英首相と財務相、濃厚接触で自主隔離へ 特別措置に世論反発で方針転換

British Prime Minister Boris Johnson (R) and Chancellor of the Exchequer Rishi Sunak leave 10 Downing Street in central London to attend a Cabinet meeting as Parliament returns after summer recess amid the ongoing Coronavirus pandemic on 01 September, 2020

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画像説明, ボリス・ジョンソン首相とリシ・スーナク財務相

イギリスのボリス・ジョンソン首相とリシ・スーナク財務相は18日、新型コロナウイルス検査で陽性が判明したサジド・ジャヴィド保健相と接触したことを受け、自主隔離に入った。

首相官邸は当初、2人は毎日検査を受ける試験プログラムに参加するため自主隔離はしないと述べていたが、野党やソーシャルメディアなどから「彼らと我々ではルールが違うのか」と批判が集中したため、隔離に方針転換した。

ジョンソン首相はその後、試験プログラムへの参加を「一瞬だけ」考えたと話した。

閣僚に感染者が出る中、イングランドでは19日からロックダウン施策がほぼすべて解除された。

今回の緩和ではほとんどの法的規制が撤廃された。集会への参加人数制限がなくなり、ナイトクラブなども営業を再開できる一方、濃厚接触者の自主隔離は継続される。

「自分たちの利益のためにルールを変える」

ジャヴィド保健相は17日夜、新型ウイルス検査で陽性と判定されたと発表。その後、前日にジョンソン首相やスーナク財務相と接触していたことが明らかになり、国民保健サービス(NHS)のCOVID-19検査・追跡アプリで濃厚接触者と認定されていた。

これに受けて首相官邸は、職場での試験プログラムに参加することで、2人が官邸で職務を継続できると述べた。

しかし、この発表には怒りの声があがった。最大野党・労働党のジョナサン・アッシュウォース議員は、政治家が「VIP検査」を受けて自主隔離を逃れられるように見えるのは不公平だと指摘した。

労働党党首のサー・キア・スターマーは、首相に対する質問状を公開。どのような過程で首相と財務相が試験プログラムに参加することになったのか、他に試験に参加する閣僚は何人か、隔離場所になるロンドン北西にある首相公式別荘「チェッカーズ」にいつ移動したのかなどに答えるよう要求した。

その上で、「あなたと財務相が魔法のように試験対象に選ばれ、隔離を免れたという最新の大失態は、保守党がいかに自己利益のためにルールを変え、発覚した時だけ撤回するかのあらわれだ」と批判した。

自由民主党のエド・デイヴィー党首も、この措置が「優遇される一握り」だけのものなのかと追及した。

157分の方針転換

ジョンソン首相はその後、自身のツイッターアカウントに動画を投稿し、「毎日検査を受ける試験プログラムへの参加も一瞬だけ検討したものの、私は全員が同じルールに従う方がもっと重要だと考えたため、7月26日まで自主隔離することにした」と説明した。

「皆さんが何もかもに苛立っていることは理解しているが、全員がこのプログラムに従い、NHSの検査・追跡プログラムから隔離するよう指示されたときには適切な行動を取ってほしい」

首相はまた、感染者や死者、入院患者が増える中でのロックダウン緩和を擁護しつつ、慎重な行動を呼びかけた。

「ウイルスが残念ながらまだ出回っていることを、念頭に置く必要がある。感染者は増えている。デルタ株の感染力は非常に強いが、ワクチン接種事業によって感染と入院、重症化、そして死亡へのつながりが非常に弱まっていることが、大きな慰めと満足感になっている」

スーナク財務相もツイッターで、「検査・追跡試験ではかなり行動が制限され、本当に重要な政府業務しか行えなくなるものの、ルールが等しく全員に適用されていないと、そう思われてしまうことは問題だと承知している」と述べた。

BBCのニック・アードリー政治担当編集委員は、首相官邸はわずか157分で方針転換したと指摘。これは現政権で最も速い記録だと解説した。

しかし、首相と財務相が自主隔離しないと最初に決めたのは誰で、誰が承認したのかといった疑問が残ると指摘。そもそも首相と財務相も「隔離しない」という最初の決定を承知していたはずで、ほとんどの国民には隔離するかしないか選択の余地はないのだとアードリー記者は話す。

その上で、イングランドでロックダウンが緩和されるその日から、トップ閣僚3人が隔離に入るのは政治的にも象徴的な出来事だと、記者は述べた。

試験プログラムとは

イギリス政府によると、ネットワーク・レイルやロンドン交通局(TfL)、ヒースロー空港、入国管理局など20の公共機関と民間セクター組織が、毎日検査するこの試験的プログラムに参加している。

ヒースロー空港は、同プログラムは空港の営業を継続するために「必要なツール」であり、現在の期限である7月末以降も続けるよう要請している。

しかしTfLは、「我々が試験対象だという正式な通知を待っている」としている。ロンドン地下鉄のメトロポリタン線では17日、自主隔離する従業員が多すぎたために運転を見合わせた。

ロバート・ジェンリック住宅相はBBC番組「アンドリュー・マー・ショウ」に出演し、このプログラムは「周知のもので長続きする」と擁護している。

トニー・ブレア元首相は、ジョンソン首相は感染経験があり、2回のワクチン接種も終え、定期的に検査を受けているので、自主隔離する必要はないとの見方を示した。

「この国の首相に今、自主隔離をしてほしくはない。机に向かって職務を遂行してほしい」

イギリスの感染状況は

政府統計によるとイギリスでは18日、1日の感染者が4万8161人になった。検査で陽性が判明してから28日以内の死者は25人だった。16日と17日には、1月半ば以降で初めて、感染者がそれぞれ5万人を超えた。

イングランドとウェールズで、NHSのCOVID-19検査・追跡アプリから自主隔離するよう通知を受け取った人は、7月第1週だけで、50万人以上に上った。スーパーマーケット各社は、自主隔離で欠勤する従業員が相次いでいるため、営業時間の短縮や臨時休業を余儀なくされる可能性があると述べている。

また同じ週には、生徒84万人が自主隔離のため学校を休んだ。

ジェンリック住宅相は、自主隔離は「ウイルスを抑制する重要な仕組みの一部」だと述べ、研究ではNHSアプリによって60万人の感染と8000人の死が防がれたことが明らかになったと指摘した。

しかし、イングランドでのロックダウン緩和によって19日からは学校でのバブル形成も終了する上、8月16日からはワクチン接種終了者は農耕接触が明らかにあっても自主隔離をする必要はなくなると述べた。

中小企業連盟(FSB)のマイク・チェリー会長は、イギリス政府は早急に、自主隔離に関するルール変更の是非を検討してほしいと述べた。

「閣僚に適用されている試験スキームを、経済の最前線で働く人たちに拡大することもできるはずだ」