プーチン氏、ロシアの安全保障に交渉の余地はないと

画像提供, Reuters
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は23日、ロシアの国益と安全保障に交渉の余地はないと強調した。国民の祝日「祖国防衛者の日」に合わせた国民向けの動画演説で述べた。ウクライナ国境周辺では、ロシア軍部隊が今まで以上に国境沿いに迫っているとの情報が相次いでいる。
プーチン大統領は国民に対して、自分は常に「直接的で正直な対話」を受け入れるし、政府は今なおウクライナをめぐり西側と「外交交渉」する用意はあるものの、ロシアの国益と国民の安全保障に交渉の余地はないと述べた。

画像提供, Kremlin
大統領はさらに、ロシア軍の戦闘態勢が常に万全なことをたたえ、軍は国の国益のために立ち上がることを確信していると話した。
ロシア軍の部隊は今なおウクライナ国境の近くにいる。米航空技術会社マクサーによると、過去24時間の人工衛星画像からは、ロシア西部に部隊や軍装備の展開が増えている様子が見てとれる。ウクライナ国境に近いベラルーシの空軍基地には、100台以上の車両が確認できる。

画像提供, SATELLITE IMAGE 2022 MAXAR TECHNOLOGIES / EPA
プーチン大統領のビデオ演説の数時間前には、アメリカのジョー・バイデン大統領がロシアの国際法違反を批判。プーチン氏がウクライナ東部で親ロシア派勢力が自称する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を一方的に承認し、ロシア軍を「平和維持」目的で両地域へ派遣すると命令したことについて、「ロシアによるウクライナ侵攻の始まりだ」と述べた。
アメリカ政府をはじめ西側諸国の多くは、ロシアに様々な金融制裁を科すと発表。バイデン大統領は、「我々はロシア政府を西側の金融体制から切り離した」として、ロシアが西側の金融市場で資金調達できないようにしたと述べた。
米政府は経済制裁の「第1弾」として、ロシア軍需産業とつながりの深い政府系銀行2行、開発対外経済銀行(VEB)とプロムスビャジバンク(PSB)を制裁対象にし、取引を禁止するとした。これにより、両行はドル決済ができなくなる。さらに、ロシア国債の米国などの主要市場での取引を停止し、ロシア経済の一部を国際金融制度から切り離す方針を示した。プーチン氏の側近やその家族なども、資産凍結などの制裁対象にした。
日本政府は制裁措置として、特定のロシア関係者に対するビザ(査証)発給停止と資産凍結、両「共和国」との輸出入の禁止、ロシアによる日本での国債などの発行・流通禁止を発表。カナダも、カナダでのロシア国債の売買禁止や、ロシアの銀行との取引停止など、金融制裁措置を発表した。
イギリス政府は、ロシアの主要銀行5行を資産凍結の対象にしたほか、ロシアの大富豪3人の資産も同様に凍結。この3人のイギリス渡航も禁止すると発表した。
ドイツ政府は22日、ロシアからの天然ガス輸送パイプライン、ノルドストリーム2のプロジェクト承認停止を明らかにした。パイプラインはロシアと欧州諸国による大規模な投資事業。欧州はガス需要の約4割をロシアに依存している。
ノルドストリーム2については、ドイツ政府の発表を受けてバイデン米大統領も、「ロシアの行動が原因で、私が約束した通り、ノルドストリーム2計画が前進しないよう、ドイツと協力した」と述べた。
西側諸国の制裁については、ロシアはすでにこの事態に備えて、6300億ドル(約74兆円)と過去最大規模の外貨を準備していたという指摘もある。加えて、ロシアがドル建てで保有する外貨の比率は5年前の40%から約16%へと減り、現在は外貨の約13%を人民元で保有しているという。
ウクライナ政府、国民のロシア出国を勧告
ウクライナ政府は近く、議会の承認を経て、30日間の緊急事態を全土に宣言する。
また外務省は、ロシアに滞在中の国民に、ただちに出国するよう勧告。「ウクライナに対するロシアの攻撃行為が悪化」すれば、領事支援活動が制限されるおそれがあるとした。
ロシアには現在、最多で300万人のウクライナ人がいるとみられている。
さらにウクライナ国軍は、18~60歳の予備役の第一陣に対して、正規軍に参加するよう呼びかけた。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、この危機をめぐり、ロシアとの完全な国交断絶も検討すると話している。
ローマ教皇フランシスコは、ウクライナで戦争が懸念される事態は自分の心に「大きな苦痛」をもたらしていると述べた。
プーチン大統領は21日、ウクライナ東部の自称「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の「平和維持」を目的に、ロシア軍の派遣を命じた。しかし西側諸国はこの理屈はナンセンスだと非難。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、「平和維持活動の概念がゆがめられる」ことに懸念を示した。
バイデン大統領はプーチン氏の主張について、「簡単に言えば、ロシアはウクライナから大きなかたまりを切り取るつもりだと宣言したわけだ」と非難した。


2014年初めにウクライナで、親ロシア派の大統領が失脚したのを機に、ロシアはウクライナを攻撃した。ウクライナ東部でその後も続いた戦闘は、1万4000人以上の命を奪っている。
ウクライナ東部のルハンスクとドネツク両地方で一部地域を実効支配してきた分離派は、ウクライナ軍の全面攻撃が迫っていると根拠なく主張し、住民に避難を呼びかけた。モスクワのロシア政府関係者は23日、女性や子供、高齢者を中心にこれまでに9万6000人が、ウクライナの分離派地域からロシアへ避難してきたと話した。








