ウクライナ原発火災は砲撃が原因か、鎮火後にロシアが制圧 死傷者数人

動画説明, ウクライナ東部の原発で出火、周囲でロシア軍が攻撃

ウクライナ南東部にある欧州最大のザポリッジャ(ザポロジエ)原発で4日未明、火災が発生した。ロシア軍の砲撃が原因とみられる。ウクライナ当局は同日朝、火災は鎮火し、原発本体に目立った被害はなかったとした。死傷者が数人出た模様ウクライナ当局によるとその後、同原発はロシア軍が制圧した。

原発に近いエネルゴダール市のディミトロ・オルロフ市長は、「(原発の)建物や施設に対する継続的な敵の砲撃」によって、原発の火災が起きたようだとした。ウクライナのドミトロ・クレバ外相は、ロシア軍がザポリッジャ原発に向けて「全方位から砲撃している」としていた。

原発施設内の管理棟がロシアの砲撃で損傷を受けた

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画像説明, 原発施設内の管理棟がロシアの砲撃で損傷を受けた

ウクライナ救急当局によると、火災はロシア軍の砲撃によって、原発施設内の5階建ての訓練用建物の3~5階で発生。消防隊が火災現場に到着して約1時間後の午前6時20分ごろ(現地時間)、鎮火したという。

原発本体に被害はなかった。だが、消火が遅れれば、火が広がった可能性もあったという。ウクライナ外務省によると、火災で死傷者が数人出たという。

当局は、放射線レベルは通常どおりだとしている。ただ、発電装置内で核燃料の冷却に問題が生じれば、大規模な放射線被害が発生する可能性がある。

外務省は声明で、「砲撃と戦闘で避難できない原発付近の民間人を含む数千人が、これによって被害を受けることになる」とした。また、チョルノービリ(チェルノブイリ)や福島の原発事故より深刻な被害が発生し得るとした。

Ukraine NPPs

火災鎮圧後、ロシア軍が原発制圧

ウクライナ当局は火災の鎮圧後、ロシア軍がザポリッジャ原発を制圧したと述べた。現地当局者はロイター通信に、「運転作業員が発電ユニットの状態を監視している」と話した。原発の職員らは作業を続けているという。

欧州最大のザポリッジャ(ザポロジエ)原発に対する攻撃を捉えた監視カメラ映像(4日、ウクライナ東部ザポリッジャ)

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画像説明, 欧州最大のザポリッジャ(ザポロジエ)原発に対する攻撃を捉えた監視カメラ映像(4日未明、ウクライナ東部ザポリッジャ)

ザポリッジャ州のアレクサンドル・スタルク地方行政トップは同日、原発の安全は「確保された」とフェイスブックで明らかにした。ザポリッジャ原発所長と話をして、安全だと知らされたという。

「ザポリッジャ原発の所長は現在、施設の核の安全は確保された」と、スタルク氏は書いた。

国際原子力機関(IAEA)も同日、ウクライナ指導部と連絡を取ったとし、原発の「最も重要な」機器は機能していると説明を受けたとツイートした。「原発職員が鎮圧作業に当たっている」模様だとした。

ザポリッジャ原発は首都キーウ(キエフ)の南東約550キロにある。ウクライナの全電力の約4分の1を供給している。

付近での戦闘は停止か

AP通信によると、ザポリッジャ原発スポークスマンのアンドリイ・トゥズ氏はソーシャルメディア「テレグラム」で、ロシア軍に「激しい砲撃をやめる」よう呼びかけた。

トゥズ氏は「欧州最大の原発で、核が危険な状態になる本当の脅威が起きている」として、消火活動に向かう消防隊が、ロシア軍の攻撃のため原発に近づけずにいると述べた。

エネルゴダール市のオルロフ市長は、原発周辺での戦闘は止まったと、BBCウクライナ語に語った。

救急当局は当初、ロシア軍が消火活動を妨げているとしていた。その後、消防隊が現地時間午前5時20分ごろに出火場所に到着したと明らかにした。その後、約1時間で鎮火したという。

ロシア軍が原発に迫る

エネルゴダール市のオルロフ市長は3日、同市近郊で激しい戦闘が起きているとしていた。ロシア軍が戦車で同市内に入って原発を掌握しようとしたが、住民や作業員らが原発周辺と周囲の道路に集まったと述べていた。

ウクライナにはザポリッジャ原発を含め、稼働中の原発が4基ある。チョルノービリ原発の跡地には放射性廃棄物があるが、現在はロシアが同地を占拠している。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ザポリッジャ原発が攻撃されたことを受け、国際社会に「即時の行動」を強く求めた。

ゼレンスキー氏はツイッターに投稿した動画で、「欧州最大の原発がいま燃えている」と訴えた。

また、ロシア軍について、赤外線カメラを装着した戦車から、ザポリッジャ原発の原子炉6基を意図的に狙って砲撃したと非難した。

「欧州人よ、目を覚ましてほしい」

ゼレンスキー氏はさらに、1986年のチョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故をふまえ、「世界的惨事」という言葉を使用。もしザポリッジャ原発でメルトダウンが発生すれば、影響はずっとひどいものになると訴えた。

そして、「欧州人よ、目を覚ましてほしい。ロシアがウクライナの原発を砲撃していると、自国の政治家に伝えてほしい」と懇願。「ロシアはこれまでのプロバガンダで、世界を核の灰で覆うと警告してきた。今やこれはただの警告ではない。現実だ」とした。

ゼレンスキー氏は、アメリカ、イギリス、欧州連合(EU)、ドイツ、ポーランド、IAEAの指導者と連絡を取ったと明らかにした。

各国首脳らが非難

イギリスのボリス・ジョンソン首相は、ザポリッジャ原発で出火したとのニュースが流れた直後、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話で協議した。

首相官邸報道官によると、ジョンソン氏は、「プーチン大統領の危険を顧みない行動は、欧州全体の安全の直接的な脅威になり得る」と伝えたという。

アメリカのジョー・バイデン大統領も、ロシアに対して原発周辺での軍事行動をやめるよう要求した。

ジェニファー・グランホルム米エネルギー長官は、ザポリッジャ原発の火災についてウクライナのエネルギー相と協議し、アメリカの核緊急支援隊に対応させることを決めたとツイートした。

アメリカの核兵器を監督する立場のグランホルム氏は、「ロシア軍のザポリッジャ原発付近での作戦は危険極まりなく、停止しなくてはならない」と主張。「同原発の原子炉は強力な格納構造によって守られており、安全に停止されている」とした。

カナダのジャスティン・トルドー首相も、原発火災の発生後にウクライナのゼレンスキー大統領と電話で協議した。

トルドー氏はツイッターで、原発への攻撃を非難し、「直ちに停止」するよう求めた。

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