マスク氏がツイッターに買収提案、取締役会は「ポイズンピル」導入

Elon Musk on Twitter

画像提供, Getty Images

電気自動車「テスラ」や宇宙開発「スペースX」などの創業者イーロン・マスク氏は14日、ツイッターに対し430億ドル(約5兆4000億円)の買収提案を行った。ツイッターの取締役会はこれに対して15日、「ポイズンピル(毒薬)」と呼ばれる防衛策を取ると発表した。

「ポイズンピル」とは期限付きの株主権利プランで、特定の個人や法人が15%以上の株式を保有しようとした場合、他の株主に割安で追加の株式取得を認め、買収を阻止するというもの。

ツイッターの取締役会は15日、アメリカの証券取引委員会にこの防衛策を説明した。声明では、マスク氏の「一方的で拘束力のない買収提案」のためにポイズンピルが必要だと述べた。

企業買収の場では、特定の企業が他の企業をその経営陣(ツイッターの場合は取締役会)の意向に反して買収しようとする場合、敵対的と見なされる。

交渉の余地は?

米証取委の元金融エコノミスト、ジョシュ・ホワイト氏はBBCの取材に対し、ポイズンピルは「敵対的買収に対する最後の防衛線のひとつ」であると語った。

「我々はそれを『核のオプション』と呼んでいる。取締役会は(マスク氏の提示額を)十分と考えていないことは明白だ」

核のオプションとは、通常3分の2の過半数が必要となる米上院で、単純多数で承認を可能にする異例の規則変更を指す用語。

マスク氏は今回、提示価格の引き上げ交渉には応じない姿勢のため、ツイッター側はポイズンピルの導入に踏み切った。

ホワイト氏は、マスク氏の交渉戦術に驚いたと言う。最終目標がツイッター社の買収なら、それは「正しいアプローチ」ではないかもしれないからだ。

「マスク氏が本気で買収するつもりなら、価格提示から始めて、交渉の余地を開けておいたはずだと思う」と、同氏は述べた。

今回のポイズンピルは、来年4月14日に期限切れとなる。

ツイッターのパラグ・アグラワル最高経営責任者(CEO)は先に、同社は買収提案によって「人質」にとられていないと話していた。

「言論の自由を拡大」

マスク氏は4月初めにツイッターの9.2%株式を所有し、筆頭株主となったと発表。ツイッターは翌5日にマスク氏を役員に任命した。しかし、現在は資産運用会社ヴァンガード・グループが10.3%株式を保有しており、マスク氏は筆頭株主ではないという。

マスク氏はかねて、ツイッターがプラットフォーム上の言論の自由を制限していると主張している。先には、ツイッターの投票機能を使い、投稿内容の編集を可能にする機能についてユーザーの意見を聞いていた。

カナダ・ヴァンクーヴァ―で開かれている「TED2022」に参加したマスク氏は、この点を強調。アメリカ憲法で保障されている言論の自由をツイッター上で拡大するのが目的だと語った。

また買収については、「本当に実現できるか分からない」と述べた一方、ポイズンピルに対しては「次善策がある」と述べた。しかし、詳細は語らなかった。

ブルームバーグによると、マスク氏は米投資モルガンスタンレーの助言を受けている。一方のツイッターは、ゴールドマンサックスとJPモルガンの2行を顧問としている。

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<分析>ジェイムズ・クレイトン北米テクノロジー記者

ツイッターは、捕食者に食べられないようにしている。自らをとげで包み込み、毒で覆っている。

ポイズンピル戦略は何十年も前からあったし、実際に効果がある。

マスク氏が15%以上の株を買えば、ツイッターは新株を大量発行するだろう。そうなれば、マスク氏の持ち株比率が下がっていく。賢い戦略だ。

ツイッターの取締役会は、マスク氏の買収に強く抵抗するつもりだろう。そのことが、強くうかがわれる。

だが、ツイッターは必ずしも買収されたくないと言っているわけではない。ポイズンピルは、取締役会が敵対的買収を防ぐ力を、増やすだけだ。

マスク氏は今後、株主に訴えかけていくものと思われる。すでに、取締役会が買収提案を株主投票にかけなかった場合、それには「弁解の余地がない」と述べている。

ツイッターは、世界一の大金持ちから求愛されるのは面はゆいながら、同時にとても迷惑なことなのだと知りつつある。

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