【米大統領選2020】 トランプ大統領、バイデン氏は「偉大なアメリカを解体する」と

動画説明, 【米大統領選2020】 「この国の歴史で最も重要な選挙になる」 トランプ大統領が指名受諾演説

11月の米大統領選に向けてドナルド・トランプ大統領は27日夜、ホワイトハウスで与党・共和党の候補として正式に指名受諾演説をし、野党・民主党のジョー・バイデン前副大統領が勝てばアメリカン・ドリームが「解体される」と警告した。

共和党の全国党大会最終日に、ホワイトハウスの南庭で約2000人の支持者や政権関係者を前にしたトランプ氏は、1時間以上にわたり演説を続けた。バイデン氏は「アメリカの偉大さを破壊する」と攻撃し、民主党は全米各地の都市に「暴力的なアナキスト(無政府主義者)」を解き放つと予言した。

トランプ氏は大統領2期目には、新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)を終わらせると公約。また、「民主党が動かす」複数の都市の「暴動や略奪や放火や暴力」を非難し、相次ぐ暴力を終わらせると約束した。

11月3日の投票日まで70日を切った現時点で、各種世論調査ではバイデン氏の支持率がトランプ氏を数ポイント上回っている。

民主、共和両党の党大会が終わり、正式な正副大統領の候補が揃ったことで、本選に向けての選挙活動が本格化する。

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「アメリカン・ドリームを守れるかどうか」

トランプ氏は、共和党と民主党の主張がこれほどはっきり異なっていたことはなく、アメリカ国民はこの選挙で2つのビジョン、2つの主張のどちらかを選ぶことになると話した。

「アメリカン・ドリームを守れるか」、それとも「(民主党の)社会主義的な政策目標が我々の大切な宿命を解体するのを許すか」を選ぶ選挙だと、両党の違いを強調。「法を守るアメリカ人を保護するのか、それとも暴力的なアナキストや扇動者や市民を脅かす犯罪者に好き勝手をさせるのか、皆さんの一票が決めることになる」と述べた。

アメリカでは5末に黒人男性が白人警官に暴行され死亡した事件に続き、今月23日にはウィスコンシン州ケノーシャで黒人男性が警官に背後から7回撃たれた。ケノーシャではこの事件に抗議するデモが続き、25日夜には17歳少年が抗議参加者たちに発砲し、3人を死傷させた罪で起訴されている

トランプ氏はケノーシャのほか、オレゴン州ポートランドなどで「暴動や略奪」が起きているのは、民主党が犯罪取り締まりに及び腰だからだと非難した。

相次ぐ暴力や事件を受けて、ホワイトハウスの門の前には「Black Lives Matter(黒人の命も大事だ)」運動の抗議者数百人が集まり、トランプ氏の演説の最中に差別反対を訴え続けた。

ホワイトハウスの周りには現在、抗議グループを近づけないように新しくフェンスが追加設置されているが、それでも抗議者たちの声や車のクラクションなどが、トランプ氏の演説中にも南庭まで響いていた。

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バイデン氏の長い政治キャリアを攻撃

トランプ氏は、17日から21日まで民主党が開いた党大会に触れ、民主党はまるでアメリカが人種差別と不平等な社会経済の国だとでもいうような悪い描き方をしたと述べた。

「そこで今夜はとても簡単な質問をみなさんにします。民主党はあれほどやっきになって、この国を打ちのめそうとしているのに、それでこの国のリーダーになりたいとは、いったいどういうことか」

「後ろ向きな左派は、アメリカが地球上で最も自由で公平で優秀な国だとは見ていません。代わりに、その罪を罰しなくてはならない、極悪な国だと思っているのです」

トランプ氏は、50年近くにわたるバイデン氏の政治キャリアを痛烈に攻撃し、「ジョー・バイデンはそのキャリア全部を使って、アメリカの労働者の夢を国外に流出させ、雇用を外国に移し、国境を開き、海外での果てしない戦争に、国民の息子や娘たちを送り出した」と批判した。

トランプ氏は、バイデン候補が党内左派の言いなりになる「社会主義からのトロイの木馬」と呼んだ。実際にはバイデン氏の民主党内の中道穏健派で、そのため民主党での候補者争いでは、党内左派から厳しく批判されてきた。

トランプ氏は演説の中で、バイデン氏について40回指摘した。一方のバイデン氏は、先週の指名演説で1度もトランプ氏の名前を口にしなかった。ただし、名指しこそしないものの、演説の随所に大統領への批判がちりばめられていた。

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バイデン陣営の反応は?

