米警官の裁判が大詰め、5つの重要局面 フロイドさん死亡事件

Memorials at the scene of George Floyd's arrest and death, in Minneapolis on 8 April 2021

画像提供, Getty Images

画像説明, 死亡事件の現場にはフロイドさんを追悼するさまざまな物が置かれていた(ミネソタ州ミネアポリス、4月8日)

人種差別と警察暴力に対する世界的な抗議活動へとつながった、米黒人男性ジョージ・フロイドさん(当時46)死亡事件をめぐる刑事裁判で、陪審が評議に入った。3週間にわたったこれまでの裁判における、5つの重要な局面をまとめた。

昨年5月に起きたフロイドさん死亡事件では、白人の元警官デレク・ショーヴィン被告(45)が殺人や故殺の罪に問われている。

裁判では、証人45人が証言。通行人らが撮影した事件当時の映像が長時間、再生された。

陪審は現在、無罪か有罪かの評決を出すための評議に入っている

裁判では主に、以下の5点に注目が集まった。

1.目撃者への影響

裁判の序盤では、事件を目撃した人たちが証人席に座り、心を揺さぶる証言をした。

世界中で繰り返し再生された、フロイドさんの拘束場面の動画を撮影したダーネラさん(撮影時17歳)は、「自分がもっと動かず、身体的に関わらず、彼の命を救わなかったことをジョージ・フロイドに謝りながら」過ごした夜があったと述べた。

「ジョージ・フロイドのことを考えると、自分の父親やきょうだい、いとこ、おじのことを考える。みんな黒人だからです」と、ダーネラさんは述べた

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事件に最初に遭遇した1人で、フロイドさんに警察車両に乗るよう説得しようとしたチャールズ・マクミリアンさん(61)さんは、一連の出来事を目撃していた間、自らの「無力感」を覚えていたと述べた。

また、「目撃した出来事は間違いだった」ため、フロイドさんが救急車で搬送された後、ショーヴィン被告に抗議したと証言した。

被告の弁護士は、見物人の存在がショーヴィン被告の行動に影響を及ぼしたと主張した。同僚だった警官は裁判で、群衆が「警官に対して非常に攻撃的だった」と証言。ふだん警官を訓練している立場の別の証人は、見物人がそばにいる場合、警官は拘束している人が苦しんでいるサインを見落とす恐れが高まると述べた。

2.恋人の証言

フロイドさんと3年間交際していたコートニー・ロスさんの証言も、聞く人の胸を打った。

ロスさんは、救世軍のホームレスのシェルターのロビーで、警備員として働いていたフロイドさんと出会ったと説明。2018年にフロイドさんの母が死去すると、フロイドさんはとても落ち込んでいたと振り返った。

また、2人とも慢性的な疼痛(とうつう)に悩まされており、麻薬鎮痛剤オピオイドの依存症に陥っていた時期もあったと話した。

「依存症になったが、何度もそれを克服しようとものすごく努力した」

弁護側はフロイドさんの死因について、当時体内に摂取していたオピオイドと中枢神経刺激薬メタンフェタミンに起因する合併症によるところが大きいと主張した。

3.正当な制圧だったか

ショーヴィン被告はフロイドさんの首の上に9分半、膝を置き続けた。その行為が、容疑者拘束に関する警察の方針に背いたものかも、大きなポイントとなった

ミネアポリス市警トップのメダリア・アラドンド本部長は、フロイドさんが抵抗をやめた時点で、「あれほどの威力」を与えるのを打ち切るべきだったと証言した。また、「私たちの訓練内容や方針とはまったく異なり、紛れもなく、私たちの倫理や価値観にも合わない」と述べた

アラドンド本部長は事件発生の翌日、ショーヴィン被告を免職処分にした。

From left to right: Dr Martin Tobin, Charles McMillian and Courteney Ross

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画像説明, 裁判では45人ほどが証言した。左からマーティン・トービン博士、チャールズ・マクミリアンさん、コートニー・ロスさん

一方、弁護側の証人で強制力行使の専門家バリー・ブロッドさんは、ショーヴィン被告の行動について「正当」だったと説明。フロイドさんが逮捕に抵抗したことで「差し迫った脅威」があったとし、「客観的にみて妥当な」行動を取ったと述べた。

ただブロッドさんは反対尋問で、制圧の際の姿勢によっては窒息の危険性があることは、警察内ではよく知られていると認めた。

4.死因

この裁判の最大の争点とも言えるのが死因だ。検察は窒息によって死亡したとし、弁護側はフロイドさんの薬物使用と健康不良が関係したと主張した。

呼吸器病学が専門のマーティン・トービン博士は、フロイドさんの呼吸が首を押さえられていた9分半、どのような状態だったのか、映像を使って説明。

「健康な人でも、フロイドさんの状況に置かれれば死んでいただろう」と証言した。

これに対し弁護側は、法医学者デイヴィッド・ファウラー博士を証人に呼んだ。博士は法廷で、フロイドさんの死因について、矛盾しうる要素が非常に多いとし、「不確定」と分類されるべきだと述べた。

そうした微妙な要素は、フロイドさんの薬物使用や、警察車両の排気ガスを吸い込んだことなどが原因として考えられるとした。

ファウラー博士は反対尋問で、フロイドさんは心停止に陥った時にすぐ、医療処置を受けるべきだったとする検察の意見に同意した。

5.黙秘権の行使

弁護側による最終弁論の終盤、ショーヴィン被告は判事に対し、証言はしない考えを明確にした。

「私は今日、合衆国憲法修正第5条の(黙秘する)権利を行使します」

誰かの影響による判断かと判事に問われると、被告は「約束や脅迫などは一切ありません、判事」と答えた。

ショーヴィン被告は、罪状の第2級過失殺人、第3級殺人、故殺の罪に問われている。最も重い第2級過失殺人で有罪となれば、最長で禁錮40年の刑を受ける。

被告が有罪となるには、陪審の全員一致による有罪評決が必要。