自治政府首相
- スエラ・ブレイヴァマン法務長官
- テリーザ・メイ前首相、保守党議員
ロシアの制裁対象に含まれたスコットランドのスタージョン自治政府首相は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を「戦争犯罪人」と呼び、「彼とその独裁政権を非難することを、決してためらったりしない」と強調した。
英首相、ゼレンスキー氏と電話
こうした中、ジョンソン首相はあらためてウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話で会談した。英首相官邸が16日、発表した
官邸によると、両首脳は主にウクライナ南東部の要衝マリウポリの状況について話し合った。ジョンソン首相はマリウポリでウクライナ側が果敢な抵抗を続けていることを称賛したという。
「首相はゼレンスキー大統領に対して、先週発動したイギリスの対ロ追加制裁について説明し、イギリスが今後も装甲車を含めウクライナの自衛手段を提供し続けると伝えた」と官邸は明らかにした。
ジョンソン首相は9日にウクライナの首都キーウを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と会談している。
軍事支援強める西側にロシア警告
イギリスやアメリカは今月に入り、ロシアへの追加制裁を相次ぎ発表している。両国を含むNATO加盟国は、ウクライナ国内への部隊派遣や飛行禁止区域の設定は対応として除外する一方、武器や砲弾などの軍事供与は続けている。アメリカのバイデン政権は12日にも、計8億ドル(約1000億円)の追加軍事支援を発表。追加支援には旧ソ連製ヘリコプター「Mi17」11機、自爆型ドローン「スイッチブレード」300機、携行型対戦車ミサイル「ジャベリン」500基などのほか、初めて長距離榴弾(りゅうだん)砲などが含まれた。
アメリカをはじめNATO加盟諸国のこの動きに対してロシア政府は正式な外交文書で、アメリカとNATO各国がウクライナへ武器を提供し続けていることが、ウクライナでの紛争に「燃料を与えて」おり、「予測できない結果に」つながりかねないと警告した。

<解説> 西側への怒り強めるロシア――ポール・アダムズBBC外交担当編集委
こうした報復は、常にあり得た。ロシアにとってイギリスは、ウクライナを軍事的に支援し、ロシアを経済的・政治的に孤立させようとする国際社会の動きに密接に関与する当事者の1つなのだ。
ロシアの今回の措置で、対象になったイギリスの政治家13人が旅行の予定を変更することは、まずないだろう。そもそもモスクワ旅行を計画していた人は、13人の中にはおそらくいなかったはずだ。
しかしロシアの今回の措置は、ウクライナ侵攻への西側の反応がいかにロシア政府を怒らせているかのあらわれだ。それと同時に、たとえ過去のことでも、自分たちを孤立させた当事者とみなす相手に、ロシア政府がいかにあからさまに反撃してみせるかをも、如実に示している。テリーザ・メイ前首相が制裁対象に含まれているのが、その証拠だ。メイ氏は2018年、英南西部ソールズベリーでロシアの元スパイに対してロシアが神経剤を使った際、多数の駐英ロシア外交官を国外追放する措置を取りまとめた。
ロシアは、欧米がこれ以上ウクライナへ武器や装備を提供すれば、「予測できない結果」をもたらす可能性があると警告している。
政府要人の入国禁止は、必ずしも予想外ではない。英米政府が心配しているのは、これまでとは異なる軍事手段を行使する能力がロシアにはあり、もしかするとその欲求さえあることだ。しかもその中には、通常兵器以外の兵器の使用も可能性として含まれる。











