金正恩氏、妹の与正氏らに「さらなる権限」を委譲か=韓国情報機関

Kim Yo Jong, sister of North Korea"s leader Kim Jong Un, attends wreath laying ceremony at Ho Chi Minh Mausoleum in Hanoi, Vietnam March 2, 2019

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画像説明, 金与正氏(2019年、ヴェトナム・ハノイ)

韓国の情報機関・国家情報院は20日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が実妹の金与正(キム・ヨジョン)氏をはじめ、側近にこれまでより多くの権限を委譲していると明かした。

報道によると韓国国家情報院はこの日、非公開で行われた国会情報委員会で、金委員長の権限委譲について報告した。

「金正恩は今も絶対的権力を維持しているものの、その一部を少しずつ委譲している」

理由については、「自分の統治ストレスを解消し、政策が失敗した場合の責任を回避するため」だと説明した。

また、金氏は現在「国政全体の舵取りをしている」とした。

国家情報院は与正氏について、現在は対米および対韓政策などを担っており、「事実上のナンバー2」だとしたが、金委員長は「まだ後継者を選出していない」と強調した。

議員はその後、この評価についてジャーナリストらと議論を交わした。

動画説明, 金与正氏ってどんな人? 正恩氏の実妹、党幹部……それから?

しかし、一部アナリストは今回の情報に懐疑的だ。北朝鮮専門のウェブサイトNKニュースは、与正氏が今月2つの重要な会議を欠席した様子だと伝えている。このため一部では、与正氏について降格の憶測も出ている。

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金与正氏とは

North Korean leader Kim Jong Un and his sister Kim Yo Jong attend a meeting with South Korean President Moon Jae-in at the Peace House at the truce village of Panmunjom inside the demilitarized zone separating the two Koreas, South Korea, April 27, 2018

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画像説明, 金委員長と与正氏の関係は親密だとされる。写真は南北首脳会談に与正氏が同行した時のもの(2018年4月27日、南北軍事境界線上の板門店)

与正氏は金委員長の実妹。きょうだいの中で唯一、委員長と親密で強力な味方とされる人物だ。

1987年生まれで、金氏より4歳年下。2人一緒にスイス・ベルンに留学していたこともある。

与正氏が初めて国際的な注目を集めたのは、2018年に金一族のメンバーとして初めて韓国を訪問した時だ。与正氏は当時、北朝鮮と韓国の選手が南北合同チームとして出場した平昌オリンピックの北朝鮮代表団の一員だった。

兄と一緒に、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領や中国の習近平国家主席、アメリカのドナルド・トランプ大統領らとの国際的な会談実現にも努めた。

韓国国家情報院の信頼性は

北朝鮮は世界で最も謎に包まれた国家の1つ。

韓国の国家情報院は他のほとんどの組織よりも北朝鮮に関する情報を持っているかもしれない。しかし、多少問題もある。

例えば2016年には、韓国メディアが同機関の報告を引用し、朝鮮人民軍総参謀長の李永吉(リ・ヨンギル)氏が処刑されたと報じた。

それから3カ月後、韓国政府は李氏の名前が朝鮮労働党幹部リストに載っており、同氏が生存しているとみられると発表した。

2017年には、北朝鮮が2012年の韓国大統領選の結果を操作しようとしていたことを認めた。

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<解説>金与正氏が台頭しているのは間違いない――ローラ・ビッカー、BBCニュース・ソウル特派員

一部のアナリストは、南北関係に危機的状況をもたらした、今年6月の北朝鮮による南北共同連絡事務所の爆破は、与正氏に大きな舞台を与えるためだけに仕組まれたものだと考えている。

与正氏は3月に初めて公式声明を発表し、韓国を痛烈に非難。その後、「最高指導者と党、国家から権限を与えられた」ことを明かした。

7月には、米朝首脳会談を開く可能性について、「米国の立場の決定的な変化がない限り、年内ひいては今後も朝米首脳会談は不必要であり無益だ」と述べた。

こうしたことから、対米・対韓政策に影響を与える権限が与正氏に委譲されている可能性がうかがえる。

しかし、少し注意が必要だ。与正氏が兄の後継者として北朝鮮のリーダーになるという意味ではないからだ。それに与正氏と同様に、他の側近にもさらなる権限が与えられている。

また、国家情報院が金氏がいまも全体的な統制を維持していると明確にしたことも、注目すべき点だ。金氏は単に権限の一部を委譲しているに過ぎず、最終決定権は正恩氏にあるということになる。

一方で、これまで公のイベントでは柱の影に隠れ、兄に灰皿を運んでいた与正氏が、北朝鮮の外交政策の最前線に立つようになったことの表れでもある。

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