バラク・オバマ政権で8年間、副大統領を務めたバイデン氏はツイッターに、「ドナルド・トランプが今夜、ジョー・バイデン政権のアメリカは安全ではないと言ったが、周りを見て考えてほしい。ドナルド・トランプのアメリカで、あなたはどれだけ安全か?」と投稿した。

さらに、トランプ政権の失政のせいでアメリカはいま大強硬以来最悪の経済危機に見舞われており、新型ウイルスのリスクを軽視して専門家の意見を聞かなかったために、国民がその代償を払わされていると批判した

また、トランプ氏が非難する国内の暴力はすべて、トランプ政権下で起きていることだと釘を指した。

バイデン氏はこれまで感染予防のため精力的な遊説は控えていたが、27日夜に発表した動画では、再び各地で遊説を行う予定だと話した。

トランプ政権は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)の中、バイデン氏がデラウェア州ウィルミントンの自宅の地下室に引きこもったまま、ホワイトハウスを目指していたと嘲笑していた。

27日には、民主党副大統領候補のカマラ・ハリス氏がホワイトハウス近くで演説し、「ドナルド・トランプは大統領という職務を理解していない」と批判した。

「ドナルド・トランプはアメリカ大統領として最も基本的かつ重要な仕事に失敗した。アメリカ人を守るという、シンプルで簡単なことに」

ハリス氏はこの演説の際、質問を受け付けなかった。

報道によると、バイデン氏は28日にまでに共和党重鎮のスタッフ160人以上から支持を得たという。この中には、ジョージ・W・ブッシュ元大統領や大統領候補だったミット・ロムニー上院議員、大統領候補だった故ジョン・マケイン上院議員など、複数の共和党幹部のスタッフが含まれている。

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ホワイトハウスから選挙演説

この日の大会登壇者は、共感力が足りないと批判されることの多いトランプ大統領の人間性を強調したり、人種差別や女性差別を批判されてきたトランプ氏が実は黒人や女性を大事にする人だと強調したりした。勤勉な国民を暴徒から守ってくれる「法と秩序」の人だという主張も相次いだ。

トランプ大統領の娘で大統領顧問を務めるイヴァンカ・トランプ氏は、トランプ氏の受諾演説に先立ちホワイトハウスの会場から、「私は(新型コロナウイルスの)病魔による死者数の報告を受けるたびに、父の目に苦痛の色が浮かぶのを見てきた」と話した。

ホワイトハウスで、刑事司法制度における人種差別問題を担当しているジャロン・スミス氏は、大統領がこの問題に「本当に心を砕いている」と述べた。

過激派組織「イスラム国(IS)」の捕虜となりシリアで殺害されたケイラ・ミュラーさんの父親カール・ミュラーさんも登壇し、トランプ大統領が昨年、ISのアブ・バクル・アル・バグダディ指導者殺害作戦を実施したことを称賛した。この作戦には、ケイラさんの名前が付けられていた。

カールさんは「トランプ政権は、オバマ政権からは決してもらえなかった共感を寄せてくれた」と語った。

Donald Trump and First Lady Melania Trump

画像提供, Getty Images

画像説明, この日の演説はホワイトハウスを背景に、ワシントン記念塔を臨む場所で行われた

また、6月にミズーリ州セントルイスで起きた人種差別反対デモで、暴徒化した参加者から知り合いの店を守ろうとして射殺されたとされるデイヴィッド・ドーン警部(77)の妻も登壇。「暴力や破壊は合法的な抗議の形ではありません。黒人の命を守るのではなく、破壊しています」と涙ながらに訴えた。

トランプ氏の個人弁護士を務めるルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長は、「民主党が治める街でひっきりなしに起きる暴動を見れば、バイデン政権での未来が分かるだろう」と語った。

動画説明, 【米大統領選2020】 ペンス副大統領が演説、「アメリカがアメリカのままでいられるか」
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<解説> アンソニー・ザーカー北米担当記者

ドナルド・トランプ大統領の演説はゆっくりとした口調で、約1時間にわたった。指名受諾演説というよりは一般教書演説に近いものだった。

トランプ氏はこの演説で、賞金を得た格闘家のように大統領としての記録を見せびらかして回ったかと思えば、民主党の対立候補ジョー・バイデン氏への攻撃も忘れなかった。

散弾銃で手当たり次第に撃ちまくるような演説で、正確性という意味ではまちまちだった。貿易から移民、教育、エネルギー政策、外交政策に至るまで、どれか一つでも当たって相手を手負いにすればそれで良いというかのような内容だった。

しかしトランプ氏は何より、バイデン氏は民主党左派の仲間で、各地の市内で抗議しているしている人たちの仲間なのだと、そういうイメージを有権者に植え付けようとしていた。

演説の舞台は素晴らしかった。ホワイトハウス敷地内の庭で、ワシントン記念塔を臨む場所だった。

しかし、内容の決まった定番の選挙演説よりも、聴衆を熱狂させる集会の方が得意なトランプ氏はこの夜、なかなか上手に着地できなかった。

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