ハイチで大統領暗殺、自宅で武装集団に銃撃される

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カリブ海の島国ハイチのジョブネル・モイーズ大統領(53)が7日未明、首都ポルトープランスの自宅で武装集団に襲われ死亡した。マルティーヌ大統領夫人も銃撃を受け負傷した。警察は同日、容疑者4人を射殺したと明らかにした。
クロード・ジョゼフ暫定首相は、正体不明の武装集団が7日午前1時頃に大統領宅を襲ったと発表した。
ジョゼフ氏はハイチ全土に非常事態宣言を発令し、平静を保つよう呼びかけている。
警察によると、モイーズ大統領殺害の容疑者集団と治安部隊が銃撃戦になり、当局は4人を射殺し、2人を拘束した。ほかにも、首都で複数の容疑者と治安当局が戦闘状態にあるという。
レオン・シャルル警察長官は7日夜、テレビ演説で、「傭兵(ようへい)4人を殺害し、2人を拘束した」と発表。「人質になった警官3人は救出した。犯行現場を離れようとする容疑者集団の逃走を我々は阻止し、それ以来、戦闘が続いている」と述べた。
マルティーヌ・モイーズ大統領夫人は事件後、治療のため空路で米フロリダ州フォートローダーデールに到着したと報じられた。マルティーヌさんの容体について公式の発表はない。
イギリスのボリス・ジョンソン首相は、「モイーズ氏の死を悲しんでいる」とツイートし。犯行を「忌まわしい行為」とし、平静を保つよう求めた。
アメリカのジョー・バイデン大統領は「恐ろしい暗殺」に直面したハイチの人々に哀悼の意を表した。
退任時期をめぐり野党と対立
ハイチは近年、クーデターや政情不安、広範囲にわたるギャングによる暴力行為に悩まされてきた。
モイーズ大統領は世界最貧国のひとつであるハイチを2017年2月から率いてきたが、辞任を求める抗議活動が拡大していた。
野党はモイーズ氏の任期(5年)について、前任ミシェル・マルテリー氏の退陣(2016年2月)から5年後にあたる2021年2月7日に終了しているはずだと主張していた。
しかしマルテリー氏の退任後、選挙の実施が1年遅れ、モイーズ氏が大統領に就任したのは2017年2月だった。そのため、モイーズ氏は任期がもう1年残っているとしていた。
2019年10月に実施されるはずだった議会選挙は混乱が生じたため延期され、モイーズ氏は法令に基づき実権を維持した。
野党がモイーズ氏の退任を望んでいた今年2月、同氏は自分を殺害して政権転覆しようとする試みが失敗に終わったと述べていた。
誰が指揮を取るのか
ジョゼフ暫定首相は、大統領に対する銃撃を「凶悪で非人間的で野蛮な行為」とし、襲撃犯は「英語とスペイン語を話す外国人」だったとした。ハイチの公用語はクレオール語とフランス語。
一部報道では、アメリカの麻薬取締り活動を装った黒ずくめの男たちが強力な武器を持っていたと伝えられているが、公式には詳細は明らかにされていない。
ハイチのボシット・エドモン駐米大使は、アメリカの麻薬捜査官が今回の襲撃を実行するのは「あり得ない」ことだと述べた。同大使は「プロの傭兵」の仕業だと考えている。


ジョゼフ氏は国民に向けて、犯人は必ず裁判にかけられると約束し、治安状況は「コントロールされている」とした。
緊急事態宣言下では集会の禁止や、取り締まり活動への軍の動員、その他の行政権の拡大などが可能になる。
ジョゼフ氏は「継続性を確保するためにあらゆる手段が講じられている」とし、「民主主義と(ハイチ)共和国が勝利する」と述べた。
しかし、ジョゼフ氏がどこまで事態を統括できるのか、疑問が残る。
ハイチの憲法では、大統領が不在となった場合、選挙が実施されるまでの間は首相の指揮の下、閣僚が主導権を握ることになっている。
しかし、モイーズ大統領が今週に新首相に指名したアリエル・アンリ氏は、まだ就任宣誓を終えていないため、この憲法が適用されるのかはまだ不明だ。
アメリカは事件後、平和的な政権交代を実現するために年内に選挙を行うべきだと考えているとした。
アメリカは50年にわたってハイチに最も多額の援助を行ってきた。一方で指導部の一部とは対立関係にあり、度々介入するなどしてきた。
また両国には、南米の麻薬がハイチを経由して米国に運ばれるのを防ぐため、麻薬対策の面で強い結びつきがある。

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7日の首都ポルトープランスはおおかた静まり返っているようにみえた。
住民の1人は「私たちは今度は何が起きるのか、携帯電話やラジオ、テレビを注視している。(中略)誰もが怖がっている」とBBCに述べた。
隣国ドミニカ共和国はハイチ国境の「即時封鎖」を命じた。
暴力行為や生活水準悪化も
ハイチは近年、ギャングによる暴力行為や誘拐事件にも見舞われており、特に首都圏では多くの地区が立ち入り禁止区域となっている。
人口約1100万人のハイチでは生活水準の悪化により60%近くが貧困ラインを下回っている。
2010年に発生した地震では20万人以上が死亡し、インフラや経済に甚大な被害をもたらした。
2004年には国の安定化のために国連平和維持軍が投入され、2017年に撤退したばかり。それでも混乱は一向に収まる気配を見せていない。





