米フロイドさん死亡事件、元警官に有罪評決

動画説明, ショーヴィン元警官が有罪評決を聞いた瞬間

米ミネソタ州ミネアポリスで昨年5月に黒人男性ジョージ・フロイドさん(当時46)を死に至らせたとして、殺人罪などに問われた元警官で白人のデレク・ショーヴィン被告(45)の裁判で、陪審は20日、すべての罪状について有罪評決を出した。

ショーヴィン被告は、第2級殺人、第3級殺人、故殺の3つ罪すべてで有罪とされた。

近く量刑が言い渡され、刑務所に移される。それまで勾留が続けられる。

第2級殺人罪は殺意の有無に関わらず適用され、量刑は最長禁錮40年。第3級殺人罪は、危険な行為によって人を死なせる犯罪。

アメリカでは警官による拘束中に容疑者が死亡した場合、裁判で警官が有罪とされることはまれで、訴追すらされないこともある。

今回の評決は、同国における今後の同種の裁判に影響を与えるとみられている。

米メディアは、ショーヴィン被告が控訴する見通しだと伝えている。

Former Minneapolis police officer Derek Chauvin is led away in handcuffs

画像提供, Reuters

画像説明, ショーヴィン被告は有罪評決を受けた後、手錠をかけられ退廷した

注目を集めた裁判は3週間にわたって続き、裁判所があるミネアポリスでは緊張が高まっていた。

19日には検察と弁護側の双方が最終弁論をし、12人で構成する陪審はその後、ホテルで外部との接触を断たれた状態で評議に入った

有罪か無罪かの評決を出すには陪審員の全員一致が条件だが、丸1日かからずに評決に至った。陪審員らは、判断を出すまで帰宅できないと告げられていた。

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ショーヴィン被告はフロイドさんを拘束する際、フロイドさんの首を膝で9分以上押さえつけていた様子が撮影されていた。

その動画は拡散され、人種差別や警察の過剰な実力行使に対する抗議が、世界各地で沸き上がった。

National Guards and other Law enforcement officers stand guard

画像提供, AFP

画像説明, 評決を前にミネアポリスでは警備が強化されていた

「歴史の転換点」

有罪評決が発表されると、裁判所の周辺では数百人が歓喜の声を上げた。

フロイドさんの家族の代理人のベン・クランプ弁護士は、評決について「(アメリカの)歴史における転換点」となったと表明した。

同弁護士は「苦しんだ末についに正義が訪れた」、「警察の責任を明らかにすることが必要だとの明確なメッセージとなった」とツイートした。

動画説明, 「やっと息ができる」 米フロイドさん死亡事件で有罪評決、街の人々の反応は

ジョー・バイデン大統領とカマラ・ハリス副大統領は評決後、フロイドさんの家族に電話をかけた。

バイデン大統領は「少なくとも今、いくらかの正義がなされた」、「もっと多くがなされるようにしていく。今回の評決は、社会に広がっている真の人種差別に向けた最初の一撃となる」と述べた。

大統領はその後、全国放送のテレビ演説をし、「社会に浸透した人種差別は、この国全体の魂の汚点だ」と話した。

一方、ハリス副大統領は、警察改革に関する「ジョージ・フロイド法案」を可決するよう、連邦議員らに求めた。「この法案はジョージ・フロイドのレガシーの一部だ。もうとっくに成立しているべきだ」。

警官組織は「評決を尊重」

ミネアポリス市警の警官組織は、「とてつもない重責」を担った陪審の「献身的な努力」に謝意を表明。

「私たちも地域と一緒になって、住民の痛みに対して深い悔恨の念を表したい。この裁判に勝者はなく、私たちは陪審の決定を尊重する」とした。また、人種問題を政治的に利用する動きを止める必要があると訴えた。

米メディアによると、控訴が見込まれているショーヴィン被告側は、今回の事件をめぐる大々的なメディア報道が陪審の判断に影響を及ぼしたと主張するとみられる。

裁判ではピーター・ケイヒル判事が19日、民主党のマキシン・ウォーターズ下院議員の公の場での発言が、控訴の理由になり得るとの見解を示した

ウォーターズ議員は17日、抗議活動の群衆に向かって「路上にとどまる」よう呼びかけ、被告に無罪評決が出た場合は「もっと対立的になる」よう訴えていた。

事件の概要

フロイドさんは2020年5月25日夕、南ミネアポリス地区のコンビニ店でたばこ1箱を買った。

店員はフロイドさんが偽の20ドル紙幣を使ったと判断。返品を求めたがフロイドさんが拒んだため、警察に通報した。

到着した警官らは、駐車していた車の中にいたフロイドさんに外に出るよう命じ、手錠をかけた。大声を上げるフロイドさんを警察車両に乗せようとして、フロイドさんともみ合いになった。警官らはフロイドさんを地面に押さえつけ、体重をかけて動かないようにした。

ショーヴィン被告は9分以上にわたって、フロイドさんの首の後ろに膝を置き、押しつけ続けた。フロイドさんや近くにいた人々らは、フロイドさんを死なせないよう被告に懇願した。

その間、フロイドさんは20回以上、息ができないと訴えた。母親に助けを求め、「お願いです、お願いです、お願いです」と声を出した。

救急車が到着した時、フロイドさんの体に動きは見られなかった。その約1時間後、死亡が確認された。

裁判では

裁判では証人45人が証言し、事件当時に通行人らが撮影した映像が長時間、再生された。

裁判の序盤では、事件を目撃した人たちが証人席に座り、心を揺さぶる証言をした。当時の映像を見て涙を流し、目の前で事件が起きる中、「無力感」に襲われていたと述べる証人もいた。

フロイドさんと3年間交際していたコートニー・ロスさんや、フロイドさんの妹のフィロニス・フロイドさんも証人となり、生前のフロイドさんについて語った。

検察側証人の専門家は、フロイドさんの死因は、ショーヴィン被告らの制圧行為によって引き起こされた窒息死だと述べた。

ショーヴィン被告は黙秘権を行使し、証言しなかった。

(編注:BBC.jpでは事件当初から、元警官の同僚警官たちの発音をもとに元警官の姓を「チョーヴィン」と表記していましたが、担当弁護士が本人に向かって「ショーヴィン」に近い発音をするのを確認し、「ショーヴィン」という表記に変更しました)