仏マクロン内閣、イスラム過激派の取締法案を承認

French President Emmanuel Macron

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画像説明, エマニュエル・マクロン大統領

フランスのエマニュエル・マクロン大統領率いる内閣は9日、イスラム過激派対策の法案を承認した。フランスでは最近、過激派による攻撃が相次いでいる。

マクロン大統領は長きにわたって非宗教的な価値観を支持している。その一環である今回の法案は、自宅学習やヘイト(憎悪)スピーチにまつわる規制を厳格化するとしている。

フランス内外からは、政府が宗教を標的にしていると批判も上がっている。

ジャン・カステックス首相は、これは「保護のための法律」であり、ムスリム(イスラム教徒)を過激派の手から自由にするものだと説明した。

また、条文は「宗教や、特にイスラム教を取り締まるためのものではない」と強調した。

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「共和国の基礎を支える」この法案は、インターネット上のヘイトスピーチの取り締まりを強化するとともに、インターネットを使って悪意を持って他人の情報を開示することを禁止する内容になっている。

法案は、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を授業で教材にしたサミュエル・パティ教師が10月、ムスリムの男に首を切断される事件を受けたものと見られている。

捜査の結果、事件前からパティ氏への処罰を求めるオンライン活動が展開されていたことが分かった。

「秘密」学校を禁止

法案ではまた、イスラム過激派のイデオロギーを推進する「秘密」学校を禁止し、自宅学習の規則も厳格化する。

さらに今後は、複数の相手と結婚状態にある人に対しては在留申請を認めない。未成年に対し処女検査を行った医師は罰金、あるいは業務禁止となる。

イスラム系の組織には、財務上の透明性を高めることや、補助金を再申請する際にフランス共和制の価値観に従うことが求められる。

フランスではこれまでも公務員が宗教的な衣服を着ることが制限されてきたが、これを交通機関の職員のほか、水泳プールや市場のスタッフに拡大する。

なぜこのような法案が?

法案は長い間、議論されてきたが、最近起こったイスラム過激派による攻撃を受け、優先順位が上がった。

パティさん殺害事件の後、10月29日にも南仏ニースのキリスト教カトリック教会で3人が刃物で殺害された。

さらに9月には、風刺週刊紙「シャルリ・エブド」の元本社近くで男女2人が刃物で襲われ重傷を負っている。ムハンマドの風刺画を掲載していたシャルリ・エブドは2015年、イスラム教徒の襲撃犯2人による銃乱射事件の現場となり、有名漫画家ら12人が死亡した。現在、銃を乱射した2人を手助けしたとされる被告14人に対する裁判が進められている。

動画説明, マクロン仏大統領、イスラム過激派のテロには「決して屈しない」

マクロン大統領は、世俗主義を含むフランスの共和制を強く支持している。過去にはイスラム教は宗教として「危機にある」と述べたほか、シャルリ・エブドがムハンマドの風刺画を出版する権利を擁護している。

フランスには推定500万人のムスリムが暮らしており、欧州では最も大きなコミュニティーとなっている。

国内外の反応は?

マクロン大統領はムスリムが多い国で激しい批判の的となっている。

すでに関係が悪化しているトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、この法案は「あからさまな挑発だ」とし、マクロン大統領は「精神病だ」と述べた。

これまでにパキスタンやバングラデシュ、レバノンなどで抗議デモが起こっている。

フランス国内でも、今回の法制化の動きがムスリムへの非難と取られるのではないかと、左翼系の政治家から懸念の声が上がっている。

仏紙ル・モンドは、自宅学習を行っているイスラム教以外の宗教グループからも反感を買いかねないと指摘した。

BBCのルーシー・ウィリアムソン・パリ特派員は、マクロン大統領には一連の問題に対処するよう圧力がかかっていたと説明。フランスの世俗主義の下、イスラム過激派の影響に対策を取ることで国内の支持は得られるかもしれないが、外交では慎重な対応が必要となるだろうと分析した。